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第10話 親戚のおじさまに相談してみるわ

 それからも時々、湧き場所が発生した。

 ニュースでゴブリンが現れれば、俺達はその場所に行って湧き場所を探し、この間のように浄化をした。

 今のところ、俺達が住む首都圏近郊でしか湧き場所が発生していなかったからいいけれど、これが遠方の九州とか、はたまた外国だったらすげぇ困る。

 今のうち、パスポートを取っておく方がいいと、聖女ちゃんは言った。

 現世だと面倒くさいな。

 あっちだったら、馬とかも用意してくれたし、宿だって討伐依頼をした国が金も払ってくれたのに。

 現世だと全部自分持ちだから、正直金銭的に持たない。俺はそういう現実的なことを言った。


「確かに、金銭的に厳しいわね。移動費用も宿泊費も自分持ちだとねぇ」


 聖女ちゃんは顎に手を当ててしばらく考えて、言った。


「協力者を作るしかないと思う。私、親戚のおじ様に相談してみるわ」


「親戚のおじさまって?」


「昔から私のことをとてもかわいがって下さっているおじ様がいるの。きっと力になってくれると思う。それから心配しないで。おじさまは口が固いから、私達が異世界へ行っていたことも誰にも話したりしないわ」


「わかった。聖女ちゃんに任せるよ」


 ということで、聖女ちゃんはその週末おじさまに会いに行って色々と相談したらしい。

 そういう話は聖女ちゃんからラインで逐一報告されていた。そして、おじさまが俺とゼノンに会いたいと言ってきた。




「食事に連れていってくれるのか。俺は予定ないからいいよ」


 月曜日の朝、聖女ちゃんこと林原麗子はすぐに俺達に声をかけた。急なことだけど、今日の放課後、おじさまと会って欲しいと。

 俺とゼノンはすぐに快諾した。


 そしてゼノンが麗子ちゃんに聞いていた。


「そのおじさまのお名前やお仕事を聞いてもいい?」


「おじさまのお名前は、林原郁夫というの。白報館の社長よ」


「その白報館ってなんだよ」


 俺が聞くと、麗子ちゃんは少し驚いたように言った。


「光君、知らないの? 大手広告代理店よ」


「僕だって白報館の名前は知っていたよ」とゼノンが言う。少しムカつく。


 ……お前は異世界から来て一か月も経っていないのに、もう日本の大手広告代理店の名前を知っているのか。ちょっとおかしいだろう。


 むくれている俺を無視して、ゼノンと麗子ちゃんは二人して話を進めている。


「東京駅で待ち合わせなの。制服のままでいいと言っているわ。帰りは車で送ってくれるのですって」


 ……遅くなりそうだから、母さんにラインしとくか。

 俺がラインを打っていると、ゼノンがのぞきこんできた。


「君の好きなイタリアンレストランだって。ミートソーススパゲティがあるといいね」


「……まぁな」


 少し口元に笑みを浮かべ、ゼノンは俺の肩にぽんと軽く手を置いた。




 そして放課後、東京駅に行くと、車の運転手という黒いスーツ姿に白い手袋をした男性が、俺達を迎えの車に案内した。

 その郁夫おじさまという方は、お金持ちのようだ。


 迎えの車にそのまま乗って、都内のやたら瀟洒な洋館に連れて行かれる。

 煉瓦造りのその洋館は、明治時代に名のある建築家が作ったもので、その建物をそのままレストランにしているらしい。

 その一室に、俺達は案内された。


「おじさま」


 重厚な扉が開き、麗子が椅子に座っていたスーツ姿の男に向かって声を上げると、その男は嬉しそうに立ち上がった。


「やぁ、麗子。待っていたよ。学校帰りで疲れているところに悪かったね」


 レストランの給仕が椅子を引いてくれるので、俺達はおのおのの席に座った。

 未成年だから酒はダメだといい、彼はミネラルウォーターを頼む。それから好きな料理を頼んでいいと言った。


 俺がメニューを見て、目を彷徨(さまよ)わせていると、隣のゼノンが教えてくれた。


「イタリアでは、ミートソーススパゲティはボロネーゼと言うんだよ」


「…………サンキュ」


 もう、異世界からやってきて一か月しか経っていないだろうと突っ込まないことに決めた。

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