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こども保険

作者: 鬼灯零個

はてなブログにてブログ書いています。


ほおずきれいこの骨髄ブログ(骨髄ドナー体験談他雑記ブログ)


https://hoozukireiko.hatenablog.com/

写真と全然違うやないか!

俺はこんなブス選んだ覚えはない!といったら、クレームになるだろうか?

10ヶ月前。

数ある可愛い子ちゃんの写真の中から好みの子を一人選んだ。選んだ後は、なにがあってもチェンジすることはできない。

対面するまで10ヶ月。なにがあってもキャンセルはできない。俺は厳選に厳選を重ねてひとりの女の子を選んだはずだった。

「この子にします。整形はしていませんよね?」

「写真の加工はいたしておりませんが、整形まではわかりかねます。もし、ご心配なら、保険に入られたほうが。もしものときは保険金が支払われます。ただし、申請は1年以内です。」


そうだ、俺は保険に入ったのだ。


                   ◇◇◇



10ヶ月前、女の子が欲しいと思った俺は、ある場所を訪ねた。

無条件で愛を捧げられる相手、無条件で俺を愛してくれる相手が欲しい、そう思った俺は齢50を超えて決意した。

ここの門をくぐるのはかなり勇気がいる。それなりの貯蓄もなければならない。健康状態も重要だ。


そうして俺はモニターの中の女の子の写真を見て決めた。

この女性の子供が欲しい。

俺の遺伝子とこの女性の遺伝子をかけ合わせてみたい。

契約するには家族の同意も必要だったが、一人っ子で未婚の俺の家族は田舎の年老いた両親だけで、もちろん賛成してくれた。

「死ぬまでに孫の顔が見られる」

そういって両親は喜んだ。


そして、俺は契約をした。

翌朝、俺は自分の分身が入ったシャーレをクリニックに持っていった。

とある有名医科大学の附属病院だ。

提出を終えると、ドクターによる問診、健康診断があった。

問題がなければ、10ヶ月後に対面できる。わくわくしながら待った。

待っている間も婚活は続けていたが、運命の人と出会うことはなかった。


あれから10ヶ月。

ついに、俺の子供が生まれる日がやってきた。

俺は育児グッズ専門店の会員になり、ベビー服を買いそろえて待った。クリニックが開催する父親教室にも通い、勉強し、同じような境遇のパパ友もできた。わくわくしながらこの日を待っていた。待っていた時間のなんと幸せだったこと。


独身の俺が子供を持てる時代になった。なんて素晴らしいことだ。

結婚せずとも、自分の子供が持てる。

女性だけが独身でも子供がもてる時代は終わったのだ。


100年前まで、未婚の母は肩身の狭い思いをしていたらしいが、政府は少子高齢化対策で未婚の母を応援する対策をとった。その結果、不倫が増えたが、不倫の子でも世間からは大いに歓迎された。

なぜなら、結婚していても子供をもうけない夫婦が増え、子供は宝物のように扱われるようになったからだ。

結婚しても子供を作らない原因に、晩婚化があった。当時の結婚率は50パーセントで平均結婚年齢は40歳を超えていた。

少子高齢化に歯止めをかけなければ、この国の未来はない。

切羽詰まった政府は、不倫した者に対する誹謗中傷や慰謝料を求めることを法律で禁止した。法を犯した者には高額な罰金が課せられた。

その後、一夫一婦制もなくなった。

その結果、人口は徐々に増えていったが、俺のように結婚できない男も増えた。勝ち組の男だけがたくさんの妻をめとり、たくさんの子どもをもうけた。



そもそも不倫が悪であるという考えが正しくなかったのだ。不倫が悪になったのはマスコミの煽動によるものであった。

不倫の子の地位が保証されたことで、不倫は悪ではなく愛の一つの形であったことに人間はやっと気づいた。結婚していても自由恋愛が許される時代に変わっていった。

結婚によって自由恋愛が制限さることで、結婚に魅力を感じなくなってしまっていた人間が、気軽に結婚し、また恋愛をしては離婚して結婚というようなことをくりかえすようになり、少しずつ出生率も上がっていった。

婚姻中の恋愛が自由になったので、結婚のハードルも下がっていったのだ。


未婚の母が世間で認められた後は、未婚の父が世間で認められる時代になった。子供は欲しいけれどパートナーはいらない、パートナーが同性だけど二人で子供を育てたい、そんな希望をかなえられる時代がきた。


母性というものは母親だけが持ち合わせているものではない。生まれたときから、小さくてかわいいものを守ってやりたい気持ちは、女性、男性にかかわらず多少なりある。俺はその母性とやらが強すぎた。かわいいものに囲まれていたかった。物心ついたときから大事にしているぬいぐるみを今でも枕元に置いている。その母性なるものが、強いか弱いかは、まったく人それぞれだ。


子供を授かって初めて母性が芽生える者や、まったく母性がない者。生まれながら母性を持ち合わせてない母親も、母親教室に参加したり、周りの母親と交流することで、我が子を守り育てていくのが親の役目と学習して、世間と同じような家庭を作る。

残念ながら親が子供を責任をもって育てるという世間の常識を理解できず、子供の安全よりも自分の楽しみを優先させたい親も少数いる。そんな親は、お前がいるせいで自分の人生が思うようにならないと子供を疎ましくおもってしまい、虐待してしまうのだ。


50年ほど前に始まった卵子を購入するというシステム。タイプの女性の卵子を購入し自分の精子と受精、病院内のカプセルで育てられ10ヶ月後にひきとり、育てる。昔は試験管ベイビーといったらしい。しかし、今では一般的なことになった。独身でも男性であっても子供が持てるのだ。なんて素晴らしい制度だろう。社会に認められた制度なので育児休暇もとることができる。


                   ◇◇◇



卵子を提供した女性はもうこの世にはいない。トラブルを防ぐため、卵子を冷凍保存していて、提供者が亡くなってから卵子を使用する決まりだ。

だから、整形していたかどうかは、たしかめようがない。子供が母親に会いに行くことも叶わない。遺伝的な母親なんて意味のないものだ。意味があってはならない。

卵子の提供された年代も明らかにされないし、冷凍保存されていた期間もわからない。


--しかし、このガッツ石松が猿顔になったような赤ちゃん、本当に好みの顔になってくれるのだろうか。

コンピューター診断で二人の顔の一致度が低い場合は卵子の購入金額が返金される。子供を返品するわけではない。なぐさめ料だ。そういう「こども保険」に入っておいてよかった。

もし、1年たってこのままの顔だったら、こども保険の申請をしてみよう。



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