四話 自己紹介
ガタゴトと馬車に揺られる中、明るい声で銀髪碧眼の美少年・・・エラッタが声を出した。
「ネネ、君の名前はナンでしたっけ?チナミにボクはエラッタと言うヨ!ヨロシク~♪︎」
「え、ええと・・・私は江藤 澪璃です」
押しに押されてつい話に流されてしまう。
正直、混乱することばかりで色々とついていけていない。
「フフン!ミオちゃんね!可愛い名前♪︎」
「は、はぁ・・・」
正直この手のタイプはリーヴルみたいなタイプよりも苦手だ。天真爛漫と言えば聞こえはいいかもしれないが、ここまでくると裏がありそうで少し怖い。
「じゃあじゃあ、ミオちゃんのためにも一人ずつ自己紹介ヲしまショウ!レンヅィーだヨ!次々♪︎」
「へっ?!お、オレっスか?」
ほか数名の人達もウンウンと頷いて促す。
・・・変な状況。あまりにも自然すぎて私が自殺をした事を自分自身でさえ忘れてしまいそうだ。
「・・・エット、じゃ、自己紹介ッスね。こーゆうの苦手なんスけど・・・オレはレンヅィー。適当に呼んで下さい。好きな物はプリン、苦手な物は苦い物・・・以上!!」
最後らへんは少し恥ずかしそうに閉めた。
レンヅィーはポリポリと頬を人差し指で掻きつつ目を迷わせている。
素直だから結構安心できるタイプかもしれない。
「じゃあオレから時計回りッスね。どぞ」
隣にいる紺色の髪の男にレンヅィーは言う。
「そうか。では吾輩だな。
吾輩はレルツィ。他の奴らと違って更に上の高位悪魔だ。貴様が気安く語りかける事が出来るような相手ではない。では以上だ」
「え、江藤 澪璃です。よ、よろしくお願いします」
・・・こ、これまた濃い人だな。
少し引き攣りつつも挨拶をし返す。
レルツィも相当な美男子で目に毒すぎる。紺髪緑目、片眼鏡を掛けて知的そうな雰囲気を放っている男だ。
少し高慢な態度だからあまり好きじゃない。
「ヘヘッ!レルツィは結構偉そうデスけど接してみると案外良いヤツデスヨ!あ、ちなみにレルツィとレンヅィーは兄弟のような関係デスね♪︎」
「あの出来損ないと同じにするな。畜生め。それと案外とはなんだ。一言余計だ」
「出来損ないは酷いッスよ、レルツィ。同じ空間で生まれた仲じゃないっスか」
エラッタがフォローを入れたが正直レルツィへの感想は嫌な奴一択。流石に兄弟でも言っていい事と悪い事がある。
兄弟?でこんなにも違うものなのだろうか。流石に呆れる。
・・・というか空間で生まれるってなんだと思ったがこの空気は壊しずらかった。
あとで聞けるのならば後で聞いてみよう。
「ふむ、では次は俺だな」
赤髪赤目のイメージカラー赤な男が私に向いて自己紹介を始める。
見た目は目付きが鋭く筋骨隆々で、髪の毛は一部編み込まれている。服装は海外の将軍のようなパリッとした服を着ていた。筋肉が浮き出てるのが分かるから大分迫力がある。
「俺はベルデン。趣味は戦闘訓練。普段はリーヴルを無理矢理付き合わせている。
好物はやはり肉だな。嫌いな物は甘い物だ。
これから宜しく頼む」
「ベルデンさんですね。よろしくお願いします」
ゴリゴリな筋肉の塊の超巨大な男性だが真面目そうで好感を抱く。
だがまぁ、甘い物が苦手とは・・・気が合いそうにないぞ。
「おや?ベルデンさん、珍しく流暢に喋られますねぇ・・・澪璃さんが結構気に入られたのでしょうか?」
ニヤニヤしながらリーヴルがベルデンに茶々を言う。楽しそうでなによりですね。
「・・・む、まあ久しぶりの普通なニンゲンだからな。それは当然喜ぶだろう」
「そうですねぇ」
はははと笑うリーヴルに少し気まず気なベルデン。
何だこの空気は・・・と思いつつも次の人を見る。
「あら、最後は私ね。私はガブリエル。
宜しくね澪璃さん」
ニッコリと笑顔を向けるのは最後の一人・・・私以外では唯一の女性。
ガブリエルは彫りの深い妖艶な美女・・・と言った感じだ。
ラベンダー色の髪に金目。上品でありながらも華やかなコルセット風のチュニックに黒いパンツスタイル。そして少し重そうな厚底靴を履いていた。
パンツスタイルのサバサバした服装は長い髪の毛に逆に映えていてとても綺麗だと感じる。
「えと・・・よろしくお願いします。・・・・・・」
言ってて少し正気に戻る。
なに普通に自己紹介をして挨拶をし合っているんだろうか・・・?
流されていることに気がついて愕然とする。
そして慌てて身を捩って立ち上がってから全員に言う。
「あの、すみません。私ここに居るべきではないかと・・・ですので帰らせて頂きます」
「ちょっとちょっと!ナニ言ってるんデスか?!」
「そうッスよ!今走行中ッスよ!」
「フン、馬鹿め。そんな風に立ち上がったら危険だという事も分からんのか」
丁度レルツィが言い終わった所でバランスを崩して転びかける。
うわ、最悪だ。レルツィに言われた直ぐ後にこんな風になるなんて。
ほら見た事かと片眼鏡を上げてドヤ顔をする所が何故か想像できた。
「危ない!!」
「・・・っへ?」
ポスンと誰かが私を受け止めてくれたお陰で助かった。相手は安堵の息を吐いて私から離れた。
「・・・あ」
「・・・大丈夫ですか?澪璃さん」
目に眩しい美男子の顔が間近にきて心臓が止まりそうになる。
あの時のレンヅィーと言い顔が間近にあると本当に息を呑んでしまう。
私を受け止めてくれたのはリーヴルだった。