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誤字脱字報告ありがとうございました。

 わたしにやる気がある事を知ったお父様は感激し、「いい家庭教師を見つけるよ」と断言してくれた。

 本当にお願いします。今からでもマナーから領地経営を覚えらえるような、良い方を見つけて欲しいの。


「エレンも頑張る気になってくれたのね」

「はい、お母様。今まで色々わがままを言ってごめんなさい」

「いいえ。きっと合わない方だったのだから、仕方ないのよ」

「そんな事ないです。だって、お姉様は同じ家庭教師の方にずっと教わっていますもの」

「たまたま、良い方だったのよ」


 お姉様はそう謙遜するけど、お姉様についている家庭教師はかなりのスパルタだというのを知っている。……漫画の知識だけどね。

 お姉様は家族の中では妹を優先させられ、家庭教師は厳しく、自分は本当に愛されているのだろうかと問うシーンがある。きっと、わたしがわがままを言っては、お母様に「エレンに譲ってあげなさい」という言葉を聞くたびに、悲しい思いをしたに違いない。

 そんなお姉様だから、アドルフ様との婚約をなんとか解消させ、ヴィンス様と幸せになってもらいたい。

 その前に婚約者であるアドルフ様をなんとかしないとね――と、改めて決意し、果汁100%のジュースを飲みほして、


「お姉様、今日はアドルフ様がいらっしゃるんでしょう? わたしもお会いしたいわ」

「エレン……」


 あ、今、お姉様の表情が曇った。

 でも、お姉様をアドルフ様から助けるためなの――そう言いたいけど言えない。それに、今までわがままを言ってお姉様のものを奪っていったのは変わらないので、仕方ない。


「勘違いしないで、お姉様。未来のお義兄様ですもの。関係を良くしておくに越したことはないでしょう?」


 お姉様が、わたしを嫌っていても仕方ない。それでも、アドルフ様との婚約を無くさないと、お姉様もペイリー家も幸せになれない。

 しっかりしなさい、エレン。今までわがまま放題でやりたい放題だったのだから。今さらお姉様に好かれようなんて馬鹿な事を考えないの。

 ……胸の奥にずっしりと重い何かを感じても、無邪気な妹を演じるの。


「ね? いいでしょう?」


 わたしが首を傾げて問えば、お父様も「そうだな、義兄になるのだから、仲良くしないさい」と、お母様も「仲が良くていいわね」とお姉様の気持ちを考えずに、わたしの意見に同意してくれる。

 お姉様は「……はい」と表情を失くした顔で頷いた。

 後はお姉様の気持ちなんか知らないとばかりに、無邪気に笑顔を振りまいて食事を終えた。



 ***



「アドルフ様!」


 アドルフ様の来訪が告げられると、お姉様より先に飛び出して、飛びつくかのように勢いをつけて彼の前に出た。そして、そっと手を取る。


「エレン嬢、こんにちは。相変わらず元気だね」

「あら、これでも少し前に4日も寝込んでしまったんですよ? でも、未来のお義兄様にお会いしたくて元気になったんです!」

「そうか。それは嬉しいな」


 アドルフ様はわたしから手を放し、代わりに頭を撫でる。

 アドルフ様に会いたかったとアピールしたけれど、ちょっと元気過ぎたかしら? これだと妹としてしか見てもらえないかも? んー、ちょっとやり方を変えた方がいいかしら?

 顔をしかめていると、子供扱いされて不貞腐れたと勘違いしたらしく、アドルフ様は苦笑を浮かべていた。

 そうしていると、お姉様がやってきて、「ごきげんよう、アドルフ様。お待たせしてごめんなさい」とアドルフ様に向かって笑顔を浮かべた。アドルフ様も「ローズ、今日もきれいだね。行こうか」と返して、お姉様の手を取った。

 どうしよう、このままだと植物園に行ってしまうわ。何も出来ないまま終わってしまう。


「あの、アドルフ様……きゃっ」


 2人で歩き出したところを追うために体を捻ると、4日間寝込んでいたせいか、それだけで足がもつれ体のバランスが崩れてしまう。

 倒れる――と思った寸前、アドルフ様が抱きとめてくれた。


「大丈夫か?」

「ご、ごめんなさい。足がもつれてしまって……」


 慌てて体勢を整えようとすると、足首に痛みが走った。


「……った」


 やばい。足首しっかり捻ってた。アドルフ様から離れたいのに、足が痛くて動けない。

 アドルフ様が「大丈夫かい?」と、心配した顔で訊ねるけど、痛みで大丈夫とは言えなかった。頭をふるふると横に振ると、アドルフ様が「ちょっとごめんね」と言って、あっという間に、わたしを横抱き――いわゆるお姫様抱っこをした。


「あ、アドルフ様!?」

「ローズ嬢、治癒師を呼んで。エレン嬢、君の部屋は何処かな?」

「あの、客間で大丈夫ですわ!」

「それだと治癒師が来るまで動けないだろう?」


 仕方なく自分の部屋を教えると、アドルフ様はわたしを抱えたまま移動を始める。

 お姉様は戸惑っていたけど、わたしの治療が先だと思ったのか、治癒師を呼ぶべくお父様の執務室に向かっていった。

 アドルフ様は「それじゃぁ、行こうか」と、お姉様が去ったのを見て、わたしに笑みを浮かべて言った。



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