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微妙にR15。(保険)

 わたしの部屋は2階の南側で日当たりのいい部屋だった。ちなみに、お姉様の隣。

 その部屋にアドルフ様は入ると、ベッドの上にわたしをおろした。


「すみません。アドルフ様。助かりましたわ」

「問題ないよ。エレン嬢は私の事が好きかい?」

「……え、ええ。未来のお義兄にい様ですもの」


 いきなり何を聞くのかしら?

 アドルフが浮気野郎なのか、まだ未定なので、とりあえず好意的な返事を返す。

 すると、アドルフ様はいつもと違う笑みを浮かべた。


「お義兄様ね。隠さなくてもいいんだよ? ここにはローズは居ないからね」

「はい?」


 謝罪して離れようとしていたところに、アドルフ様がかぶさるようにして来て、頭にはてなマークが浮かぶ。


「あの、アドルフ様……?」

「君は悪い子だね。姉の婚約者である私を、こんな風に誘うなんて。だから、私は我慢出来なくなってしまったよ」


 Why? 思わず、英語が出てしまったわ。

 ……って、目が点になっている場合じゃないわ! 貞操の危機じゃない!

 ベッドに押し倒されて、目の前にはドアップのアドルフ様の顔。その顔がさらに近づいて……わたしの唇にアドルフ様の唇が重なる。


 な、なんで今こんなことにー!?


 止めて欲しくて顔を逸らそうとすると、アドルフ様の手によって固定されてしまう。そのまま何度も口付けられて、「やめて」と言おうとするけど、口を開ければもっと深い口付けになってしまうのを恐れて、ただひたすら口を真一文字にして耐えるしかなかった。

 きっと、すぐにお姉様が来てくれる――そう思って。


 そう期待しているのに、アドルフ様の手が布越しに胸に触れた時、悔しさに涙が零れた。それなのに、アドルフ様は胸に触れた手に力を入れて、ゆっくりと動き始める。


 きっと、これは罰だ。いくら相手が浮気野郎でも、彼はお姉様の婚約者。それなのに、横取りしたいかのような言動を繰り返した。アドルフ様が婚約者の妹としか思わなくても、好意を寄せられているなら、つまみ食いしたって許されるだろう、と勝手に思っても仕方ない。

 いつまで経っても口を開かないわたしに苛立ったのか、口付けをやめて、今度は首筋に唇を這わせるのと同時にスカートの裾から手を忍ばせてふくらはぎから大腿へとのぼっていく。前世で経験がないわけではなかったけど、これは気持ち悪さの方が先に来る。

 これ以上は嫌――と思っていると、扉が開かれる音が聞こえたので、わたしは思いきり叫んだ。


「いやあああぁぁぁっ!! 助けてぇっ!」


 わたしの声を聴いたのか、お姉様が「エレン!?」と、慌ててベッドのほうに向かってくる足音が聞こえた。次いで、2人分の足音が聞こえる。


「お姉様っ! 助けて!」


 すかさずお姉様に助けを求める。けど、天蓋のレースのカーテンが邪魔で見えない。という事は、お姉様からもわたし達が見えない。それを利用して、アドルフ様はすぐさまわたしの上から退いて、ベッドの横でわたしを心配する素振りを見せていた。


「エレン!? アドルフ様、どうされたのですか⁉」

「なんだ、何が起きている!?」


 お姉様が慌ててこちらへ走ってくるのに対して、アドルフ様はすでにベッドの横で心配そうな表情でわたしを見ている。

 まるで、先ほどの事がなかったかのように。


「ローズ嬢、エレン嬢は少し混乱しているようだ。急に騒ぎ出して……」

「エレン……が?」

「違います! アドルフ様がわたしにっ」


 口に出すのも悍ましい――思わず、口籠ってしまう。

 あと少し早ければ、わたしの上に乗っていた状態を見てもらえたのに……と思っていると、お姉様がきつい表情でアドルフ様に問いかけた。


「アドルフ様、エレンに何をしたのですか?」

「治癒師が来るまでゆっくり出来るように、ベッドに横にさせただけだよ」

「では、どうしてエレンの服が乱れていますの?」

「それは……」


 そういえば、スカートの中に手を入れられていたわね……。お姉様はそれを目ざとく見つけたらしい。


「わたし、アドルフ様に圧し掛かられてっ、それでっ……」

「嘘を言っちゃあいけないよ。エレン嬢」

「嘘つきは貴方でしょう! アドルフ様!」


 わたしは怒りの感情を押さえられなかった。


「わたしにした事だけじゃないわ! お姉様という婚約者がありながら、浮気している方が偉そうに言わないで!」


 ……あ、言ってしまった。

 でも、これってチャンスじゃない?


 アドルフ様は動揺しながらも、否定する。

 お姉様は初耳だとばかりに驚いた顔をしていた。


「根拠もないのに、変な事を言わないでくれないか?」

「ハリーズ侯爵の若き未亡人――コリンナ夫人」

「なっ!?」

「ふふっ、知らないと思いました? でも、あなたは毎週木曜日は亡き侯爵のためにと言って、お姉様との約束もしませんわね。でも、実際はその裏でコリンナ夫人と浮気していたからですわ」


 あら、わたしって、なんか名探偵のようなセリフを言っているわ。

 アドルフ様はコリンナ夫人の事を言われて、「なんで、君がその事を……」と呟いているけど、それって語るに落ちるって言うんじゃないかしら?


「わたしがアドルフ様に絡んでいたのは、お姉様との婚約をなかった事にしたかったからですわ。浮気者にお姉様をお任せ出来ませんもの」


 キッと睨みつけて言うと、アドルフ様は怯んだ。

 まさか、「アドルフ様~」とお姉様を押しのけても自己主張していたわたしが、こんな事を言うなんて思いもしないでしょうね。

 でも、おあいにく様。5日前のエレン(わたし)とは違うの。もうお花畑満開じゃないのよ。



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