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第33話 のんびり暮らしたい

「なんかね、視線を感じるんだよね」


 ゼノンの言葉に俺はうなずいた。


「わかる」


 学校での昼休み、俺はいつもの踊り場でゼノンや麗子ちゃんと話していた。


「視線?」


 麗子ちゃんはこてっと首を傾げている。

 美少女がやるとかわいいな! こいつわかっててやっているなら、あざといぞ。


「そう。ずーと観察されている感じ。朝、学校へ来てから、帰るときも見ている感じだよな」


 俺がそう言うと、ゼノンもため息まじりに言った。


「そうだね。見張られているとなると、正直やりにくいね」


「……ということは、私達が警察とか自衛隊にマークされているということ? ずっと?」


「そうだよ」


「えええ? 本当に? 身バレしないように気を付けていたのに」


 麗子ちゃんは非常に困惑したように言う。


「いつかはバレると思っていたよ」


 ゼノンが階段に座る俺の横に座った。


「今は監視カメラも街のいたるところについているしね。“勇者君が岩を斬るよ”の勇者君だって、迎えの車の後をずっと追っていけば、僕らに辿り着くよね」


「…………じゃあどうするの?」


 麗子ちゃんは戸惑ったような声をあげた。

 ゼノンは俺の横で、俺の目をじっと見ながら聞いてきた。


「そう。だから、ヒカル。君に聞きたい。君はどうしたい?」


「のんびり暮らしたい」


 俺はキッパリとそう言った。

 そう、異世界で勇者として活躍した俺は、その後はまぁ適当に幸せに暮らしたかった。

 現世でごろごろしながら、コーラ飲んでポテチつまんで、ゲームをして暮らしたい。

 毎日ごろごろしたい!


「それって……ニート……ごほんごほん」


 慌ててごまかすように、麗子ちゃんが咳き込んでいる。

 聞こえてるよ!!


「そうか。でもそれって異世界でもやろうと思えばできるよ」


「え?……マジ?」


「ほら、魔法使いの秋元さん。彼はこの世界から異世界に定期的にモノを運んでいるらしい。電気も魔法で作って、奥さんと一緒にゲームをやっているって聞いたよ」


「マジで!!!!」


 俺は絶叫するような声を上げた。

 そんなこと知らなかった。なんだよ、秋元さん、どうして教えてくれなかったんだ!!

 秋元さんの奥さんは美人で、三人もいるのだ。

 その三人と一緒にのんべんだらりの異世界ゲーム生活。(おとこ)の浪漫すぎる!!

 だから秋元さんは異世界から現世へ戻って来なかったのか。


 ゼノンは俺の手をそっと取り、真剣な表情で、俺の目をじっと見つめながら言った。


「もし、君が異世界でのんびりと暮らしたいなら、僕が全面的に協力するよ」


「お前、いい奴だな!!」


 俺はゼノンを見直した。

 こいつ、意外といい奴だ。

 俺が異世界でのんびり生活する時に協力してくれるなんて。




「…………勇者君がチョロ過ぎて、ちょっと心配になるレベルかも」


 聖女ちゃんこと麗子ちゃんの呟く声は聞こえなかった。

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