7 血の耐性
夕食を終え部屋に戻りラミレスに話を聞いてみる。
「ねぇラミレス、この国はいつ頃できたのかしら?私達の伝承では1000年前に竜王様が天界に戻られたと言われているのだけれど」
「私がまだ生まれる前のことですが、この国自体は何千年も前からあるはずです。確かに陛下は少しの間人間界でお過ごしになられていたそうですが、理由などは私にもわかりません」
「そう…では伝承はあながち間違いってわけでもないのね…」
「あなた達にとって聖女とは何なのかしら?人間界では特別な存在として崇められているのだけれど」
ヴィストリアでは聖女は天界へと送られてしまうが、普通の国では国の繁栄のため大変重宝されると聞いている。
聖女なしでは戦争もできないと言われるくらいに。
ヴィストリアのように竜の加護を受けていなければ聖女を手放すなんてこと考えられないのだ。
「私達の認識では神の祝福を受けた人間、程度のものでしょうか。この世界では人間達より遥かに強い者が暮らしています。少し治癒魔法が使えるくらいでは特に何の価値もありませんね。しいて言うのであれば、我々の血への耐性が高いという事でしょうか」
「血の耐性?どういうこと?」
「先ほどの夕食の時に陛下も仰っていましたが、人間と結婚した者は人間を連れ天界で暮らすのです。その際に伴侶の血を分け与えることで同じ種族へと転身し、長く添い遂げられるようになります。その際あまりに強力な者の血であると人間では耐えられず死に至ることもあるので、その際は血を薄めて転身させるのです。その血への耐性が高いことから聖女が竜王様の伴侶に選ばれているのでしょう」
「そうなのね…その耐性というのはどうやって決まるものなの?」
「基本的には魔力量です。後はそれぞれの種族との相性もありますね」
「なるほど…ありがとう、参考になったわ」
「それは良かったです。私は控えておりますので、何かご用がございましたらいつでもそちらのベルをお鳴らし下さい。飛んで参ります」
城の前に着いた時も飛んできてたし本当に一瞬で来てくれるんだろうなと思いつつどうなってるのかは聞けずにいた。
「わ、わかったわ。おやすみなさい」
(聖女ではない、か…)
私が聖女ではないとしたら意図的に私を聖女に仕立て上げた者がいるという事になる。
(どんな方法を使ったのかはわからないけれど、私が邪魔だったという事よね。今頃ヴィストリアは大丈夫かしらーーー)
ハインケル様の事も心配だが、もう私の婚約者ではないのに過度の想いを寄せてはいけない。
(これからはアーヴァイン様に気に入って頂けるように頑張らないと!)
改めて決意を固め寝る事にした。