***あるいは、とある少女の日記かもしれない***
第一章 邂逅
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第一節 これは誰かの独白である
夏。
燦々と照りつける太陽、澄んだサファイアのような青い空。
その中で、陽炎の上る熱い砂の上繰り広げられる高校球児たちの熱い戦い。
水遊びを楽しむ、ニュース映像の子供たち。行列のできるかき氷のお店。
みんな思い思いに夏というものを楽しんでいる。
でも。
それが何なのか、私には分からない。
だってそれは、窓の外のことで、私にはまるで関係の無いことだから。
小さい頃から病気がちで、一度も外に出してもらえなかった。だから私にとって、外に出ることは特別なことだったし、それに憧れた。
大人に何度もお願いしたし、パパやママにいい子にするから、と何度もねだった。毎年サンタさんにも欠かさずお願いするために、毎年真新しいソックスを用意して、翌朝一番に欠かさずチェックもした。
でも、私のお願いは誰も叶えてくれなかった。
ふと外を見やってみる。窓の外の人は、とても楽しそうに談笑したり、ふざけてじゃれあったり、ひなたぼっこをして居眠りをしたりと、思う思いに過ごしている。さもそれが当たり前のように。いかにも私が劣っていて、それをあざ笑うかのように。
夏。
それが何なのか私は知らない。だってそれは、私には関係の無かったことだから。
でも。
だからこそ。
私はそれを知りたいと願わずにいられないのだ。
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