第十一話:子供たちを乗せる
ドロシーが村に治療院を開いた。
週二日ほど村役場の一室を借りて、回復魔法を使って治療を行う。
この村に医者はいない。
調子の悪いときは、エイブラハムの家まで行ってたそうだ。
魔法の練習も兼ねているので、治療代はほとんど取らない。
貧しい人には無料。
評判も上々らしい。
俺の方は村人からすっかり認知され、ドロシーを上に座らせて乗り物のふりをする必要もなくなり、村の中ならドロシーがいなくても冒険者とかに攻撃されることもなくなった。
ある日、冒険者ギルドから出てきたドロシーが俺に言った。
「冒険者ギルドにガンちゃんの名前を登録しておきましたよ。もう、乗り物扱いにしなくてもいいと思って」
「おいおい、登録するのはいいとして、なんて名前で登録したんだよ」
「えーと、本名はアレキサンダーでしたよね」
「他人には名乗るなって、エディの奴が言ってたんだけどなあ。なんでか知らないけど」
「あ、そうでしたね。ど、どうしましょうか。『ガンちゃん』に変更しましょうか」
「『ガンちゃん』はねーだろ。まあ、いいや。どうせエディの奴が言ってたことだから、酔っぱらって適当なことを言ってただけじゃないのかな」
さて、お金がそこそこ貯まってきたので、エイブラハムに俺を元の人間に戻す方法がわかったか、進捗状況を知るため手紙を出すことにした。
手が無いので、ドロシーに代筆してもらった。
冒険者ギルドを介して返事が来た。
もう少し時間がほしいとのことだった。
やはり田舎の魔法使いじゃだめかな。
しかし、こちらもエイブラハムの提示した金額まではお金が貯まっていない。
もう少し待つとするか。
そんな風に考えていたら、ドロシーが村の子供たちをたくさん連れて来た。
「子供たちが、ガンちゃんの上に乗りたいと言ってるんです。いいですよね」
「おいおい、勝手に決めるなよ」
「あ、迷惑でしたか」
またおどおどするドロシー。
「いや、迷惑とかじゃなくて、落っこちてケガしたとかしたらまずいだろ。お前、今まで二回も落ちたじゃないか」
「あ、それは私が運動神経無いためですよ。子供たちが落ちないように私が見張ってますから」
「わかったよ、ガキどもをちゃんと見ててくれよ」
「ありがとうございます。けど、やっぱりガンちゃん、優しい!」
ドロシーが子供たちに振り返って言った。
「みんな、ガンちゃんが乗せてくれるよ!」
ドロシーの言葉に、子供たちは大はしゃぎ。
しょうがないな。
村の近くの草原へ移動して、子供たちを乗せてやることにした。
草原を子供たちを乗せてゆっくりと慎重に移動する。
ほんのちょっと高くフワフワと移動するだけだが、ガキどもにはそれでも面白いようだ。
「ガンちゃん、すっかり人気者ね」と一緒に歩くドロシーも楽しそうだ。
俺は子供用の遊具じゃねーんだけどなあ。
まあ、いいか。




