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第二話:ろくでなしのエディ

 俺には人間だった頃の記憶はない。


 エディの奴が俺をモンスター岩石男に変身させた時に、それまでの記憶も封印されたらしい。

 一般常識とかは覚えているし、会話とかも普通に出来るんだけどな。人間に戻れば俺のそれまでの人生の記憶も復活するようだ。


 エディが言うには、どうやら俺は冒険者を生業としていたらしく、あるパーティーと一緒にエディを捕まえに来たようだが返り討ちにされたみたいだ。


 モンスターに変身させられた俺を見て、仲間は遁走したらしい。

 冷たい奴らだ。

 どんな連中だったか今は思い出せないけど。


 俺はエディに情けなくも謝って人間に戻してくれるよう頼んだが、

 それを聞いたエディの奴は、

「まあ、三年間はその姿でおいらの小間使いとして働いてもらうかな」とぬかしやがった。


「えー! 三年間もこんな姿なのかよ。なんとかもっと短くしてくれよ」

「しょうがねーなあ。じゃあ、一年更新だな。お前が素直においらに従うようなら一年で戻してやろう。ダメなら延長でそのまま。まあ、三年後には人間に戻すってことは約束してやる」と言ってヘラヘラと笑いやがった。


 本当かよ。

 信用できなさそうな奴だが、とりあえず従うしかなかった。


 そういうわけでこのモンスター岩石男状態のまま、俺はエディにこき使われる羽目になったのだが。


 このエディという魔法使いは魔法の実力はどれくらいあるのか知らんが、とにかくやることがせこい。外見も汚れたローブ姿に髪の毛はボサボサ、顔は無精ひげだらけ。


 いつも酒臭い。

 浮浪者同然だな。

 なんだか体調も悪そうだ。

 いつもイライラしている。


 普段はこの国のかなり辺鄙な場所にある、山の奥地の洞窟に住んでいる。

 洞窟の目の前には山道があるのだが、人が通るのはほとんど見たことが無いな。


 さて、エディの普段の行動だが、たまにボロボロのローブ姿で山の麓の村に下りて行って、なにをするかといえば食料などを盗んだりしていた。村まで行くには俺の上に乗って近くまで行く。フワフワと移動して村に近づくと俺から降りて大きい布をかける。


「お前は目立ちすぎるからな。おいらが戻るまでじっとしてろ」

 村の方へこっそりと近づくエディ。


 俺はかけられた布の隙間から奴の行動を覗く。

 見ていると本当に情けなくなる。


 エディは村の家に忍び込んでは食料や酒を盗んだり、畑から大根を引き抜いたりなど泥棒三昧。おまけに村の若い娘さんが農作業をしているのを見つけると、匍匐前進でこっそりと近づいてお尻をちょっと触ったり。


 こいつは品性下劣な痴漢だな。

 こんなしょぼい男に負けたとは、正直、冒険者として情けない思いだ。


 娘さんが悲鳴をあげると、エディの奴は脱兎のごとく逃げ出してきた。

 気がついた村人たちは石ころなどをエディに投げつけている。


「痛てっ!」


 何発かエディの背中に当たった。


 村人の中に若い奴がいて怪力の持ち主なのか、デカい石をエディに投げつけた。

 エディの頭をかすめる。


「ヒィ!」と情けない悲鳴をあげるエディ。

 惜しいなあ、いっそあのデカい石がエディの頭に直撃すればいいのにとその時は思ったもんだ。


 エディはヒイコラ走ってきて、やっと俺が隠れているところに戻ってきた。


 俺に乗っかると、

「早く逃げろ!」と俺をバシバシと鉄の棒で殴る。

「痛い! 痛い! そんなに殴るなよ! 俺は馬じゃねーよ! 鞭じゃあるまいし」

「うるせー! 村人に捕まっちまうだろ!」

 村人たちが大勢で追いかけてくるところを、俺はエディを乗せて必死になって逃げた。


 全く、なんで本来冒険者である俺が痴漢の逃亡を助けなきゃならんのだ!

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