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58.意図が分からない(ニール)

引き続きニール一人称です。



 目の前に差し出された黒い液体を見て、俺は怪訝な表情になる。


「これは……」

「これはコーヒーというものだよ。エレンは紅茶よりこちらの方が好きらしいね」

「はぁ」


 意外と好意的な話し方で、俺はどう返事をすればいいのか困った。

 とりあえず、エレンが好きというコーヒーを飲んでみるかと思い、カップを手に取ってみる。

 紅茶より濃い――いやほとんど黒い液体は、当たり前だけど紅茶とは全く違う香りがした。香ばしいというのか、焦げたというか、不思議な香りだった。

 カップに口を付けようとした瞬間。


「ああ、そのまま飲むと苦いと思うよ」

「え?」


 今、普通に何も入れていない(?)ものを渡されたんだけど。

 俺がきょとんとしていると、小父さんは小さく笑って砂糖とミルクをテーブルに置いた。


「紅茶より味が濃いかな? あと苦味もあるね。そのまま飲める人は少ないんだよ」

「そ、そうですか」


 そう言われても、砂糖とミルクをどれだけ入れていいか分からないので、そのままで一口飲んでみる。

 口のなかに広がるほろ苦さとフルーツが入ったような酸味。……うん、これはそのまま飲むのはちょっと躊躇う味だ。

 テーブルの上に置いてくれた砂糖を手に取り一匙、そして苦さの緩和にミルクを入れた。

 再度口にすると、苦味と酸味がミルクで柔らかになり飲みやすくなった。


「面白い味ですね。そのままでは飲むのを躊躇うのに、砂糖とミルクでかなり変わる」

「そうだね。ミルクたっぷりだとカフェオレとか言うそうだよ」

「へぇ。なんか色々な名前が付いてそうだ」

「まあ、エレンはこれをそのまま飲むんだけどね」

「……エレンが?」


 甘い物が好きなエレンは、小父さんの言ったカフェオレとか好きそうなのに。


「意外だろう? 私も驚いたんだけどね」

「まあ、エレンは意外な所があるからなぁ」


 気づくと口調が戻ってしまっていて、慌てて小父さんに言葉遣いについて謝った。


「気にしないでいいよ。昔から知っているしね。丁寧に喋られると、他人行儀のようで嫌だよ?」

「小父さん」

「リントン家とは昔から懇意にしているからね。君のお父さんが幼い頃からの付き合いだよ」


 確かにペイリー家と我が家は仲が良いと言える。

 だからエレンとは幼馴染のような関係な訳だし。

 何歳だったか覚えてないけど、カントリーハウスにいる時には、家族揃って互いの家に遊びに行った。


 兄さんと俺は昔は悪ガキという感じだったし、エレンも負けないくらいお転婆だった。

 そんな中で、ローズさんだけは貴族のご令嬢という感じで、妹たちはそんなローズさんを慕っていた。

 エレンにはあまり懐いてなかったな。兄さんと俺と一括りにされていたっけ。

 それでも時が経てば、体は子供から大人になっていく。

 エレンも他の貴族令嬢より抜きん出て美しくなった。

 ……性格は変わらなかったけどな。


「懐かしいかな?」

「はい。子供の頃は誰が後を継ぐとか、自分の未来をしっかり考えなくて……楽しんでいられたのに」

「いつまでも子供のままでは居られないのは、淋しいものだね」

「……はい」


 やっばり、この流れからして、エレンと距離を置くように言われるんだろうな。

 前シーズンに社交界デビューしてから、子供の頃のようにしていけないとは思っていたけど……今シーズンはパートナーとして一緒にいることが多かったせいか、夢を見てしまったな。


「ところで、ニール君はエレンのことをどう思っているのかな?」

「…………っえ!?」


 小父さん、直球で訊かないで!!

 心の準備をする間もなく訊かれ、俺は言葉が出なかった。


「気になっているんだよね。何やらエレンが君に告白まがいのことをしたみたいだし」

「そっそれは……っ」


 エレンーーーっ! お前、小父さんに言ったのかよおおぉっ!?


 俺が小父さんになんて言われるか……そんなことも考えてくれないのかよ……。

 自分でも顔に熱を持ったり、冷や汗が出たりするのが分かって、酷い顔色だと想像できる。

 それを見られたくなくて、めり込むように前に下げると、テーブルにゴツンとぶつかった。

 地味に痛い。それに体を思いきり折り曲げているから息苦しい。

 でも顔を上げられない。


「面白いねぇ」

「……」

「咎められると思ったのかな? そんなことはないよ」

「……」

「ただ、断った理由を聞きたいかな?」


 小父さんは落ち着いた口調で訊ねてくる。

 その声音に咎めるようなものは含まれない。純粋に訊ねているだけだ。


「小父さん、俺、子爵家の次男なんですよ」

「うん。そうだね」

「そんな未来のない俺が、エレンを幸せにしてやれる訳、ないじゃないですか……」


 家との約束で、身一つで成り上がることも出来ない。

 兄さんは自分の幸せを考えろと言ったけど、成果が出るのは先のこと。エレンを巻き込むことは出来ない。

 自分1人なら好きにできる。

 でも、エレンにドレス1着も満足に買ってやれないだろう。そんな生活をさせていいのか?


「君が心配する気持ちは分かるけどね。でも、あの子は貴族であることに固執する性格ではないと思うけどね」

「小父さん?」


 なんで小父さんは、俺にエレンを薦めるような言い方をするんだ?

 エレンのことが可愛いと思っているなら、俺のように将来がない貴族の次男(ヤンガーサン)なんて論外だろうに。

 はっきり俺では駄目なんだと言ってくれなければ、諦められないじゃないか。





いつも誤字脱字報告ありがとうございます。


ニール一人称というか、エレンが知らないところいろいろ進んでいることを入れたいな~と思っていたら和数が多くなりそうです(;'∀')

何度か書き直ししているので、なかなか更新できず…次回も間が空くかもしれないです。


今日は皆既月食でしたね。

あいにくの雨で見れませんでしたが、見た方はいらっしゃいますか?

今回の皆既月食は月がオレンジ色になると聞いていたので楽しみにしていたのですが…(´;ω;`)ウッ…

先月の惑星直列も見逃しました…orz

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