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2 選別の儀

あっという間にその日はやってきた。


100年に1度しか執り行われないため、儀式について詳しく知るものは滅多にいない。

皇族であるハインケル様によると、選別の儀は天界へと通じると言われるゲートの前で行われる。

そこで祈りを捧げ、ゲートを開くことができたら聖女ということになる。

また、聖女は治癒魔法を使うことができ、その癒しの力は国中に広がるという。


儀に呼ばれるのは魔力を持つ16歳から20歳の娘たちだ。

魔力持ちは貴族に多いが、時に平民にも現れる。

そのため様々な身分の娘たちが集められていた。

ルヴィリアも高い魔力を持ち、実は魔法使いとしても一流である。

魔力量で聖女かどうか決まるとしたら、間違いなくルヴィリアが選ばれるだろう。

それこそがルヴィリアが皇子の婚約者に選ばれた理由でもあり、公爵家の血筋というのは伊達ではない。


「次、ルヴィリア・リュクス・ヴァレンティ公爵令嬢、お入り下さい」

「はい」

意を決して部屋に入ると、目の前には人一人は余裕で通れそうな大きな鏡があり、その前で祈りを捧げるようだった。

吹き抜けになった2階部分には皇族の方や教会のお偉方などが座しており、神聖な空気でピリピリとしている。


「始めて下さい」

「わかりました」

鏡の前に跪き手を組み祈りのポーズをとる。

(なんて祈ればいいのかしら…?)


そんな事を思っていると、鏡が光り始め辺りを包み込み、鏡面が波打ち始める。

(え、嘘でしょ?!)

光はやがて収束し鏡の縁に溢れる程度になった。

それまで鏡だったものがゲートに変わったのだ。

誰が見てもそう思う。

伝説は本当だった。

そこにいた誰もが驚きを隠せない様子でゲートとルヴィリアを交互に見つめている。


大司教様が立ち上がると大きな声でこう言った。

「ルヴィリア公爵令嬢が聖女であることをここに宣言する!」

「ッ、私まだ何も祈っておりません!何かの間違いですわ!」

観客たちがザワつき始める。


「しかしゲートが開いたのは事実。天界へ行くべきは貴女だという思し召しなのです」

「しかし、私にはハインケル様という婚約者がいらっしゃいます。竜王様の元へは参れません…!」

そんな言い訳が通用しないことはわかっている。

わかってはいるが、現実を認められない。

私は今までハインケル様の妻となるためだけに生きてきたのに。


「ルヴィリア、僕のことは気にしなくていい。君が本当に聖女だとは思わなかったが、こうなってしまった以上この国のためにも竜王様の花嫁となって欲しい」

「そんな…」


「決まりだな」

皇帝陛下が口を開く。

「ルヴィリア・リュクス・ヴァレンティ。そなたを竜王様の花嫁とし天界へと送り出すこととする。異論は認めない。決行は明日の黄昏れ時だ。花嫁として恥ずかしくない支度を整えてくるように」


混乱と絶望の中、小さな声で「はい…」と呟くことしかできなかった。

そう、これで私の人生が大きく変わってしまったのだーーー

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