4 いざ天界へ
ドレスを選び終わり身支度を終えた私は覚悟を決めた。
もう弱音は吐かない。
竜王様がどんなお方であれ一生をかけてお使えする。
ハインケル様の事も忘れなければならない。
きっとできるだろう。
私はこの国を護るのだから。
「よし…行きましょう」
王城へ向かう馬車に乗り込んだ。
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昨日と同じ選別の間へ通される。
ゲートは変わらず輝いていて、昨日の出来事が夢ではないと思い知らされる。
「ルヴィリア、今までご苦労であった。これからは学んだ事を竜王様のために活かすのだ。ハインケルの事は心配しなくて良い」
「ありがとうございます。陛下。必ずや竜王様のお役に立ってみせます」
「うむ。それでは出発せよ」
「はい、陛下」
私は意を決してゲートをくぐったーーー
視界が真っ白になり平衡感覚がなくなる。
それでも前へと進み続けた。
やがてゲートらしきものが見えてきた。
(きっと出口だわ…!)
ゲートをくぐると辺り一面花畑の丘のようなところにでた。
私が出るとゲートは消えてしまった。
(綺麗なところ…これが天界?私はどこに行けばいいのかしら)
右も左もわからず困惑していると、光とともに誰かが現れた。
光が消えその人物が見えるようになると息を呑むほどの美男が立っていた。
輝くような長い銀髪を緩く束ね、紫の瞳は瞳孔が細く人間ではないことを示している。
長いまつ毛は瞳に影を落とし、色白で中性的でもあるがはっきりと男性だとわかるような不思議な雰囲気を纏っている。
「やはり今年も来たのか…」
苦虫を噛み潰したような声で彼が言った。
「あの、ここは天界でしょうか…?私、竜王様にお会いしなければならないんです」
「竜王と呼ばれているのは私だ。君は竜王の花嫁か?」
「えっ、竜王様ですか?!私てっきり竜の姿をされているものだと…!大変失礼致しました。私、ルヴィリア・リュクス・ヴァレンティと申します。この命が続く限り竜王様の細君としてお仕えさせて頂きたく参りました」
慌てながらも優雅な一例をすると彼はますます顔を曇らせた。
「君はーーーそうか。これも神の思し召しめしか。しかし私は花嫁など欲してはいない」
花嫁はいらないと言われ衝撃だったが彼は言葉を続ける。
「私に君は必要ない。どこか好きなところへ送ってやろう。元の国に帰れば迫害されるだろうから他の国を選ぶといい。行きたいところはあるか?」
「そんな…私、竜王様の花嫁になるためにここへ来たのです。このまま帰るわけには参りません」
「気にする事はない。今までの者達もみな人間界へ帰している。花嫁という名の生贄は気に入らないのでな。私が君の国を護っているのは私自身の意志であって、君たちが代償を払う必要はない」
(生贄…確かにそうだわ)
こうも突き放されるとは思わなかったが、私の気持ちは変わらない。
「例えそうだとしても、不本意だったとはいえ私も覚悟を持ってここまで来たのです。花嫁が不要であれば小間使いでも構いませんのでこちらに置いてください」
竜王様は不思議そうな目でこちらを見ると小さな声で呟いた。
「君は変わらないんだなーーー」
「え?なんですか?」
「…なんでもない。いいだろう。そこまで言うのであればついてくるが良い」
「ありがとうございます!竜王様のお役に立てるよう精一杯お仕えさせて頂きます!」
「何を言っているんだ。小間使いなどさせるわけがないだろう。君は私の大切な国の民だ。客人としてこの世界を楽しむといい」
そう言うと竜王様はゲートを開き私を招き入れた。