五話 到着したところで・・・
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
吃驚した為お互いに沈黙。
リーヴルの沈黙はどういう意味なのか、分からないが。
「え、え、え?」
ふと聞こえてきたレンヅィーの戸惑いの声によってハッと正気に戻る。
「あ、すみません。驚いてしまったようです」
「いえいえ、此方こそ混乱する貴方を置いて話を進めてしまっていましたからねぇ」
・・・思ったよりも切り返しが早かったしニコニコと余裕顔だった。というか心做しか表情がニヤニヤしている気がする。
私が放心していたのを楽しんでいたようにしか見えない。
ついカチンときたのでスっと無表情になって離れる。
「おや、もう離れてしまうのですか。これは残念」
「全く残念そうに聞こえませんね」
そう言うならせめて残念そうに答えなよ・・・と呟くとリーヴルは嬉しげにカラカラ笑う。
「ああ、そういえば私の自己紹介がまだでしたね?私はリーヴル、〘時懸の悪魔〙
好物も苦手な物も基本的にありませんねぇ。
よろしくお願いします」
「・・・よろしくお願いします?」
「はは、疑問形になっていますよ」
そんな会話をしているとレルツィがリーヴルに注意をしてくる。
「オイ、リーヴル・・・貴様はこれ以上彼奴を混乱させるつもりか?
何やら楽しんでいるようにしか吾輩には見えぬのだが・・・自重をしろよ」
「そ、そデス!
リーヴルサン、性急すぎデスヨ・・・!
いきなり~の悪魔だとかなんだとか言ったってまた混乱を招くだけじゃナイデスか!」
レルツィが顔を顰めて釘を刺すとポカンとしていたエラッタも慌ててリーヴルに注意をする。
リーヴルはそんな二人の様子を見ても楽しんでいるように見えた。
「別に知る時が時期に来るでしょうし今彼女に申し上げても問題などないかと思いましてねぇ」
「だとしてもだな・・・!!」
「ぷっ!レルツィ殿、貴方は生真面目すぎるのですよ。女性を気遣うのは男性?として、とても素晴らしい事ですがねぇ・・・」
「貴様っ!!」
ちょっとした煽りに乗ってしまうレルツィ。
困り顔でベルデンがどうどうと二人を宥めている。
すると急にガブリエルがこう言った。
「はぁ・・・アナタ達は皆揃って素敵な夢を見たいのかなぁ? ふふ」
その瞬間、比喩でも何でもなく空気が冷え、全員が静まり返った。
最初に口を開いたのはリーヴルだった。
「・・・それは、御勘弁して頂けると嬉しいのですが・・ねぇ?」
「ソレはアナタ達次第じゃないかしら・・・?」
「オレは何もしてないっスよ?!」
「一蓮托生」
悲痛な声を上げて抗議するレンヅィーを一刀両断して素敵な笑顔を浮かべるガブリエル。
けれど当然私はそんな会話についていける訳がなく。
「・・・えと、夢って、どういうことなんです?」
「・・ん~、今話しても混乱するだけだから、ね?屋敷へついて落ち着いてから話すことになるわ。そこのしたり顔野郎が」
したり顔野郎とはリーヴルの事だろう。チラリと見ると食えない笑顔を今もしている。
ちなみに「したり顔野郎で誰の事を言ってるのか分かるんデスネ・・・」とか何とかエラッタが言っているけれども聞こえないフリをします。
「ああほら、丁度我家へ着きましたよ」
ふとリーヴルが窓へ目を向けて言った。
ソッと同じように窓の方へと目を向けたら一軒家なんかとは比べ物にならない大きさの屋敷が佇んでいた。目を丸くする。
その建物はとても豪奢でよく見ると細かな細工がされている。
私が生きているうちに目にする機会は・・・そうそうないだろう。
「では、降りましょうか。御手をどうぞ?」
リーヴルはまず自分が降りてから大仰な仕草で私に手を出した。
少しだけ気恥しい思いと大袈裟且つからかっているような瞳の色にムカリときて自分で降りようとする。
「・・・・・・・・・」
うん、思ったよりも高いな。
目の前には降りないのですか?とでも言いたげにニヤニヤしている男がいて癪に障る。だが降りにくいし不格好な所を見せたくなく感じたからリーヴルの手に自分の手を重ねる。
それでも降りにくいだろうと思っていたが予想よりもするりと降りれた。
リーヴルの手はしっかりと私を掴んでいて手だけではなく上手いこと私の体も支えてくれていたからだろう。
「ありがとうございます」
流石にお礼も何もないのは失礼だからお礼を言う。
「いえいえ、お気になさらず」
相変わらず何を考えているか分かりにくい胡散臭い笑顔だ。
そうこうしているうちに他の五人も颯爽と降りてきた。何故だかレルツィとガブリエルが訝しげな表情をしてリーヴルを見ていた。
「・・・?お二人共どうしたんですか?」
「え、ううん、何でもないわよ?ね、レルツィ」
「・・・とは言い難いが・・まぁ良い。貴様が気にする事ではなかろう」
二人揃って少し挙動不審なのが気になるけれどもまぁ、いいか。
改めて屋敷を間近で見てみると凄い迫力があった。なんと言うのか・・・神々しさもあるな・・・これがリーヴルの屋敷だというのが憎たらしい。趣味が良すぎる。
リーヴル他五名の人達(悪魔?)に連れられて屋敷の扉へと向かった。まだ開けていないというのにゆっくり開くからたじろぐ。
それを面白そうに見ている幾名かの人達は無視しよう。
「・・・こういうような屋敷へ足を踏み入れるのは初めてか?」
呆然としてたのを見てベルデンが聞いてきた。
ブスリとした表情をしているがコレが通常運転らしいから気にしなくていいだろう。
「はい、そうですね。そもそもこんな風に両開きの扉が自動的に開く屋敷なんて見たことありません」
ホラー映画とか以外では・・・
もしもこれがホラー映画だったら悪魔じゃなくて吸血鬼の屋敷だったんじゃないかな、と思ったりもする。
「そうか、では後でリーヴルに案内してもらったらどうだ?」
「いえ、大丈夫です!それなら私はベルデンさんにお願いしたいですね・・・」
「・・・む?俺か?」
「あっ、すみません。急にこんな事言うのは困りますよね。ただ、リーヴルさんに案内してもらうのは・・・私の反応を一々からかってきそうなもので」
少し図々しかったかもしれない。というか図々しかっただろう。初対面の相手に急に案内を頼むだなんて。本来ならばこの屋敷の所有者であるリーヴルにしてもらうべきだ。
「・・・リーヴルが良いならば俺は喜んで案内するが・・」
「・・・私がどう言うかは分かっているでしょう?コレは私の契約者です。深く関わらないで頂けると有難い」
「・・そうだろうな・・・」
・・・?なんか不味い雰囲気?
ベルデンはちょっと気まずそうにしてるしリーヴルは不機嫌そうに(無表情だけど)腕を組んでトントンと人差し指を叩いている。
そしてコレ呼ばわりに結構カチンときた。
失礼ではないか。言い直して欲しい。けど言いたい事をなかなか言うことが出来るタイプではないので言いませんとも。言えませんとも・・・
「なぁ~にケンカしてんデスか?!折角ミオちゃんが来てくれたのニそんな風だとダメデス♪怒りマスよ」
エラッタがこの空気に気付いてすかさず注意をしてくれます。あ、助かった・・・
「・・・あの、でも、一つだけお聞きしたいのですが契約者・・とは何の事ですか?私契約なんてしていません。人違いかと思います」
そう言うと皆が此方を見て「あ~」とでも言いたげな表情で手をポンと叩いた。
何故に動きがシンクロしているのだろうか・・・
「そうですねぇ、澪璃さんにはまだ話していませんでしたからね。今からお教えしますよ・・・だから、驚かずに聞いてくださいね?」
リーヴルが一歩私の方へ踏み出して笑顔を向ける。
少し寒気がした気がしたけれども気にせずに頷いた。それを認めたリーヴルはニヤリと笑って話し始めた。
リーヴルの話しは摩訶不思議な【前世】の話だった。
皆様、こんにちは、こんばんは、おはようございます。
この作品は逆ハーと言えど最後はたった一人を選ぶというラブロマンスですよね・・・(私のイメージ像)
正直ストックの方等を書き進めていますと主人公が誰を最終的に選ぶことになるのだろう・・・と苦悩をしてしまいます。やっぱりキャラが生きているとでも言うのでしょうか?気が付いたら設定とは異なる展開になったりもしていてこの先どうなるの?!と作者は叫びたい気分です。
そして最近話題の新型肺炎。皆様お体をお大事に。お気をつけ下さい。もし異変がありましたら御家族もお連れして診察をするように!