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12 竜の加護

マーケットの喧騒を抜け、落ち着いた区画へとやってきた。

「ここがメインストリートですか…なんだか高級感のある佇まいですね」

「この通りに店を構えるのは名誉あることだからな。一流の店ばかり並んでいる」


「なるほど。ではこの通り以外にもお店があるのですね」

「あぁ、住宅街の方や路地裏などにも色々な店がある。エルドラドでは商売をするのに許可はいらないので様々な者たちが商いをしている」


「エル、ドラド?」

「そうか、君はどこに来たのかもわからないのだったな。ここは私がおさめるエルドラドという国だ。竜は金銀財宝が好きだからな」

「竜と言えば竜人と竜は別物なのですか?ヴィストリアでは天界に住んでいるのは竜だと言われていて、人のような姿をしているという文献は残っていなくて…私、失礼なことお聞きしてます…?」


「いや、構わない。成熟した竜が竜人に変化できるようになる。なので我々竜人は皆竜の姿に戻ることができる。その者の強さによって大きさや見た目は異なるが、君達がイメージする竜とは合致するだろう。この国の外にはまだ変化できない竜達も多く暮らしている」


「そうなんですね…ではアーヴァイン様も竜のお姿になれるのですか?ヴィストリアに残っている伝承の竜王様は、美しい白銀の鱗に紫の瞳を持った巨大な竜だったと言われているんです」

「それはきっと私だろうな。始まりの聖女がうまれ私が地上に降りた時のことだろう」


「始まりの聖女、ですか」

「言葉通り、人間界に初めて現れた聖女のことだ。今でこそ聖女は各国に存在するが、それらは始まりの聖女の力には遠く及ばない。始まりの聖女を巡って争いが起きたんだ」


「そこでお助け下さったのがアーヴァイン様なのですね」

「助ける、つもりだったーーー。だが助けられなかった。本当にすまない…」

アーヴァイン様は私の奥にある何かを見るようにしながらとても苦しそうに吐露した。


「いや、忘れてくれ。とにかくそこでせめてもの加護を授けたのがヴィストリアの始まりだ。それ以来私の名によってヴィストリアは護られている」

「はい、私達の世界ではヴィストリアに攻め込むと竜がやってきて国を滅ぼしてしまう、という伝承から独立国家として確固たる地位を築けています。お陰で戦乱の世にも関わらず戦争には無縁の国となりました。ありがとうございます」


私がそう告げるとアーヴァイン様の苦しそうな瞳に少しだけ光が戻り、しかし寂しげに微笑んだ。


「町の様子を見ることもできたし、そろそろ城に戻ろうか。今日は疲れただろう」

「そんなことありませんわ!とっても楽しかったのですから。次はメインストリートの有名なスイーツ屋さんに行きたいです。また連れてきて下さいますか…?」

アーヴァイン様はくすりと笑う。

「あぁ、必ずまた一緒にこよう」

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