スレードの言葉
「ネムレス」という名を貰ってから、一ヶ月がすぎた。
まだ、その名前で呼ばれることに馴染んだ訳では無いが、そう呼ばれることを嫌だと思うこともなかった。
隣にいるスレードは、誰か他の人間がいる時には丁寧な口調だが、ネムレスと二人になるとくだけた喋り方にと変わる。
「神になって一ヶ月。
お前の感想は、どうだか知らんが、アイツらには評判はいいみたいだぞ。ここのヤツらは、この辺鄙な場所から出て行くことも出来ないヤツらばかりだ。そんなヤツらには、何よりも神が必要なのさ。」
「スレードさん、僕は神でもないし、ネムレスでもない。」
「それは言いっこなしだ。なぜなら、お前は緑の光に反応をした。それはネムレスである証拠だ。」
「その緑の光は覚えてるんです。でも、その後のことは全く知らなくて。だから、なんか人を騙しているみたいで。」
ネムレスは、力弱くそう言った。
この海の中を潜った世界は、文化的ではあったが、技術力がネムレスがいた世界と比べれば、劣っていた。それも遥かに。
技術力の進歩とともに人が神を必要としなくなったのだとしたのならば、この世界は確かに神が必要な世界だった。それでなければ、人々は生きていけないだろう。何が起こるかわからない世界では、理由が必要になってくる。それもわかりやすい理由が。それが「神」であった。
「騙してるっていえばそうだが、ヤツらも騙して欲しいんだぜ。それでなけりゃ、生きていけねぇんだから。」
「それは、そうかも知れませんが。」
「この話は、これで終わりだ。お前には、もっと神になって貰わなきゃならないからな。」
スレードの言葉に、行くあてもないネムレスは頷くしかなかった。




