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 ーーあれから三年


 


 俺達は、未だ”幼なじみ”の関係を続けている。



 あの日、確かに何かが変わることを期待して行動に移したはずだった。


 だけど、そんな俺の願いは無情にも打ち砕かれた。


 翌日、普段となんら変わらぬ様子で俺の前に現れた茉莉。



『蓮は私にとって、この世で一番大切な人。だからーー今までもこれからも、私と蓮の関係が変わることはない』



 そうハッキリと宣言された時の絶望感は、今でも忘れはしない。


 時の流れとは無慈悲なもので、あの時の傷は癒えぬままーー

 

 ただ、いつしかその痛みに慣れることだけを学んだ。






 教室の片隅で、窓辺に佇み静かに外を眺める。


 今しがた登校してきたばかりの茉莉の姿を見つめては、キリキリと痛む胸にそっと蓋を閉じて小さく息を吐く。



「ーーおっはよ! 蓮」



 ポンッと軽く肩を叩かれて振り向けば、朝から元気な笑顔を見せる一樹と視線がぶつかった。



「……おはよ。相変わらず、今日も暑苦しいくらいに元気だな」


「そういうお前は、今日も消えそうな程に儚い美少年だな」


 

 嫌味たらしく挨拶を返せば、それは更なる嫌味を乗せて返ってきた。



(なにが、儚い美少年だ……)


 

 確かに、昔からイケメンだの美少年だと騒がれてはいるし、それなりにモテる自覚はある。


 だけど、その魅力が茉莉に伝わらないのなら、そんなものには何の価値もない。

 

 再び窓の外へと視線を戻すと、それを追うようにして外へと視線を向けた一樹は、小さく溜め息を吐くと口を開いた。



「次の彼氏は、二組の宮内か……。相変わらずモテるね、蓮の幼なじみちゃんは」



 男と並んで歩く茉莉を眺めながら、薄く笑った一樹。


 俺はそんな一樹の言葉を遠く聞き流しながらも、ズキリと痛む胸に顔を歪めた。



 俺のことが”一番大切”だと告げながら、次々に新しい恋をしては彼氏を作ってきた茉莉。


 それはどれも短いもので、長くても一ヶ月ほどだった。


 他の男はこうも簡単に手に入れることができるというのに、決して俺にだけは許されない”恋人”というポジション。


 

『蓮は、この世で一番大切な人』



 そう告げらる度、俺の”心”は酷く傷付き黒く蝕まれていった。


 その”痛み”は癒えることなく歪み続け、やがて中毒性のある麻薬のような快楽となって、俺の中にある茉莉への”愛情”を着実に狂ったものへと変えていく。



「……蓮。お前も、随分と報われない恋してるよね……。モテるんだから、彼女でも作ればいいのに」


「……お前は、何もわかってないよ」


「…………。わかりたくもないね、そんな辛そうな恋……」



 一瞬、俺に向けて哀れむような顔を見せた一樹は、それだけ告げると小さく微笑んだ。

 






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