13 吸血鬼の王
部屋に戻るとニヤついたラミレスが待っていた。
「初デートはいかがでしたか、ルヴィリア様」
「なっ、、、デート?!そんなものじゃないわ、町を案内して頂いただけで…あとは…髪飾りを頂いたわ」
「立派なデートじゃないですか!」
「そう、かしら…でも確かに女性達の視線が痛かったわ」
「陛下は未婚であの美しさですからね…国中の女性は陛下のファンと言っても過言ではないくらいですから」
「そうよね。竜人は皆美しい容姿をされているけどアーヴァイン様は別格だわ。目が眩んでしまいそう」
「それを直接陛下にお伝えしてしまえばいいと思いますよ」
「そんなことできるわけないでしょう!からかうのはやめてちょうだい」
部屋着のドレスに着替え、夕食へと向かう。
(ラミレスがデートなんて言うから緊張しちゃうじゃない…)
「アーヴァイン様、お昼はありがとうございました。とっても楽しかったですわ」
「それなら良かった。次に行く時はメインストリートをゆっくり見て回ろう。君の言っていたスイーツ店も行かなければな」
「はい!是非ともお願い致します!それと、髪飾りをありがとうございました。大切にしますわ」
「気に入ってくれて良かった」
アーヴァイン様はいつも以上に優しい目をして微笑んだ。
あっという間に晩餐の時間は過ぎ、アーヴァイン様とのお話しの時間も終わってしまった。
(もっとアーヴァイン様の事を知りたいわ)
今までは竜王様の花嫁になることだけ考えていたけれど、竜王としてだけでなく、アーヴァイン様自身のことを知りたいと思うようになってきた。
(それにしても私はこの世界の知識がなさすぎるし、しばらくは書庫で勉強しなくちゃ)
そうして何日か書庫に通い詰めていた頃、息抜きに庭園でお菓子を頬張っていると聞いたことのない声が聞こえてきた。
「へぇ、お前がアーヴァインの連れてた人間か。珍しいもんだと思って見に来てみたらそういうことか。なるほどな。なぁお前、俺の女になれよ」
突然過ぎることに頭が???でいっぱいになる。
(漆黒の髪に赤い瞳、白い肌…この世の者とは思えない美貌。竜人、ではないわね。一体誰なのかしら。なぜこんな所へ?というか俺の女ってどういうこと?!)
「いきなりなんなんですか?あなたは誰なんです?なぜそんなことを…!」
「俺はシリウス。吸血鬼の王だ」
「吸血鬼の王…?!ということはヴィストリア聖竜皇国を滅ぼしにきた悪魔?!」
「なんだそれ。そんな風に語り継がれてんのか。まぁ間違っちゃいないけどよ。伝承ってのはいつも適当だからな。で、そんなことは今はいい」
(え、全然良くないんですけど?)
「アーヴァインが何故お前を側に置いているか聞いたのか?」
「え…何故って、私が帰らないって言ったからで…」
「そうか、何も聞いていないんだな。面白い。それならそれでいい。で、返事は?」
「返事って俺の女にならないかってことですか?お断りです」
「ははっ、そうか。お前らしいな。だが俺は必ずお前を手に入れる。まずはお前の手助けをしてやろう」
「手助け…?」
ますます訳のわからない事になってきた。
(祖国の宿敵であるはずの吸血鬼の王が私の手助け?)
「お前、聖女でもないのにどうしてこっちの世界に来られた?」
「それは…わからなくて…」
「ならそれを知りに行こうじゃないか。さぁ、人間界に行くぞ」
「えっ?!」
シリウスと名乗った男は私を抱き寄せると転移の光を発動させた。




