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51.失礼いたします



 さて、ルカ様も話に加わってきたけど、ルカ様が婿に来てくれるというのは、悪い話ではないと思う。

 わたしの気持ちが追い付かないだけで。


「そうか、ルカを婿にと考える程度の頭はあるのか」


 こちらが複雑な気持ちになっていると、公爵が呟いていた。

 ふぅん、『ルカを婿にと考える程度の頭』ね。

 本当にムカつくわ。リアム様そっくり。

 少し意趣返しをしてもいいかしら?


「そういえば、本日父が来られなかった理由ですが……わたくしの婿候補の方にその話をするために来ていただいたのですよ。場合によっては、候補ではなく本決まりになる可能性もありますわ」


 笑みを貼り付けた顔を公爵に向ける。

 ニール、ごめんなさい。あなたを巻き込むわ。

 だって、あんな時に来られては、まだ諦めたくないって気持ちが強くなってしまうのだもの。

 手紙で返事が返ってきたのなら、その内容を見て心の準備が出来たのに、あんな風に焦った顔で来られたら、期待しちゃうじゃない。

 ……ニールの、馬鹿。本っ当に馬鹿。

 女心を理解しないで……今すぐにでも泣きそうになるのに。


 目が潤んできたので、俯いて誤魔化そうとすると、「それはリントン子爵家の次男か?」とリアム様が問いかけてきた。

 その失礼な言い方に、カチンとくる。


「ええ、ニール・リントン子爵令息ですわ。ニールとは昔から仲が良かったので、婿入りの話をするために父は今日会う約束していたのです」

「仲が良かった? そういえば、夜会でのパートナーをしているのが多かったな」

「ええ、お互いに気心がしれていますので」


 でも、それだけじゃない。ニールだけは、わたしのことを気にしてくれた。

 お姉様に迷惑をかけて、それを周りに見せて自分の価値を落とすなと、そう言ってくれたのは、ニールだけだった。


「しかし、子爵家の次男では家の結びつきの意味がないだろうに」


 ……まあ、言われると思ったけどね? でも、腹立つわ。


「意味はありますわ。リントン子爵家はペイリー伯爵家の隣の領地ですもの。今までも友好的な関係を築けていたと思いますが、婚姻を結べばさらに友好的な関係になれると思いますわ」


 身分以外にも友好的な関係を築けるのよ――と、笑顔で答えた。


「だが隣の領地といえば、我が家とてそうではないか。君の言う友好的な関係を築くのに意味があるのではないか?」

「今まで特に交流がなかったのに……ですか? そこまで必要な関係では無かったということでしょう? けれど、リントン子爵家は家族ぐるみで仲の良い関係ですのよ。そちらを優先するのは当然ではありませんこと?」


 公爵は身分が上の自分たちとの交流を優先するよう言うけど、今まで我が家になんの話も持ちかけて来なかった。ここに来て利用価値が出来たから近づいてくるような人たちとは、仲良くなんてしたくないわ。

 もちろん身分を振りかざすことなく、真摯に向き合ってくれるなら別だけど。今までのやり取りだけでも、身分第一というのがよく分かる。


「とにかく、ルカ様を婿候補に入れるよう父に報告いたします。話はこれで決まったようですので、失礼いたしますわ」


 そう告げて立ち上がると、リアム様が慌てて手を伸ばしながら。


「ま、待て! まだ話は――」

「終わりましたわ。わたくしが嫁ぐという前提が崩れています。代替案でルカ様をわたくしの婿候補として父に報告する――それ以上、何かありまして?」

「そ、それは……」


 リアム様が伸ばした手が届かないと分かっていても、取られたくなくて腕を引く。


「それに、そちらの一方的な言い分を聞いて訪問いたしましたのに、紅茶の一杯も出ないなんて……まるで歓迎されていないようですわね。そのような家に長居する気はございませんわ」

「それは……話に夢中で気づかなかった。申し訳ない。すぐに用意させよう」

「必要ありませんわ。もう話は終わったと言ったはずです」


 立っていると、座っているリアム様より高くなるので、見下すように視線を落とした。


「……っく」


 無表情で見下ろしていると、屈辱に歪んだ表情が目に入った。

 なんか、初めてリアム様に勝利できた気がするわ。でも嬉しいという思いはないわね。

 それにしても、リアム様たちはこんな風に人を見下ろして、上からものを言っていたのかしらね。でも、何も心に響かない。馬鹿らしい限りだわ。


「それでは、失礼いたしました」


 来た時と同じようにカーテシーで締めて出ていこうとすると、公爵が待ったの声をかけた。


「え、エレン嬢、お前の浅慮な行いで、ペイリー伯爵家がどうなるか……分かっているのか?」


 また身分で脅しなのね――と、溜め息をつく。

 すでに入り口に向かっていたので、仕方なく振り向いて公爵を見る。

 そして、息を吐いて呼吸を整えた。そうしないと感情が爆発しそう。なるべく感情を押し殺すと、顔からも感情が無くなってくるのが分かる。


「それは、どういう意味でしょうか?」

「我が家を侮辱したのだ。それなりの代償というものが必要だろう?」

「侮辱? わたくしはただ事実を述べただけですわ」

「事実を言えば済むと思ってるのが浅はかなのだ」

「わたくしの代わりにルカ様が仰ってくださいましたわ。貴方がたの身分が上である以上、身分が下の者の者たちは配慮した言動であると」

「なに?」


 はあ、わたしも、ルカ様さえも身分が上だから、今まで遠慮されていた――ということを伝えているのに、どうして未だに理解されないのかしら。

 壊れたレコードを聴いているようで、嫌になるわ。


「では、何をもとに抗議なさいますの? 婚約の打診を断られたこと? 身分が下の者に馬鹿にされたこと? どちらにしろ、抗議された時点で『どうしてそうなったか』を説明させて頂きますわ」

「どういうことだ?」


 理解力がなくて、もう嫌という気持ちになる。

 今まで、誰からも逆らったりされた事がなかったのかしら。ちやほやされて育った傲慢な子供のようだわ。


「相手の予定を尋ねること無く呼び出したこと。婚約の話は前提が違っていることを伝えたら、跡取りをもとに戻せと他家の内情に口出ししたこと――軽くあげればこれくらいでしょうか?」


 他にもあるけど、この2つはこちらが非難をしてもおかしくはない話だもの。

 家の内情は、相談があったことにより介入が可能になるのであって、他家が自分たちの都合で押し付けるわけにはいかない。

 だから、ニールとの話も、打診はしても決めるのはリントン子爵家だ。もともとニールは家のために働くと決めていたのだから、うちに婿入りしたら、テリー様が1人でこなすか、年の離れた弟が代わる事になる。

 そして、それを決める事が出来るのはリントン子爵家のみ。いくらニールが欲しくても、うちが伯爵家で爵位が少しだけ上ということで、決めつけることは出来ない。

 それと同じで我が家の内情に、アルドリッド公爵家が口を出すことは差し出がましいことだと、どうして気が付かないのかしら。



ニール視点を入れたいのに、どこで入れていいのか悩む…というか、入れるタイミングがない(;'∀')

それよりも先に公爵視点が入りそうです。


誤字脱字報告ありがとうございました。


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