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第21話 遅いよ、バーカ

「じゃあ、行こう。犠牲者が出る前に片付けよう」


「わかった」


 俺達はビルの屋上から飛び降りた。


「えっ、なんで飛び降りるの? ちょっとやめてよおおおぉぉぉぉぉぉぉぉ」


 麗子ちゃんの悲鳴が響き渡る中、俺達は無事に着地をした。


「俺がこいつは倒すから、その間に浄化を頼む」


「わかった」


 プルプルとまるで生まれたての小鹿のように震えて立つ麗子ちゃんの背中を支えながら、ゼノンは靄の立ち込める湧き場所に向かっていた。

 自衛隊の人達はみんな倒れていた。


 まぁ、麗子ちゃんが魔法でみんなを眠らせる手間が省けたと思えば、いいのかな?


 俺は収納庫から剣を取り出し、そして構えた。


 ゴブリンキングは俺に気が付いて、怪訝そうな表情をする。

 そして巨大な戦棍を大きく振り上げ、そして振り下ろす次の瞬間、俺は奴の肩の上に飛び上がり、耳元で言ってやった。


「遅いよ、バーカ」


 その頭の横で、剣を振り下ろした。

 




「浄化したよ、勇者君」


「ご苦労さま」


 俺はヨロヨロしている聖女ちゃんを連れているゼノンに言った。

 そして聖女ちゃんは俺がゴブリンキングを倒した現場に戻ると、すかさず言った。


「うううっ……気持ち悪い。なんでそんな頭を叩き切るような倒し方するのよ!!」


 そう、俺は桃太郎が桃を二つに割って飛び出したかのように、ゴブリンキングの頭も真っ二つにカチ割ったのだ。

 中からは桃太郎は出てこない。

 出てきているのは、とても放送できない……モザイク画面が出てしかるべきものだった。


「倒したんだからいいだろう」


「ちょっと倒れている自衛隊員の皆さんにかかると悪いから、()けてあげましょう」


 そう言って優しい聖女ちゃんは、倒れている自衛隊員の皆さんを端の方に寄せてあげている。

 確かにこのままだと、ゴブリンキングの体液が流れてかかりそうだった。


「そこまで気を遣ってあげなくてもいいと思うけど」


 とゼノンが言う。


「まぁ、かかると嫌なのは分かるな」


 俺も自衛隊員の人をすみっこに運んであげた。

 その時、意識を失っていた自衛隊の人達が目を覚まし始めた。


「ヤバい、行こう」


「うん、待って」


 ゼノンは足元に転がっていた、記録用のカメラを見つけ、足で踏み潰した。粉々になるまで。


「うん、これでいいかな」


 そう言って、俺達はその場からさっさと退散したのだった。


 やっと家に帰れる。

 はぁ、疲れた……。

 もういっそのこと、明日の学校は休んでしまいたかったが、母親の怒る顔しか浮かばなかったので、頑張って行くしかない……。


 こういう時、兼業勇者は辛いなぁと思った。

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