妹
登場人物紹介
(本作にてオリジナルで登場するキャクターたちのみ)
本作の主人公 多比人 爽楽 (たびひと そら)
身長は182cmと高いが、細身で筋肉はなく、ゲームが 大好きな19歳の大学2年生。長年眼鏡をかけていたため、目つきが非常に悪く、かなりの悪人面である。黒髪ではあるが、原神の主人公と全く同じ髪型をしている。
5年前、交通事故の際、3歳年下の妹が自分を庇ったことにより死んだしまった。そこから彼女の分も背負って生きようと思い、勉学に熱心に励んだ。そのおかげで、今は理系の超難関大学に通っている。だが、勉強と息抜きのゲーム以外何もしてこなかったため、性格はかなり捻くれており、彼女どころか女の人と話すこともめったいにない恋愛とは程遠い人生を送っている。
多比人 ほたる
爽楽の妹。5年前の交通事故で亡くなった張本人。爽楽に対していつもキツい口調で話していた。爽楽以外にはいつも優しく、彼女の死には多くの人が悲しんだという。本作での蛍の性格はどことなく彼女に似ているらしい
2020年9月28日 俺はとあるゲームをインストールした。
その名は「原神」。
スマホゲームではあまり見ることのないオープンワールドRPGのゲームということで、俺はリリース前からずっと楽しみにしていた。
そして今日、ついに原神がリリースされたのだ。
俺は大学の休憩スペースに設けられたソファに座り、ゲームを開く。ダウンロードは授業中に済ませており、いつでもゲーム開始できる状態になっていた。
さて、どんなゲームなのか見せてもらおうじゃないか!
俺は期待を胸に"ゲーム開始"の文字を押す。
すると画面には神殿にありそうな幻想的な扉が現れた。
この時点ですでにクオリティが高く、今までのスマホゲームとは違うな。
俺はさらに期待を膨らませる。すると、次に画面の下にこのような文字が現れた。
"タップして進む"
その言葉通り、俺は画面をタップする。
その時だった。
扉が開き、その中に急に飲み込まれ、画面は真っ白になった。そして画面の真っ白い光はとどまることを知らず、スマホが出せる限界を超えた量の白い光が俺の視界全てを包み込んだ。
反射的に俺はすぐに目を閉じる。
な、なんだよこの光は・・・!?
結局光は数十秒にわたって俺のことを包み込み、その間俺はずっと目を開けることはなかった。
や、やっと収まったか・・・
そう思い、俺は目を開ける。すると目の前には辺り一面の青空が広がっており、彼の先ほどとは全く違う光景が広がっていた。
また、背中には光の翼のようなものがあり、そのおかげかいつのまにか空中にいるようだった。
そして、なんとかこの状況を理解しようと色々考えていたその時、後ろから突然全く知らない女の子の声がした。
「お、お兄ちゃん大丈夫・・・?」
その声に俺は振り返る。そしてそれと同時にその姿に驚いた。
白を基調とした服装になんといっても白い髪飾りが特徴的な金髪美少女が目の前に居たのだ。だが、すこしムスッとした表情してこちらを見ていた。
「はぁ、まったく。急にぼーっとするとか私をイラつかせたいの?」
優しく透き通った声でそう言う彼女。だが、言葉の内容は優しさのかけらもなく、俺に対して少しキレているようだった。
「ご、ごめん」
「まぁ、いいよ。とりあえずそろそろ次の目的地に行くからテイワットをそろそろ出よ・・・」
俺は彼女にとりあえず謝った。そして彼女は俺に少し呆れ、俺に背を向けて進み始めた。
はぁ、いったいここはどこなんだよ。夢にしては俺の意識がしっかりしすぎている気がするし・・・
そういえば"お兄ちゃん"なんて久しぶりに呼ばれた気がするな・・・
俺はそんなことを考えながらもとりあえず彼女に着いて行った。空を飛ぶなど初めてのことなはずなのにいつの間にかできているようだった。
だが、ここで事態は急変する。
「余所者、お前たちの旅はここまでだ」
目の前に暗く赤い星のような形のゲートが現れ、その中から白髪の謎の神のような人物がそう言葉を放ちながら出てきた。
「誰!?」
金髪の彼女はその者に厳しい口調でそう言う。
しかし、現れた神は聞く耳を持たない。
「この"天理の調停者"が人の子の驕りに終焉を」
神はそのような言葉を放ちながらいきなり攻撃を仕掛けてくる。
赤黒い四角い物体が重なってできた謎の触手のようなものが2本現れ、それぞれが2人を目掛けて真っ直ぐ飛んでくる。
は、はぁ!?
俺は突然の出来事に身体が固まってしまう。
「何やってるの!早く動いてお兄ちゃん!」
しかし彼女のその言葉で俺は固まった身体を動かし、間一髪のその触手を避けた。
あ、危なかった!彼女が声をかけてくれなかったら死んでいたかもしれない・・・!
「お兄ちゃんはいいから逃げて!あんたは私より弱いでしょ!」
彼女は私に強く口調でそう言う。
「わ、わかった!でも、お前も勝てないと思ったらしっかりと逃げ切・・・」
彼女の言葉に俺はそう言葉を返そうとした。
だが、そんな言葉を無視して彼女は必死の表情で俺に向かって飛んできた。
そして彼女の右手は俺のことを数メートル奥へと押し飛ばした。
「兄ちゃんの・・・バカっ・・・!」
彼女はそう最後に言葉を放つと急に赤黒い四角い物体が彼女のことを包み込んだ。
そして包み込んだ後はすぐさま収縮し、謎の神の手のひらに吸収されていった。
その瞬間、俺には何が起きたのか全くわからなかった。
だが、後になって考えてみればあの避けたと思っていた触手のようなものが向きを変え、背面から襲ってきていたんだと思う。
そしてその攻撃に気づかなかった俺を彼女は救ってくれたのだ。
・・・そしてこれは2度目の出来事だった。
数年前、俺の不注意に赤信号を渡った際に妹が俺のことを今と同じように押し出してくれたおかげで俺は助かったが、かわりに彼女が命が落としてしまったという実際に起きた事故。
「お兄ちゃんの・・・バカっ・・・!」
今考えればあの時妹が俺に放った最後の言葉も全く同じ言葉だった。
こうして記憶の中で少し薄れていたあの事故を今、俺は強くフラッシュバックした。
いつの間にか俺の目からは自然と涙が溢れていた。
「ほたるっーーー!!!」
そしてあの時失った妹の名前を俺は叫んだ。
そんなことも構わず、謎の神はその場に立ち尽くす俺を彼女と同じように赤黒く四角い物体で包み込もうと触手のようなものを伸ばす。
俺は逃げることせずその場でただ謎の神のほうを向き、強く睨みつける。
「よく俺のほたるを!」
次第に赤黒く四角い物体が俺の視界を包み込んだ。だが、包み込もうとするその隙間から俺は謎の神の目を強く睨みつけ続けた。
目が覚めると俺だけがいつの間にか砂浜に横たわっていた。妹は連れ去られており、空を飛ぶことなどが出来なくなっていることから力も奪われたのだろう。
今考えてみれば見た目は違えど、連れ去られた彼女は俺の妹とそっくりだった。あの俺に対してキツい口調や、それでも優しいところとか・・・
そして俺はいつの間にか彼女と妹を完全に重ねてしまっていた。
もう一度会って彼女と話したい。
いや、絶対に会って話してみせる。
「助けてくれてありがとう」という言葉を彼女に直接伝えるために・・・