31 燃え尽きる命
「アーヴァイン様!」
アーヴァインがルシファーをくわえて上空へと攫っていく。
「エリーチカ。僕は1人の王である前にこの地上を守護する天使でもあるんだ。だから一つ残酷な選択を迫ってもいいかい?」
傍らにいたアレクシエルが辛そうにこちらを見ている。
「なんでしょうか」
「君の聖女の力は傷を癒すだけじゃない…魔物を浄化する力でもあるんだ。君ならこの惨状を止められる。ただし、君の命は持たないだろう。さぁ、君はどちらを選ぶ?」
品定めするようにこちらを見られる。
(そんなこと、悩むまでもない)
「私1人の命で足りるのであれば、もちろんこの国を救います」
「君ならそう言ってくれると思ったよ。でも残念ながら魔力のない君の生命力だけでは国は救えない。だから僕の魔力を分けてあげる」
「そんなことをしたらアレクシエル様はどうなるのですか?」
「僕はしばらく眠りにつくだろう。でも死ぬ訳じゃない。命は無限にあるんだ、なんてことはないさ」
エリーチカは少しの間逡巡したが、今は国を救う事が最優先だと判断する。
「わかりました。どうか私に力をお貸し下さい」
「もちろんだ。さぁ、祈ってーーー君の命が燃え尽きるまで。祈りが国を覆うまで、僕の命を吸い取って。きっと神が力を貸してくれる」
エリーチカは全ての力を捧げて神に祈る。
「どうか罪なき人々の命を救い、この争いを終わらせて下さい」
エリーチカの体から光が溢れ天へと昇り、暗かった空を照らし魔物達の体を焼いていった。
光は地上まで届き、苦しんでいた人々の痛みを取り除く。
変身のとけたアーヴァインが地面へと打ち付けられ、ルシファーが降りてくる。
「アレクシエルの入れ知恵か…余計な事を」
憔悴した様子のルシファーが恨めしそうにこちらを見ている。
どうやらルシファーも浄化の対象のようだ。
傷だらけのアーヴァインが体を引き摺ってこちらに来ようとするも、うまく歩けず躓いてしまう。
「やめるんだ、エリーチカ!君の命が奪われてしまう!」
「アーヴァイン様、この命で皆を救えるのであれば私は本望です。今まで守って頂きありがとうございます」
エリーチカの体が輝きを増す。
比例してどんどん体は重くなり、自分の体じゃないような感覚に襲われる。
「くっ…ここまでか…」
ルシファーは辛そうに呟き、転移の光に包まれ消えていった。
「アーヴァイン、残党の処理を頼む!」
アレクシエルが叫ぶ。
エリーチカの体は限界を迎え、光が収束していく。
(これで、皆を救えたのね…良かった…)
そうしてエリーチカの命は燃え尽きた。
アーヴァインはエリーチカを救えなかったことが悔しくて仕方なかったが、エリーチカの遺志をくんで国を守ろうと再び竜に変化する。
浄化の力で弱っている魔物達を狩るのは容易い事だった。
青い炎で全てを燃やし尽くし、領民たちが無事であることを確認する。
そして城まで行き、高らかに宣言する。
「この国は聖女によって護られた。今後は竜王である私がこの国を守護する。いかなる敵も排除してやろう。聖女が愛したこの国を護るために」
民衆から自然と拍手が起きる。
それはやがて歓声に変わり、竜王を讃えるものになった。
これがこの国が聖竜皇国となった瞬間だった。




