いじめの復讐
僕はいじめられている。
僕の通う中学校の3年1組の教室では、いじめが行われていた。
ターゲットは僕、高橋翔。
いじめるのはクラスのみんな。
みんながみんな、代わる代わる僕をいじめる。
理由は、チビで、鈍臭くで、バカだから。
この前のは特に酷かった。
無理矢理、今は使われていない、滅多に人の来ない女子トイレに連れていかれて、一番奥のトイレで掃除道具を使ってボコボコにされた。
目が覚めたのはすっかり夜になってから。
頭からは血が流れ、ぐったりした体をなんとか持ち上げ、家に帰った。
担任の先生に見つからなくて良かった。
3年1組の担任はいじめに加担している人間だ。
きっと見つかったら、僕が「自主的に」女子トイレに入って「悪さをしていた」ことにされるだろう。
担任は他の先生からウケがいいから、きっと他の先生が僕を見つけていたって、僕が悪いことにされるだろうし。
なんとか家に帰ったけど、僕の家族はお互いに興味の無い人間ばっかり。
両親は不倫しているし、兄はほとんど家に帰ってこない。
僕が血まみれで帰ってきたって、誰も僕を見てなんかいないから、気が付かない。
誰にも気が付かれないまま、僕は風呂に入り、消毒を済ませ、その日は寝た。
あれから数日が経つが、今度はみんなで僕を無視するいじめ中らしい。
僕にだけプリントが配られないし、課題の回収もされない。
給食だって配膳されないし、誰に話しかけても無視される。
まあ、でもいつものいじめより楽だと感じる。
「居ないもの」扱いだから、殴られることも宿題を押し付けられることもない。
たまに、「あー高橋がいないから掃除するやついねーわー」「え?高橋?誰それ笑」という会話が聞こえてくるくらい。
掃除当番なんて自主的に代わってやるわけないだろ。
担任の先生も僕を無視するいじめ中らしく、僕が掃除しなくてもプリントを集めなくても怒らないから快適だ。
ただ、そう感じられたのは最初の1週間だけだった。
次の週の月曜日。
いつも通り教室に行くと、無い。
僕の席が、無い。
机に僕の荷物も入っていたはずだ。
でも、どこにも無い。
ロッカーを見ると、綺麗に片付けられている。
ロッカーにはそれぞれの名前を書いたシールが貼ってあるのだが、僕のだけ剥がされている。
僕の荷物はどこに?
ガヤガヤとうるさい教室に、担任の先生が入ってきた。
「朝のホームルーム始めんぞー」
まだガヤガヤしている教室で、先生が話し始める。
「そうそう、”いないやつ”の席とロッカーは片付けたから、好きに使っていいぞ。」
は?
「せんせー、高橋の”荷物”はどうしたんですか?」
「ん?ああ、裏の焼却炉にまだ残ってたかな?最近雨が続いていて中々燃やせなくてな。」
「ふは笑 みじめ笑」
はあ?そこまでするか?
というか、そこまでやって問題にならない学校って何なんだ?
僕はイライラしながら、ロッカーを蹴飛ばし、荒々しくドアを開けて教室を出ていった。
向かった先は焼却炉。
どうにかして、3年1組の奴らに一泡吹かせたかった。
何か良い手は無いものか…と思案を巡らせながら焼却炉に向かって歩いた。
とりあえず、まだ自分の荷物が燃やされていないことを祈った。
僕が女子トイレでボコボコにされた日から今日まで、毎日雨だったから大丈夫だろう。
そう思いつつ焼却炉の扉を開けた。
「え?」
そこには僕の荷物は確かにあった。
だが、予想していないものが、横たわっていた。
僕は慌てて校舎に駆け込むと、鏡を探した。
男子トイレの鏡を覗き込むと、思っていた通り。
「映ってない…」
そう。
僕は鏡に映らない。
僕は死んでいたんだ。
僕はゆっくりと焼却炉に戻ると、”僕の体”を取り出した。
中に入って感触を確かめる。
うん、やっぱり僕の体だ。
「僕をいじめたこと、後悔させてやる。」
僕はニンマリと口角を上げ、嫌いだった3年1組の教室へと、血まみれの体で急足で向かったのだった。