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〜狂壊の鎮魂歌〜 悪魔との契約書  作者: マガミノ
第一章
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八話 これが所謂地獄絵図

食事をする音が静かな食堂に響く。

普段は騒がしい悪魔たちのようだが食事中には喋らないタイプなのだろうか?

丁度良い為、改めて彼等彼女を観察してみる。


先ずはリーヴル、今もニコニコと胡散臭い笑みをたたえていて何を考えているか油断ならない悪魔。

自身の事を〘時懸の悪魔〙と言った。所謂(いわゆる)、時空や時を司っている悪魔と同じ能力を持っているという事だろうか?


次はエラッタ。顔立ちがあどけないが彼も本音が見えず気の抜けない相手。

部屋に通された後にエラッタは何度か訪ねてきて自分の眷属にならないか、無理なら契約をしないかなどを提案してくる相手だった。


そしてレンヅィー。彼だけは周りが静かなのに反し、喋りたそうにうずうずしているようだ。

反応が素直すぎて憎めないプリン頭。こういうタイプが安心できそう。


その兄弟のレルツィ。今は黙々と食事をしているが口を開けば毒舌を吐きまくるドS悪魔だ・・・

頂きますをするまで私にネチネチと嫌味を言ってくるから少々苦手である。・・・少々、ね。


ベルデンはレンヅィーとはまた違うが素直な反応をするし不器用でありつつも努力をしようとする姿に好感を持てた。

二人は悪魔だと言われても本当に信じられない位だった。


そしてガブリエル。女性だが何処か中性的な雰囲気を醸し出しているせいでミステリアス且つ艶のある雰囲気を放ち落ち着かない。他の人たちと比べても一番人間離れをしているよいに感じる。



今の所、リーヴルが出した馬車など以外は悪魔らしい事をしていないから私はこの人たち(不審者)に騙されているだけなのかも、とか希望を持ってしまう。

もし此処(ここ)が現実であるのならば私は幻覚を見ていて精神が可笑しいのか、怪しい薬等を知らぬうちに服用させられて変な夢を見ているのかもしれない。

我ながら想像力が豊かだ、と自嘲をしてしまう。

それを知ってか知らずかリーヴルが話し掛けてきた。


「おや?そんな溜息を吐かれてどうされたのでしょうか?」


「いえ・・・少し疲れてしまったようです。お気になさらず」


少しだけツンケンした態度になってしまって反省をする。リーヴルに対しては先程から態度が良くないと気が付いていたからだ。

何故か彼の事はあまり受け付けないようで粗雑な対応をしてしまう。


「・・・大丈夫か?」


ふと、躊躇(ためら)いがちにベルデンが聞いてきた。

恐る恐る心配をする大型犬に見えてつい笑顔になる。


「はい、大丈夫ですよ。(しばら)くすればきっと安定するので」


「そうか、何かあったら言ってくれ。此処(ここ)に来てまで体調を崩してしまったら何とも言えんからな」


ホッとしたような、でも何処か心配そうな色を滲ませるベルデンについつい表情が緩む。

何気に彼が一番気が付くし優しそうであるからこの屋敷の中では心許せそうな存在だと思った。

だがふと、刺さる様な視線を感じそちらを見やる。


「・・・何でしょうか?リーヴルさん」


リーヴルが少しだけ怖い目をしてた様に見えた。

彼は私に問われ、目をぱちくりさせた。

そして肩を竦めて言った。


「いえいえ、何でもありませんよ?・・・けどまあ敢えて言うなれば契約者がベルデン殿に奪われそうで危機感は抱いてますがねぇ」


胡散臭い仕草と表情で言って退けるリーヴル。

本当にそんな風に思っているのか怪しい所だが・・

取り敢えず私はリーヴルの返答に否定をしておこう。


「・・・何を言っているんですか。私は一度も貴方と契約をすると言ってませんよ。そして私は誰とも契約をする気等ありませんから・・・」


ベルデンとレルツィ以外の人達が残念そうに息を吐いた。・・・つまりその他の四人はソレを狙っていたのだと察する事が出来る。

獲物を狙う様な鋭い目付きに少しだけヒヤリとした。


「・・・貴様ら、このニンゲンが萎縮(いしゅく)しているではないか。少しは慎みを覚えろ阿呆共」


「えぇえッ・・・ボクとしてはケーヤクして欲しいのが本音デスケドねェ~・・・レルツィサンだって実はソウなんデショ♪︎」


「その下種(ゲス)な言葉と表情を控えろ。失礼だな貴様は。この吾輩がゴミ屑と契約をするとでも?それ位ならばもう少し高尚(こうしょう)な獣人と契約をするわ」


「・・・下種(ゲス)って・・も少し口の悪さ直して欲しいデスヨ・・・

トユーカボクとしては獣人の方が低位だと思いマスケドねぇ♪︎この価値観の違いナンデスか・・」


やれやれやれと、くどい位に首を振りエラッタは言い返した。

流石異界なだけはある。獣人なんて単語が出てくるなんて。

しかしまあ、人間がゴミ屑だとか獣人の方が高い低い等の議論を目の前でされると複雑な気分になる。

それを察してかレルツィは、ふと黙り食事を再開した。それに流されて皆も食事を口に運ぶ。



「ご馳走様でした」


手を合わせ、食事を終える。

丁度他の人達も終えた所だった。・・・ベルデンは相当な量を食していたけれども何故に皆と同じ位にご馳走様をできるのかなぁ?

体の違いか・・・


「あっ、待って下さいよ。オレ折角デザートを作ったんスから皆で食べましょうよ!」


ふと、今まで忘れていたのか慌ててレンヅィーが言う。デザートかぁ、甘いもの食べたかったし丁度良いな。ご飯もとても美味しかったから心踊ってしまう。

そんな私の気持ちとは正反対に周りの人達が頭を抱え始めた。


「・・デスよぉぉ・・・アレは・メデス・・・」


「・・・レンヅィー・・貴様わざと言っているのか?」


「え、へ?は?どうしたんっスか皆・・・?」


レルツィまでもが顔を引き攣らせて首を降っている。リーヴルも遠い目をしているから私は少し不安を感じた。


「・・・あのぅ、ベルデンさん。皆さんこ、これは一体どうしたのでしょうか?」


助けを求めるようにベルデンを見たら挙動不審になってアレはやめといた方が良いとか、君にはまだ早い等とかを言っている。


「・・・?」


「あ、ああミオリさんはやめといた方が良いッスよ!慣れない奴が食べたらオレの料理ウマすぎで昇天するらしいんっス」


え、そうなの?そうなんですか?と思いベルデンやリーヴルを見た。そうしたら真っ青な表情で二人は同調をする。


「そ、そうですねぇ。アレは貴方にはまだ早いのでやめといた方が良いですねぇ・・・彼処まで不味・・・いえ美味しい物は存在しないと思いますので・・正直、非常に、勿体ないのですが貴方にはお勧めできませんよ」


「そ、そうだな、そうだ。お前には本当に早い。と言うか食べるな。身の危険だ。アレだけ不味い・・・ン"ンっ!美味い食べ物はある訳がないからな!本当に残念だが控えてくれ!!」


はい。何でレンヅィーはこの二人の様子に気が付かないのかな・・・ちょっとソコ、自慢気に鼻の下を摩らないで下さい・・・

ベルデンなんか既に本心言っちゃっているよ。


「ホラ、これがオレ作のデザートッスよ!」


そうして見たレンヅィー作のデザートはとても悲惨なモノだった・・・


----------------------------------------


「・・・はぁあ・・」


食後のデザートは口に入れずに済んだ。

だがしかし、私以外の悪魔たちが顔を青くし赤くして悶えているのを見るのは気分が良いものではある訳なくて。


「というか精神的にくる絵面だった・・・」


まさに地獄絵図。あの余裕風を吹かしているリーヴルまでもが口に手を抑えて震えていた。

他の人達は苦しんでいたのにレンヅィーだけが御機嫌そうにデザートを食べている風景は少々異質だ。


「てか悪魔にも味覚はあるんだ」


呟いていて独り言が増えたと思った。

というかあの地獄絵図にショックを受けたせいで独り言が増えている。

自分に割り当てられた部屋でゆっくりしたら少し落ち着いたようだ。

余裕が出来た為、暇になってきた。


「・・・娯楽室に行こうかな」


腰掛けていたソファから立ち上がって廊下用靴を履く。リーヴルの屋敷は部屋毎に靴があるから履き直すのが少々面倒臭い。

まあ、ただでさえ広いから汚れ防止にそれぞれの靴を用意しているのだろうとは予想がつくけれど。


そうしてテコテコ廊下を進んだら娯楽室に着いた。

誰かの話し声が聞こえてそっと見る。


「全く・・・彼奴(きゃつ)も解らん悪魔だ。一人の魂に執着をして・・アレだから変わり者だとハブられるんだ」


「あら?そういうレルツィも彼の事を心配しているじゃない?ソレに貴方も相当な変わり者よ」


広間に居たのはレルツィとガブリエルだった。

正直レルツィとはあまり接触をしたくないのだがガブリエルも居るからと思い直して入る。


「・・・あら?澪璃ちゃんね、どうしたの?」


「いえ、少しだけ手持ち無沙汰になってしまいまして・・・娯楽室で暇を潰そうかと思ったんです」


娯楽室は部屋の案内の時に紹介をされた。(しばら)くは此処にお世話になるけれども時間を潰せる様な物はまだ無いから娯楽室を好きに出入りして良いとリーヴルに言われた。

実際に暇になってしまうのは早く、早速此処へ来たのだが凄い。

ダーツにビリヤードの台、ポーカーの為の机が用意されており傍らにはカードが置かれている。

こんな施設が整っているのならばギャンブル施設に出来そう・・・なんて馬鹿な事を考える。

こういうゲームには興味など無かったが良い機会だ。やってみようかな、と思った。


「・・・あら?ビリヤードに興味があるのかしら?それならレルツィの出番ね。ほらほら、澪璃ちゃんに教えてあげなさいな」


グイグイとレルツィを押すガブリエル。

レルツィは少し動揺して抵抗をする。


「何を言っている。巫山戯(ふざけ)るのも大概にせんか、この!この!」


頭脳タイプなのかレルツィはガブリエルの力に叶わずビリヤード台に立たされる。

私も準備万端だ。教えて貰えるのなら嬉しい。


「・・・もう良い、容赦せんからな小娘」


息を吐いてレルツィはキューを構えた。

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