第38回 お疲れ様でした
勇者君が二体のゴブリンキングを瞬殺した。
彼はさっさと聖剣を取り出すと、それであっという間に斬り殺していた。
ゴブリンキング如きは、正直異世界では勇者君の敵ではなかった。
彼ならば寝っ転がった状態でも倒せる、楽な敵だったからだ。
ゴブリンキングの体液が飛び散る現場に、勇者君は片足をゴブリンキングの頭にのせて立っていた。
聖剣についているゴブリンキングの体液を振り落とし、それから収納庫にしまっていた。
「お疲れ様」
「お疲れ様でした」
「お疲れ様ー」
三人で一様に、労をねぎらったあと、にっこりとみんな笑った。
「じゃあ、さよならだね」
私がそう言うと、勇者君は言った。
「ああ、聖女ちゃん。元気でね。俺、聖女ちゃんが好きだったなぁ」
そういう勇者君の肩をゼノン君ががしりと掴んでいた。
「さぁ、異世界へいこうか」
少し離れたところの装甲車から、拡声器の声がする。
『そこの少年達、ただちに武器を捨てて……』
「もう武器しまったよ」
勇者君は……光君は笑った。
「勇者君、ゼノン君、元気でね」
「ああ、聖女ちゃんも」
二人はそう言って、手を振った。
一瞬で、消え去ってしまう。
彼らの方から、さよならは言われなかった。
そして、こんな現場の中に私を一人置いて。
拡声器の声がする。
『そこの女の子、両手を挙げて出てきなさい』
ひどい……
涙が止まりません!!
その後、警察に保護された私は、両親が迎えに来るまでずっと、警察署で事情聴取を受けることになった。
同行していた二人の少年の行方を尋ねられたが、私は知らないと答えた。
実際、彼らはもう、この世界のどこにもいなかったのだから。




