記憶の湯気
「白味噌のもつ煮込み?」
京花がそうつぶやいたのは、リスナーから届いた一通のメッセージを読んだ直後だった。
「「大泉学園駅のすぐ近くにある酒場、昼から白味噌のもつ煮を出してます。親父が、これが東京の煮込みだって言い張ってて、子どもの頃は意味わからなかったけど、今はあの味が一番東京っぽいと思ってます。」」
「東京の煮込み」
その言葉に正解があるようで、ない。
醤油、赤味噌、酒粕、生姜、にんにく。
どれも東京になり得るけれど、白味噌とは意外だった。
「行ってみるか。」
―――
目的地は、大泉学園駅。
西武池袋線の終点に近く、都心からやや離れた住宅街。
京花はいつも通り、録音機材と小さなノートをカバンに入れて向かった。
駅前の喧騒を抜けた先、小道を曲がると、空気の温度が変わった。
老舗酒場「角長」。
昼営業中の札と、白い湯気が入り口から漏れていた。
店内に入ると視界が一瞬だけ曇った。
煮込みの蒸気、出汁と味噌の香り。
鼻腔の奥に甘くてふくらみのある塩気が染みた。
「もつ煮、ひとつください。」
京花が注文すると、すぐに鍋から湯気が立ち上り、
小鉢に盛られた白い煮込みが運ばれてきた。
白い...。
赤茶けた見た目ではなく、淡いベージュ。
刻みネギの緑がかろうじて色を添えていた。
ひと口すくうと、味噌の甘さが最初に広がり、そのあとからゆっくりと内臓特有のコクがやってくる。
臭みはない。
けれど、存在感はある。
「優しいけど、芯がある。」
京花はメモにそう書いた。
「白味噌だからって軽いわけじゃない。火を入れ続けてるからか、まろやかさに力がある感じ。」
店主に聞くと、使っている白味噌は京都のもの。
ただ、東京の味噌と混ぜることで練馬らしい仕上がりにしているという。
「白味噌だけだと、おすましになるからね。東京のもつ煮は、汗かいた感じがないと、うちの常連は納得しないんだよ。」
店主の言葉に、京花は深くうなずいた。
「この味、どれくらい続けてるんですか?」
「40年かな。初代の親父が作ってて、俺で二代目。でも味は微妙に変わってるかも。白味噌も昔はもっと甘かったしね。」
「変わっても、それでも毎日食べに来る人がいるって素敵ですね。」
「うまいからってだけじゃ毎日来ないよ。落ち着くん味なんだろうな。」
その言葉を聞いた時、京花の中でひとつスイッチが入った。
東京の名物に必要なのは「圧倒的な美味しさ」だけじゃない。
ここにあるという事実と今も誰かが食べてるという時間。
それこそが、東京という都市の味の根。
周りを見渡すとカウンターの隅、記者らしき男が京花を一瞥した。
南波修司。昔の編集担当だ。
彼の笑みを見た瞬間、あの夜の ざらつく空気が、喉の奥まで戻って きた。
二年前、雑誌の特集で一緒に動いたときのことを思い出す。
あの時、彼は取材の現場で、京花が録った音源を「感情の押し売り」と笑った。
その記事は大きくバズったが、タイトルに「泣かせ売りの新星」という皮肉がつけられた。
読者の一部にはウケたが、京花はこの件でポッドキャストのスポンサーを失った。
その後、連絡も謝罪もなかった。
ただ結果だけしかみない男。
それ以来、南波は京花の中で数字のためなら何でも切り捨てる人間として刻まれていた。
京花は小鉢の縁に箸を置いた。
金属の先が器を軽く叩き、かすかな音が響く。
その音に、自分の指先が冷えていることに気づいた。
南波修司が背中を少しだけ丸め、こちらを見ている。
その視線は、二年前と同じ温度。
胸の奥がざらつき、胃のあたりがきゅっと縮まる。
スプーンを握る手の甲に、うっすらと汗が滲む。
「久々だね。また感情でもつ煮を喋るつもりか?」
低い声が空気をかき混ぜる。
京花は一拍置き、笑みを薄く引き伸ばした。
「ええ。東京の感情は、煮込みの中にもあると思って。」
それ以上、彼の目を見なかった。
見れば、あの日のざらついた夜がすぐに戻ってきそうで。
嫌な男...。
なんでここにいるんだろう。
南波の存在を背後に感じながらも京花はメモ帳を閉じ、スマホを取り出して録音を始めた。
「西武線沿線の町で出会った白味噌の煮込み。見た目はやさしく味はしっかり。これは静かに続いてきた東京の味だと思いました。」
京花は店主に、次のアポをお願いして帰った。
―――
京花は再び「角長」の暖簾をくぐった。
今度は収録用のマイクと、録音確認用のヘッドホンをカバンに忍ばせている。
目的はただひとつ。
あの白味噌の煮込みのなぜ?を、言葉で引き出すことにある。
「おはようございます!」
「いらっしゃい!ああ、君か。」
「本日はよろしくお願いします!」
迎えてくれたのは、二代目店主の田島誠一。
前回よりも少しだけ笑ってくれた。
その表情には、記録されることへの覚悟があった。
厨房の奥では、寸胴鍋のふたが軽く持ち上がり、湯気が漏れている。
「今日は、仕込みの時間を見せてもらってもいいですか?」
「なんか、緊張するなぁ。」
「名物って名乗らせて頂きたいんです、ちゃんと見て聞いて紹介させてもらいたいんです。」
「そうかい?お手柔らかに頼むよ。」
厨房の隅に案内されると、田島は冷蔵庫から2種の味噌を取り出した。
「白味噌だけじゃダメなのは言ったよな。うちの白は基調だけど、そこに芯いれる。これは江戸甘味噌。色は控えめだけど、塩が効いてるんだ、」
ブレンド比率は企業秘密と言いながらも、
「毎日気温と湿度で変える」とだけ教えてくれた。
「白って、ねっとりしてて、やさしさに見えるけど、実際はブレるんだ。安定感がない。だから支えを入れる。東京の人は変わらない味が好きだから、ブレは致命傷なんだ。」
作業の手は正確で無駄がなかった。
味噌を溶かす湯の温度、もつの下処理、野菜の分量。
どれも単純に見えて微調整の積み重ね。
「うちの煮込み、変わってないって言われるけどさ。正直、10年前のものと全然違うんだ。常連は気づかないふりしてくれてるだけ(笑)」
店主が声を潜めて笑う。
「変わってないことに安心したいお客さんと、変え続けないと持たない店との、黙ったやりとり。それがこの煮込みにあらわれてるんじゃないかな?」
「それって商売の本質を突いてると思います。」
常連客のひとりが静かにのれんをくぐる。
あいさつもせずにカウンターに座り、
「煮込み、ねぎ多めで」とだけ。
田島は「はいよ。」と返し、寸胴に手を伸ばす。
京花はその様子をスマホで録画しながら思った。
ここには余計な言葉がない。
「昔、このあたりは農家が多くてね。昼働いて、夜飲むためじゃなく、休むためにもつ煮を食べる人が多かったんだ。だから味は沁みる方向に進化した。刺激じゃなく、落ち着く安堵の味にね。」
東京の郊外で白味噌が生き残った理由。
それは、「他の土地よりも濃い東京の味文化」へのアンチテーゼではなく、「東京の中で休める場所が必要だった」から。
「昔から白は疲れた人の味噌って言うんだよ。」
田島はそう言って、最後に味見用の小皿を京花に差し出した。
口に含むと、前回よりも香りがやさしかった。
ややとろみが強く、噛むごとに深くなる静かな温度感の味。。
「この味、弱くしたんですか?」
「おっ、よくわかったな。昨日より暖かいから味噌の塩を0.2g落としたんだ。」
「0.2g...。」
「でも常連さん達、今日の味はちょっと落ち着くって言うだろうね。」
―――
外に出ると、服に味噌の香りがまとわりついていた。
東京という都市のなかで静かに続いてきた白い味。
その背景には、測り続ける料理人がいた。
スマホを開いて京花は録音を開始する。
「今日、再び、白味噌のもつ煮込みをいただきました。前回と違ったのは、味だけじゃありません。作り手の見えない手つきと、語られない想いが、この料理を名物と呼べるものにしていたのだと確かに思いました。」
―――
「白味噌のもつ煮、奥が深いな。」
スタジオのモニターに並ぶ録音ファイルを聴き終えたあと、千紘がしみじみと呟いた。
「優しいって言葉じゃ足りない。かといって、濃厚でも、重いとかでもないし。」
「甘いけど、甘えた味じゃない。削ぎ落とされてるのに、どこか芯がある。そういう味って説明しづらいすね。」
颯が台本の素案をスクロールしながら言う。
京花は録音メモを眺めていた。
鍋の音、店主の声、客の箸の動き。
どれも派手じゃない。
だけど確かに積み重ねてきた東京の時間が映っていた。
「見えない手つきって言葉、入れたくないです?」
水島が画面を覗き込みながら提案する。
「今回の味、誰かの手間ってより、誰かの感情の味がする。語るなら、味噌より人の感覚を伝えたほうがリアルかも。」
「でも、感情を入れすぎると、料理の説明がぼやけるよ?」
千紘が冷静に返す。
「白味噌もつ煮って、温度と塩分の設計図みたいな味でしょ。あまり感情で包みすぎると、伝わらない人もいるかもしれない。」
京花はしばらく黙ってから言った。
「じゃあ、感情だけじゃなくて、温度も語ろう!」
「温度?」
「うん。何度で煮て、どのくらいで塩を引いて、なぜ毎日、味が違うのか。その判断の裏にある感覚を私は料理の声だと思ったの。」
「それ、ちょっとカッコよすぎっす。」
「じゃあ、味が語ってたにする?」
「ポエムすぎ。」
「塩が言ってたは?」
「もはや狂気(笑)」
笑いが広がったあと、京花はマイクに向き直った。
録音ボタンが押され、赤ランプが灯る。
「こんばんは。『味で語ろう』の京花です。今回、私が出会ったのは、白味噌のもつ煮込みでした。」
「練馬区・大泉学園の駅前の小さな老舗酒場。昼から煮込みが炊かれ、常連さん達は何も言わずに食べていきます。」
「味噌は、白。だけど、芯がある。優しいようで、引き締まっている。その味には、変わらない為に変え続けるという工夫が詰まっていました。」
「店主は白味噌は安定しない。なので支える味を、1g単位で足す。毎日天気と相談して、同じようで少しずつ違う味を仕上げる。その工夫が、まるで東京の暮らしそのものでした。」
「私は、王道ではない味を名物と呼んでいますよね。なぜなら、その味を作ってきた時間が、誰かにとっては日常であり、居場所であり、記憶だからです。」
「このポッドキャストでは、毎回ひとつずつ、東京のあちこちにある素敵な味を、名物と呼びながら紹介しています。リスナーのみなさんの記憶や体験も、立派な名物”の一部です。」
「なので、ぜひ教えてください。あなたの知ってる東京の味、覚えている東京のお土産、そして、忘れられそうな味も。私と一緒に、東京の味を残していけたら嬉しいです。」
収録を終えたあと、
「これ、なんか家帰って静かに聞きたいやつだな。」
「そういうときこその白味噌もつ煮だよ。」
千紘がつぶやき、水島がヘッドホンを外した。
「白味噌のもつ煮で、こんなにDMくるんすね。」
スタジオのモニターに並ぶメッセージの一覧を見ながら、千紘が目を丸くする。
SNSには様々な声が届いた。
「母が清瀬出身で、うちのもつ煮は白。放送を聞いて、すぐ実家に頼みました。」
「白味噌のもつ煮は東京の余白だと思う。」
「東京にも、小さな田舎があるんですね。」
どの言葉にも、味と一緒に帰ってきた記憶があった。
白くとろみを帯びた汁の向こうで、湯気がゆらぎ、遠い台所の匂いが鼻の奥をくすぐる。
それは都会の喧騒の隙間に、ふっと入り込む柔らかな余白だった。
「東京の余白って、いい表現。」
颯がつぶやく。
「味って主張することだけじゃなくて、そっとそこにいるって在り方もあるんだよね。」
「だから東京の名物って、一回忘れられた味の方がリアルなのかも。」
「すぐ思い出されないくらい、ちゃんと暮らしに染みてたってことっすね。」
水島が画面をタップして次の投稿を表示する。
「「ウチの父、練馬生まれなんですけど、東京のもつ煮は白って言ってました。子ども心にテレビでは茶色だよ?って会話していたの思い出しました。
今ならわかります。東京にも小さな田舎があるんだって。」」
@hiko_neri
「「旦那が福井出身で、白味噌は正月用って言うんですが、私は白い煮込みこそ、平日東”だと思ってます。白味噌の東京、これからも発掘してほしいです!」」
@mari_beautiful_tokyo
京花はそれらの言葉に目を細めながら静かに言った。
「白味噌って、何も語らないようで、語りかけてくる味だと思う。よく帰ってきたねとか、今日も頑張ったねとか。味じゃなくて、心が染みてる感じ。」
千紘がぽつりと言う。
「言葉にするより、噛んでる方が伝わる味ってあるよね。」
「あるある。言葉より、咀嚼音が語るみたいな?」
「やだやだ、それ放送事故やん(笑)」
SNSにも、じわじわとハッシュタグが増えていた。
#東京白味噌派
#うちの実家の煮込み色比べ
#白い煮込みを語るのむずい問題
#味で語ろう
水島がふいに画面を見ながら言った。
「この人、料理じゃなくて、空気についてしか書いてないのに、なんか心に残るっすね。」
「「昔、商店街の奥に白い煮込みがあった。味は思い出せない。でも、湯気の中に立ってた親父の背中だけ、ずっと記憶に残ってる。」
@genba_to_tokyo
京花は、その投稿を読み上げたあと、静かにマイクを握った。
「東京って、味の記憶と、風景の記憶が、ぐるっと重なって残ってる街なんですね。」
そして、リスナーへの返信収録として、こう語りかける。
「今日も沢山の東京の白の感想をありがとうございました。味噌の色は、地域によっても、家庭によっても、違います。
でも、そこに誰かの正しさがあることが素敵ですよね。」
―――
「「なんで白味噌のもつ煮が名物なの?」」
そんな声がSNSで一部出てきた。
しかし、それ以上に多かったのは、
「「旅行に行って、東京っぽい土産って何かとなって悩むことありますよね。、こういう味の記憶をもらえるのって、いちばんの土産だと思いました。」
@aya_go_to_nerima
「買えないからこそ土産って、目から鱗でした。白味噌の煮込みは私にとって母の味。そのことを思い出せたのが、何よりの贈り物でした。」
@daikonaka
千紘が画面をスクロールしながらつぶやいた。
「今回は、なんか…反響の質が違う。」
「うん、レシピとか豆知識とかじゃなくて、自分の中の東京に繋がってきてる感じするっす。」
颯が補足する。
―――
南波にとって、京花は厄介な存在だった。
昔、同じ編集部で働いていた頃、彼は京花を「数字を取れる素材」として見ていた。
現場に出せば必ず何かを拾ってくる嗅覚と、聞き手の心を動かす話し方。
それは南波が自分にはないと知っている武器だった。
しかし、同時に、彼女の感情優先のやり方が理解できなかった。
記事は数字だ。
感動や美談は、一時の波にすぎない。
それを信じきって動く京花の姿は、羨ましくもあり、苛立ちの種でもあった。
編集部を辞めて記者に転じた今も、その感情は変わらない。
彼女の番組が人気を集めるたび、どこかで胸がざわつく。
嫉妬か、悔しさか、自分でもわからない。
ただ、京花が自分の知らない別の正しさで生きているのが、気に食わなかった。
そんな中、一つの記事が波紋を呼んだ。
南波修司、週刊誌記者で、かつて京花の編集者だった男が出したウェブ記事。
「「白味噌もつ煮込みは“本流”ではない」」
「「郷愁を武器にした過剰な美化」」
「ポッドキャストの名物認定の基準があいまいすぎる」」
記事の末尾に、小さな見出しがあった。
『次回予告:注目のクリエイター・るいと京花、共演!』
その一行を見た瞬間、胃の奥がきゅっと縮む。
数日前、SNSで流れてきた、るいの投稿を思い出す。
色鮮やかな柚子だれの団子写真に、短いキャプションが添えられていた。
《東京の甘さに、少しだけ風を足してみました》
いいね数は数万を超えていた。
彼女の存在は、京花にとって甘くも苦い過去そのものだった。
二年前、ある配信イベントで共演した時、京花の言葉が編集で切り取られ、 あたかも、るいを否定しているかのように仕立てられた。
その仕掛け人が、当時の編集担当だった南波だ。
炎上は一週間続き、京花は謝罪コメントを出すしかなかった。
本当は誤解だったのに、真実は記事の影に押し潰された。
画面に映る「共演」という文字が、再び同じ罠へと引きずり込まれる予感を呼び起こす。
胸の奥がざわつき、呼吸が浅くなる。
南波がこの予告をわざわざ入れた理由...。
それを考えるだけで、背中に冷たい汗が流れた。
しかし、京花のコメント欄は荒れなかった。
反対に南波への反論が多数だった。
「白味噌の煮込みが“東京らしくないなら、東京って何なんですか?」」
@shitamachi_style
「本流じゃないから語るなっていうなら、東京に本流なんてあるのか?って話になりますよ?」
@mado_tokyo_note
中には「うちは赤味噌こそ東京の味だと思ってた」
という声もあり、色や味の違いがそのまま東京観の違いになるのが面白かった。
京花はそのDMを見てゆっくりと息を吐いた。
―――
「東京のお土産って何ですか?って質問、昔からよく聞かれてたんだよね。」
「雷おこし? 東京ばな奈? 人形焼?」
「みんな物として渡せるものばかり探すけど、でも、本当は持ち帰って語りたくなる味こそが、お土産なんじゃないかな?」
「東京で何食べた?って聞かれて、白味噌のもつ煮食べたんだって言えること。それってもう、形じゃないお土産でしょ?」
水島がつぶやいた。
「味をもらったんじゃなくて、語る種をもらったってことです?」
「そう。味は、語れるお土産。」
―――
「東京のお土産って、なんだろう?」
この疑問から、すべてが始まった気がする。
番組が始まって、いくつかの味を紹介してきたけれど、
本当に東京らしいものって何なのか。
その問いには、耳が痛い思いだ。
「雷おこしもいいけど」「人形焼もベタすぎる」「東京ばな奈は定番すぎる」
みんな、そうやって東京らしい味を探してきた。
でも、私は答えにたどりついた気がしている。
「白味噌のもつ煮込み」という料理は、決して誰もが知る名物ではない。でも、東京で暮らす人の中に、それが東京だったと語る人達がいた。
それらは地図に載ってない東京名物。
駅ビルにもガイドブックにも出てこない。
でも、人の体に染みついている確かな東京だった。
買えなくてもいい。持ち帰れなくてもいい。
大切なのは誰かに語りたくなること。
お土産は形だけのものだけではない。
東京で食べた味は記憶となり、お土産話として語られることもそのひとつなのだ。




