第4話 アメリカからの転校生だって
月曜日の朝。
俺は寝不足でつらい身体をひきずるようにして市立橘高校へ向かっていた。
現世へ戻ってきた喜びのあまり、この週末ずーとゲームをやっていたのだ。今遊んでいるゲームは戦車を戦場に突撃させて、敵戦車を破壊するというやつで、なかなか面白い。
その後、妹の由貴が新作ゲームを買ってきて、それもやり始めたから、完徹に近い。
正直眠くて、その辺に転がって丸くなりたいくらいだった。
そんな俺の肩を、親友の田辺啓介がぽんと叩いた。
「おはよう、光」
「おはよう、啓介。あー、眠い」
俺は啓介の肩にもたれかかる。
「またゲームやって寝不足なのかよ。まだ月曜日の朝だぜ」
「しようがないだろう。由貴が新作を持ってきたんだ。新作だぜ、新作。やるしかねぇ」
「英語の小テスト、ちゃんと勉強してきたか?」
「…………そんなものがあったのか」
「おいおい、大丈夫かよ」
学校に着いたらすぐに勉強しよう。
そして学校へ着くなり鞄から、テストの範囲を教科書を見て覚えているとき、女子生徒がキャーキャー声を上げているのが聞こえた。
「アメリカからの転校生だって」
「このクラスに来るの? ずいぶん時期外れだね」
「親御さんの仕事の都合らしいよ。でもすごくハンサムだったわぁ」
職員室で転校生をチラリと見た生徒達がキャッキャッと騒いでいる。
ハンサムって男の転校生か。
俺の興味は一気に無くなった。
だが、先生がその噂の転校生を連れて教室の扉を開いた時、俺の目はこれ以上ないほど驚愕に見開かれ、心臓がドキドキと激しく脈打ちはじめた。
見覚えのある赤い髪に、あの緑の瞳。
顔立ち、体格こそ以前の奴よりも、若返っている様子はあったが、あれは間違いない。
奴だった!!!!
どうしてここにいる?
ああ、聖女ちゃんが現世にあいつを連れていくという願いをかけていた。
でも、それでもこのクラスに転校してくるってどういうことだよ!!!!
奴は教壇の先生の横で自己紹介をした後、ぴたりと俺の方に視線を向けてにっこりと笑った。
「お前、知り合いなのか?」
啓介が聞いてくるが、俺は激しく首を振る。
「知らない。あんな奴、全然知らないからな!!」