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1-4

「弟子? 弟子ってなんの?」


「決まっとるやろ、焼き鳥職人の弟子や」


 おじさんは腕組みをしたまま固まって、やがて首をかしげた。


「ちょっと意味が分からないな」


「給料とかいらへんねん」


「給料が、いらない?」


「おじさんの手の空いている、店の暇な時に焼き鳥の作り方を教えてくれるだけでええねん。子供は仕事ってできひんのやろ? だからボランティアでええねん。それで鍛えてもろうて、中学卒業したらあの店で雇って欲しいねん」


 おじさんは慌てた。


「いやそれは――君今いくつなの?」


「十歳」


「いやいや! 十歳の子に、社会体験学習でもないのに仕事をさせるっていうのは、とてもじゃないけどできないよ」


「だからボランティアでええって」


「ボラン……なんでそんなことをしたいの?」


 くすんでいた少年の瞳に光が差した。


「かっこよかってん」


「うん?」


「おじさんが焼き場で焼き鳥焼く姿、めちゃめちゃかっこよかってん。ほんま、男って感じがしてん。それであの焼き鳥の味やろ? 絶対、僕もああいう焼き鳥をかっこよく焼ける人になろうって思って」


 そう、瞳を輝かせて言うのであった。おじさんは困惑しながらも、体が熱くなるのを感じた。


「そう、そうなんだ」


「だからお願いします! 弟子にしてください!」


 少年はペコリ、と頭を下げた。おじさんは嬉しさと迷惑を同時に覚えた。


「うん……でもね、俺には君を働かせる権利はないし、法律的にも……じゃあこうしようか、君が中学を卒業してもまだ焼き鳥屋で働きたいと思っていたら、高校に通いながらうちでアルバイトをするといい。採用時の面接のアピールは、俺からもプッシュしてあげる。いい? 絶対高校には行くんだよ。行きながらでも、アルバイトはできるんだから。そうなったら、できる限り指導はするよ。


 それから……そうだな、今できることは少ないけど、毎週水曜に君はイオンに夕飯のおかず買いに来るんだよね? 俺、だいたい平日は五時上がりで、五時過ぎにこのテーブルで少し休んでから帰るから、その時来てくれれば焼き鳥の串打ちのコツとか焼き方のコツとか、口頭で伝えられることは伝えるよ。それでどう?」


少年はくしゃくしゃっと顔をほころばせて、


「それでいいです! ありがとうございます、師匠!」


と叫んだ。その声はまた周囲の注目を集めてしまい、おじさんは内心辟易しながら、


(子供の考えることだ、しばらく経てば飽きてこの子の方から情熱を失くすだろう)


と思った。

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