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49.どこがいいと思われるのでしょうか



「君が跡取りとは、初耳なのだが?」


 リアム様は、「んんっ」と咳払いをした後、そう訊ねてきた。


「そうですわね。決まったばかりですもの。本来でしたら国に正式に書類を出して、跡取りを姉の名と変えなければなりません」


 正式な跡取りは、国に申請しなければならない。

 そして国はその人物が、その家の血筋かどうか精査する。不相応な者が跡取りにならないように。

 昨日の今日だから、その書類を国に出していないのだけど、当主であるお父様からも他家に話しても構わないとお墨付きをもらっている。

 なので、わたし1人が先走っているわけではないんですよ。


「それならまだ跡継ぎはローズ嬢だろう?」

「書類的にはそうですが、我が家で決まった話で、当主である父からも話して構わないとのことですわ」

「だが……」

「エアルドレッド侯爵家から、姉に婚約の打診がありましたの。それによって父は姉をエアルドレッド侯爵家に嫁がせ、わたくしを跡継ぎにすることを選んだのですわ」


 誰かさんの望み通りにね――と、心の中で付け足す。


「ヴィンスか……」

「エアルドレッド侯爵令息は、姉が嫁いで来ても、自分が婿に入っても構わないとありましたの。ですが、我が家の事情で姉が嫁ぐことになりましたわ。ですから、わたくしは婿に来てくれる方を探していますの。貴方様に出来まして?」


 おそらく、この人は公爵家嫡男という肩書きを自慢に思っている。そして、その肩書きを十分に利用している。それが許されると思っている。

 だから、それを捨て伯爵家の入り婿になるなど、彼にしたらプライドが許さないだろう。わたしを嫁にもらうことはあっても、婿に来る考えは容認しない。

 案の定、彼は顔を歪ませたまま黙っている。


「それは本当か、エレン嬢?」


 代わりにと、公爵が訊ねた。

 わたしは公爵のほうに向きなおって。


「はい。何分、エアルドレッド侯爵家との話も昨日決まったばかりで、まだ報告もしておりませんが」

「なら、それを変えることは可能ではないかな?」

「書類的には可能でしょうが、変える気はございませんわ」

「可能なら変えればいい。もともと、姉のローズ嬢が跡取りなのだから、ペイリー伯爵の考えを変えれば済む話だろう」

「お断りいたします。いくら公爵家といえども、我が家の跡継ぎに関して口を出す権利はございませんわ」


 公爵も引く気はないらしい。

 しかし、これが上位貴族なのかと、溜め息をつきたくなる。プライドが高過ぎるし、誰もが自分の意に沿うと思っている。

 それにしても爵位は低くなるけどうちも貴族――その家の内情に口を出すなんて、本来ならあり得ない。普通なら弁えるわ。


「んんっ、普通は身分が上の者からの話を、下の者は断れないものだが?」

「確かに我が家は伯爵家――身分的には低くなりますが、公爵家とは縁続きではありませんし、同派閥でもありません。そこまで必死に顔色を窺う必要がありましょうか?」

「なっ!?」


 わたしの返しに、今度は夫人が信じられないとばかりに睨みつける。


「あなた、自分の立場が分かっていらっしゃるの?」

「理解しておりますわ。伯爵位の立場で、公爵家の話を断るリスクは。ですが、これはわたくしに……いえ、我が家にとって譲れない事ですわ。ですから、頷くわけにはいかないのです」


 流石に3人を相手にするのは疲れるわ。

 ただ、黙ったままのルカ様も気になるけど、多分、彼が1番現実的な考え方を持っているわね。

 入り婿をルカ様に、という話が出ない限り、積極的に話はしてこないと思うけど……ルカ様まで参戦されたら、より大変になってしまうわ。


 それにしても、挨拶もそこそこで紅茶の1つも出てこないなんて、馬鹿にされているのかしら? それを出して、さっさと帰るのもいいかもしれないわね。


「ねぇ、あなたは今シーズン、リアムと懇意にしていると聞いたわ。我が子ながら自慢の息子よ。あなたも周りの令嬢に対して鼻が高いでしょう?」


 ……は? 何言ってんの、この人?


 思わず表情が可笑しくなってしまったわ。

 今シーズン、懇意にしているのはニールであって、彼ではない。どちらかというと、苛々させられて会いたくないほうよ。

 しかも、周りの令嬢に対して鼻が高い? それはわたしがリアム様に好意を寄せていてる場合に限るものだわ。

 夫人の話は的外れ過ぎて、宇宙人と対話を試みているかのようだった。


「失礼ながら、リアム様と話をするようになったきっかけは、わたくしの不注意によるものでした。ですが、それについてはすでに謝罪しており、対応にも付き合いましたわ。その結果、彼からの()()は、使用人によるわたくしの悪口でした」


 当時を思い出して、あれが最初だったわね――とイラッとする。

 夫人は思いもかけない話らしく「え?」と呟き、表情が強張った。


「その後も、どうしてそのようなことをしたのか説明したいと手紙を頂いたため、カフェに出向けば、従兄弟の恋を叶えるために姉をエアルドレッド侯爵令息に嫁がせようと、わたくしに後を継ぐようしつこく迫ったのですよ」

「な……」

「それなのに今度は臆面もなく、わたくしに婚約の打診をする――そのような方に、どうして好意など持てましょうか? まあ、マニアックな趣味の方なら、そのような方を好むような奇特な方もいらっしゃるかもしれませんが……わたくしはそういった趣味はございませんので」


 思いの丈を言葉にすると、ふぅ、と溜め息をついた。

 ほんと、リアム様に会って言われたことをあげると、好きになる要素なんて何処にもないわね。

 世間のご令嬢たちはどこを見て、彼がいいと思うのかしら?

 結婚条件と考えたら、未来の公爵夫人――王族には劣るけど、同年代ではアルドリッド公爵家が1番上になる――は魅力的なのかしら? わたしにはさっぱり分からないけど。


「先ほど述べた理由から、わたくしは好意を持つことはございませんでしたわ。それよりも、今頃になって婚約の打診など、不愉快極まりないですわね」


 再度同じことを繰り返して、リアム様に対して目を眇めた。



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エレンのターン(゜∀゜)キタコレ!!
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