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第9話 何か嫌な気配を感じる

 夕方になって、街は帰路につく会社員や、学生たちで混んでいた。道には飲み屋さんの呼び込みの人も出ていて、行きかう人達がたくさんいる。

 そうした人々の間に、やけに警察官の姿が多い。皆、刺又を手にしていることが物々しかった。


「ゴブリンには、刺又がいいとわかってるんだな」


「確かに、有効な武器だと思うよ。噛みつかれたり引っかかれたりしたら、未知の病気になる可能性が高い。ああした武器で取り押さえるのがいいだろうし、拳銃で殺すのもいいと思うけど、銃は日本だと使用すると色々とあるからね」


「俺なら銃で威嚇射撃なしに一発バンだな」


「ヒカルは躊躇なく殺りそうだね」


「躊躇してたら、こっちが()られるからな」


「こっちはいろいろとあるみたいだね。捕まえたゴブリンだって殺さずに保護しているという話だし」


「未知の生命体って奴なんだろう。研究対象になっちまう」


 ゼノンが前を歩き、聖女ちゃんは彼の服の裾を持って歩いている。そして聖女ちゃんの後ろは俺が歩く陣形だった。

 前から来る敵はゼノンが倒し、俺は後ろを任せろって感じなんだけど、俺が前を歩かない理由は、ゼノンが「君は猪突猛進で何も考えずに突っ込んでいくから」と言っていたのがムカついた。


 駅からしばらく歩いた後、聖女ちゃんがふいに足を止めて言った。


「何か嫌な気配を感じる。こっちよ」


 聖女ちゃんが率先して走り出したので、俺達は慌てて後を追った。

 ビルの間の細い小路を抜けると、ゴミがたくさん落ちて山のように集まっている場所があった。

 ゴミの一部が盛り上がって、なんとその間から生まれたてのゴブリンが頭をのぞかせていた。


「せや!!」


 俺は問答無用で容赦なく、収納庫から取り出した剣でそいつの首を刎ねた。ゴロゴロゴロとゴブリンの頭が転がって、緑色の体液が飛び散る。


「本当に容赦がないのね」


 聖女ちゃんは冷静に言う。普通のかわいい女の子キャラなら「キャッ、気持ち悪い」とか言って、男にすがりつくところだけど、聖女ちゃんはこういう血生臭い場所には慣れていた。

 だって一緒に魔王討伐の旅に出ていたからだ。頭が飛ぼうと足が飛ぼうと腹が裂けようと、彼女は冷静な医師のような視線でそれを眺めることができた。

 それからツカツカとゴミの山の方に行くと、いつの間にか収納庫から取り出した杖でそこをつっついていた。


「下に穴が空いていて、ここが沸き場所みたいね。嫌な気配を強く感じるわ。私が今から、浄化するわね」


 そう言って祈り始める。

 聖女ちゃんが凄いことは、聖魔法が使えることだ。

 こういう汚染された大地を清めることができる。

 聖女ちゃんのかざした手から、温かな光が溢れてきて、その湧き場所を照らした。


 しばらくして、聖女ちゃんは疲れたようにため息をついた。


「終わったわ」


「お疲れ様ー」


「お疲れー」


 俺とゼノンはバイトの仕事が終わったかのように、聖女に声をかける。彼女は肩をすくめ、笑って言った。


「みんなもお疲れ様。ご飯食べに行きましょう」


 そしていつものように、ファミレスに行くのだった。

 もちろん俺は、いつものようにコーラとミートソーススパゲティを注文した。

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