表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/55

47.行ってきます

 公爵家に失礼のないような服装に着替える為に、自室へと戻った。

 エイダを初めメイドの皆が、あれがいい、いやこちらの方が――等という声を聞きながら、何故会いたくない人のために着飾らなければならないのかと、溜め息をついた。

 とはいえ、これを乗り切らなければ、わたしの未来はない。

 気軽なワンピースからデイドレスに着替え、化粧もしてもらう。

 エイダ達もわたしが公爵家に行くのを知っているので、いつもより念入りになっていた。


 準備がやっと終わり、エイダ達は達成感に満足しているようだったけど、わたしはこれだけで疲労していた。

 この後、公爵家の面々を相手にしなければならないと思うと、気が重くなって逃げ出したくなるわ。


 逃げたい気持ちと、行かなければならないという気持ちの間でゆらゆら揺れるけど、時間は刻一刻と迫ってくる。

 仕方なく椅子から立ち上がり、玄関に向かった。多分、お父様が馬車の用意をしてくれているはず。

 階段を降ると、心配そうなお父様と目が合う。


「エレン……」

「……行ってきます」

「無理はするんじゃないよ」

「いえ、無理をしてでも、自由を勝ち取ってきますわ。あの方と婚約なんて冗談じゃありませんもの」


 リアム様の顔を思い浮かべれば、段々腹が立ってきて、負けるものかという気持ちになってくる。


「行ってくるわ」


 そう告げて、玄関から外に出ようとすると――

 わたしが乗る予定の馬車の後ろに、もう1台馬車が付けられる。

 どこの馬車? と思っていると、中から降りてきたのはニールだった。


「ニール……どうして……」

「エレンっ! ……って、その格好は……?」


 互いに疑問を口にすると、その後はどう答えていいのか分からなくて無言になった。

 何を言えばいいのか言葉を探していると、後ろからエイダに「そろそろ出かけませんと」と、声を掛けられた。


「ニール、来てもらって悪いんだけど、出かけなければならないの」

「出かける? 茶会か何かに呼ばれているのか? それなら、予定も考えずに悪かった」


 お茶会か……それならまだ気楽なんだけどな。


「そうじゃないけど、大事な用事なの。急に決まった事で……」

「何かあったのか?」

「うん、ちょっと。……不安だったから、ニールの顔が見れて安心したわ」

「エレン」


 どうして家まで来てくれたのか、何を言いに来たのか、色々訊きたいけどそんな時間はない。

 思わず泣きたくなる気持ちを抑えて、ニールに向かって、


「来てくれてありがとう」


 と、言った。

 顔を見ることが出来た――それだけで、心が温かくなる。


「エレンっ!」


 ニールは何か言いたそうに、わたしの名前を呼んだけど、もう時間がない。馬車に乗って、公爵低へ向かってもらう。

 馬車の中で、気を抜くと涙腺がゆるむのを堪え、無表情になるように努める。

 これから魔窟とも言える公爵家へ行くのだから、気を引き締めないと。

 といっても、公爵家に関して知っている事はごく僅か。向こうの出方でどうするか決めるしかない。


 そもそも、公爵家からわたしに縁談の申し込み自体があり得ない。

 相手は公爵家であり、王族派筆頭よ。うちは中立派であり、爵位はそこそこ。

 王太子殿下がすでにご結婚され、お子様もいらっしゃるので、この国で1番身分が高く未婚なのはリアム・アルドリッド公爵令息になる。そのため、令嬢方の間で人気がある。美形だしね。

 が、その1番人気のある令息が、なぜわたしに……。


 お父様は、切り傷を治した事が原因だと言っているけど、ほんの切り傷だし大きな怪我を治したわけじゃない。出来る可能性があるかも分からないのに、期待しないで欲しい。

 魔法なんて便利なものがあるから、治癒魔法もしっかりあると思っていたのに。まさか、治療に薬草が必要なんて、そんな落とし穴があるなんて思わないわ。

 絶対やらないと思っていた『異世界転生あるある』が、ここまで尾を引くとは思わなかったわ。

 しかも、そのあるあるを1番厄介な人の前でやってしまうなんて、誰が想像出来るのよ!


 はーっと、深い溜め息をつくと、付き添いのエイダに「大丈夫ですか?」と心配される。


「これからの事を思うと気が重いのよ」

「その、エレンお嬢様は、いい話だと思われないのですか?」


 エイダは無駄口をあまりしないほうだけど、流石に相手が相手なのか、嫌そうなわたしに疑問を持ったのかもしれない。


「そうね、いい縁談を望んでいる令嬢なら、とても嬉しい話でしょうね。でも、わたしは嬉しくないの。その……好きな人がいるから。その人からじゃなきゃ、喜べないわ」

「左様でございますか」


 他にも派閥の話とかあるけど、そこまで話す必要はないと思い、話を続けることはなかった。エイダもこれ以上何か言って来ることもなかったので、少しだけホッとした。


 あと少しすれば、アルドリッド公爵家のタウンハウスに着く。

 そう思うと、心が引き締まっていく。

 目を閉じ、心を落ち着かせている間に、一旦馬車が停まり、再び走り出す。

 きっと、公爵家の門を通り過ぎたんだわ――そう思っていると、しばらくして馬車が停まり、扉が開かれた。


「いらっしゃいませ。ペイリー伯爵……」

「伯爵である父は外せない用があり、わたくしだけで参りました。急ぎのため、当主不在で申し訳ございません」


 お父様がいないのは、そちらの急な呼び出しのせいよ――というのを含ませると「左様でございますか」と少し困惑した声が返ってきた。

 でも、そんなのは知ったことではないわね、

 さあ、ここからが本番よ。気合を入れなきゃね。




誤字脱字報告ありがとうございました。

予定通りこの話で今年の更新は終わりになります。

続きは来年に。


先週風邪ひきました。

今は熱も下がりだいぶ良くなりましたが、まだ完治とまではいかないのでストックがほぼできず…

休みの間に書き溜めたいなぁ、と思ってます。


皆様、本当にお体にはお気をつけて。

それでは良いお年を(*- -)(*_ _)ペコリ


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
エレン、ここからが正念場だよ! 無茶しないでね…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ