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02 邂逅:消滅と救い

 

 全ての魂を霊界に送り込む事に成功したリルとリラは残されたチカラを泉へと注ぎこむ。

 するとクヴェレはまばゆい光を放ち、一瞬で目の前に静寂をもたらした。


「……これは……」


 天界はそれぞれの地に魂が住むからこそ彩られる。

 そして死神、天使、妖精が居ない今、クヴェレ、デュケルンの地以外、形はあれどモノクロの景色となった。


「リル⁇ リル⁇ だいじょーぶ?」


 本来なら全て上手くいき安堵するところなのだろうが、リルは地に足がついていないような感覚に陥っていた。そんなリルの様子を心配したリラが呼びかけるとリルはゆっくりと顔を向ける。


「リラ……ジール様……ボクは……」


「ん?……あぁ。自分が消えると思ったか?」


 リルはジールの言葉に僅かに頷く。


 死神、天使の許可無く魂を霊界に受け渡してはならない……そう言われていた。

 制約を破れば消滅する。と、そして現に死神、天使は消滅した。


 それなのに、なぜボクはーー


 リルは手のひらをじっと見つめ、自分の身体がここにあることが未だ不思議で仕方ないようだった。


「この天界では常に魂に寄り添える奴がその資格を与えられ、魂はそこに集まる。あの時、救いたいというお前の思いに妖精の魂が共鳴し自分達を預けたのがお前だった。その瞬間、すでに死神、天使は管理者の資格をなくしていたわけだからリル、そしてリラも罪を犯していない。罪を犯してないやつが消える必要はねぇだろ。」


「そう、、なのか……」


「ふっ……ここで初めて会った時に少し話したはずだけどな、まぁ大昔のことだし覚えてねぇか。なんにせよ、お前らはクヴェレを護り抜いた、よくやったな、リル、リラ。」


 そういえば……そんな事を聞いた気もする、必死になり過ぎて記憶が飛んでいたのか⁇ ということは、考え過ぎる必要もなかったのか、、とはいえ、リラとジールが居なければ護り抜けていたかも分からない。


 リルは2人に礼を告げるとクヴェレに目を向けた。


「リル?? どうしたの??」


「……クヴェレを護れても、ボクには魂の記録や管理が出来ない。」


 だから、どうか1日でも早くーー


 リルはクヴェレの前にしゃがみ、水面を見つめたまま顔を上げることが出来ずにいた。

 リラはそんな姿を見てリルの頬に擦り寄り、ジールはリルの隣に膝をつくと言葉をかけた。


「自分の役目を果たした奴に罪や罰を与えるような天界なら、とっくの昔にオレ様が悪魔の地に変えてる。リル、顔を上げろお前はこのクヴェレの門番だ、お前の願いが届かないわけねぇよ。」


「ジール様……。」


 時々思う、この方は本当に《悪魔》なのかと、そう思えるほどジールの表情は柔らかく声色は心地良く響く。


「ジールのいうとおり、リルとリラ、それから、、ジールもがんばった。」


「おい、待てリラ、オレ様はオマケか‼︎ 」


「ちゅんちゅん。」


「こういう時だけ、鳴き声で答えるんじゃねぇ‼︎‼︎」


「ふ、ふふ、あはははっ‼︎ 2人ともケンカはダメだよ、仲良くしなくちゃ……ふふっ。」


「リル、わらった。ゲンキでた?」


「いや、べつに喧嘩してたわけじゃねーよ‼︎ ったく……ま、、笑えるようになったなら大丈夫だな。」


 先程より明るい表情で頷くリルにジールはこれからのことを話し始めた。


「近々、新しい死神と天使の魂がこの地に来るはずだ。それまでの間、リルとリラはいつものようにクヴェレを温めておけばいい。死神、天使の居ない今の天界に黄の魂達が転生する事はない……だがーー」


 ジールは少し間を置き、この先の言葉をどう伝えるのか思案しているようだった。

 その表情をみたリルは黄の魂がこの地にやってくる経緯を思い返し、悲しげな表情を見せる。


「……転生することがないということは黄の魂達にとって天界への道が閉ざされているということ……」


「そうだ。現状、赤、白、黒の魂以外はクヴェレだけじゃなく天界に辿りつけない。」


「では、全く傷の癒えていない魂は地上から霊界を通り抜けても……」


「あぁ、その時に天界への道が閉ざされていた場合……再生するチカラを持たない魂は残念だが……」


「ジール。あくま。いじわるダメ。あげて、さげるのよくない。」


「リラ……?」


「あ? べつに意地悪で言ってる訳じゃねぇよ、これから起こり得ることを言っただけだ。ま、、悪魔なのは否定しねぇけどな。で、話には続きがある、お前らも知ってるだろ?? 黄の魂はどんなに深い傷を負っていてもクヴェレに辿り着くまで3ヶ月はかかる。そして死神、天使はその前に必ずクヴェレに転生する。」


「え……?」


「お前らがクヴェレにチカラを送り込んだ時、光が放たれたのを覚えてるか⁇」


「はい。その光が放たれた瞬間に死神、天使が消滅して静寂が……」


「その時、放たれた光の色は⁇」


「色……。」


 リルは先程の流れを思い返してみるが、あまりにも集中し過ぎていて光の色までは……いやむしろ目を閉じていたんじゃないかと思えるくらいに全く記憶がない。


「おーい。リル、大丈夫かぁー⁇ おーい……こりゃダメだ。リラ、オレ様は少し休んでるから、リルの答え合わせが終わったら呼んでくれ。」


「わかった。」


 そう言い残すとジールはあくびをしながらクヴェレを囲む石畳に足を組み寝転んだ。


「リル、リル‼︎」


「へっ…⁈ リラ⁇ あれ?? ジール様は……」


「そこでやすんでる。リルがこたえわかったらおこす」


「あぁぁ……ジール様、リラもごめんよ。」


「ヒカリのイロわからない⁇」


「うん……ねぇリラ、ボクもしかして目を閉じてた⁇」


「ううん、リルあけてた。だけど、すごくしんけんだった、だからあっというまだった」


「そっか……」


「リル、おちこまない。リラわかる。アカとシロのヒカリ」


「……アカとシロ……ん??」


 赤と白ーー


「まさか⁉︎ 死神と天使⁈」


「そう‼︎ リルあたり。よかった、ジールおこす。」


 そう言うとリラはジールの元へ飛んで行った。




「ジール‼︎ ジール‼︎ おきる‼︎ リルこたえわかった‼︎」


「ぅうん…ふぁぁ。。。あー。思ったより早かったな。」


「ジール‼︎ おきる‼︎」


「あいあい、わぁってるよ、、、ったく、、」


 ジールが立ち上がるのに気づいたリルは勢いよく駆け寄る。


「ジール様‼︎‼︎」


「うわ!! あぶねぇな‼︎‼︎ この至近距離で勢いよく来るな‼︎‼︎ 泉に落ちちまうだろ!!」


「す、すみません‼︎‼︎」


「ったく……で?」


「はい、あの、、死神と天使の魂はすでに何処かで芽吹いていたと言う事ですか⁇」


「ん?あぁ…まぁ、そうなるな。相変わらずヒントをやると悟るのは早いな。あの争いが起きてから1か月の間にクヴェレはお前の心に反応して新たな管理者となる魂を求め続けた、そしてお前らがチカラを送り込んだと同時に見つかったんだろ。」


「だから赤と白の光を放った……⁇」


「あぁ。死神と天使は黄の魂にさえならなかった魂、元々そうなるべき魂だ。簡単には見つからないはずだが、こうも早く見つかるなんてな。」


「では‼︎ 死神と天使は必ず転生してくださるのですね‼︎」


「あぁ。だから、《お前の願いが届かないなんてことはない》って言ったろ。」


「良かった……。」


「ふっ。早くて一週間ってとこだな、その間、クヴェレをしっかり温めておけよ。」


「はいっ!!、、、ん??」


 しっかり温めておけよーー


 という事はジール様は何処かに行ってしまうのか⁇


 湧き上がる疑問を投げかけようとした時、先にリラが口にした。


「ジール、どこにいく⁇」


「あん?あー。新しい死神、天使が転生するまでオレ様はこの地でやることがねぇからな、地上に戻るぜ。それにデュケルンから地上に降ろした奴らにも現状を伝えてやらねぇとな。」


 なんら驚くことでも不思議な事でもない。

 ジールは悪魔、気ままに地上に降りて暮らす。

 それに確か、天界と地上を繋ぐビルを至るところに出現させてはその地下でBARやカフェを開いている。

 神出鬼没で不定期だが、開くと繁盛するらしい。

 そして、そこで出会った人間の人生を聞き興味を持った者と魂の契約をすることもあるとかないとか。


 それを考えたら、死神、天使が転生するのが早くて一週間とは言え、ここに留まる理由はないのだ。


「そうですよね……。分かりました‼︎ では死神、天使の魂が転生したら、またお呼びしてよろしいですか⁇」


「おぅ、もちろんだ。それから、オレ様の姿に化けた奴らが居るようなら、すぐ報告しろ。」


 じゃあ、またなーー


 ジールはそう言い残すと黒い光を放ちクヴェレから地上へと降りて行った。




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