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私が神になった話をかいていく

作者: かつめし

私は都内の大学に通っていた。家は駒込のワンルームで一人暮らし。高校時代にはそれなりの友達も居てそこそこ楽しくて家族も普通の人たちで悪く言えば特徴が無かった。


大学から上京して一人暮らしを初めてからは特に熱中する趣味もなく勉強もそんなに好きではなかったのでだんだんと大学にもいかなくなった。家の中は1段しか無くなってしまった新品のベットと脱ぎ散らかった洋服と最低限必要な電化製品しかなくてがらんとした殺風景な部屋で窓を開けると窓があった。本当の大学を行かなくなった理由は別にあったけれど。


4月、キラキラの1年生だった私はとりあえず当たり障りもない合唱のサークルに入ってなんとなくワクワクしていた。この年にもなってキラキラの1年生とまではいかないけれども私は変わるかもしれないという期待感とまわりのフレッシュな風にあてられて私もフレッシャーだった。


合唱の経験はまったくなかったけれども楽器を買う必要もないし新歓に行った限りの感想だと遊びが6割くらいできちんとした練習はあまりしていないようで先輩もフランクだったので軽いノリで入った。一緒に入った子ともlineのQRを交換してこれからのことを色々相談するしサークルのlineにも招待されたのでこれでネット掲示板の失敗談みたくはならないだろうと私は意気込んでいた。髪も思い切って明るい色に染めようと思った。みんながそうしていたから。


そんな付け焼刃の装備の私は慣れている者からみたらとても隙があるのだろう。池袋で行われた新入生歓迎会の飲み会でほろよいだからと勧められたアルコールに異物を混ぜられたのかつぶされてしまった。そこからの記憶はない。


女の先輩だったので安心していた。記憶が戻ったのは目が覚めてからで目が覚めると知らない男と知らない家に居た。その男はそこまでかっこよかったりするわけでもないがきちんとした服装とセットした髪で清潔感があり少し好意を持った。


起きた?と一応寝起きの私に気をつかうような素振りをみせてごめんね昨日は。俺は山根って言うんだけど俺も1年でさ、先輩から酔いつぶした1女の輸送となごみ班やらされててさ、身体とかには触ってないから安心してよ。


私は昨日まったく知らない人たちに何をされたのだろう。信頼してた女の先輩は私を売ったのだろう。ズキズキ痛む身体のこともあり考えたくない余計なことを考えてしまう。


ところでさ、ちょっと外に出ない?うん。そうね。ちょうどコーヒーかなんかを飲みたいと思っていたの。


ドアを開けた記憶が無いのに内側からドアを開けるのは不思議な感じだった。だけどこれが大学生なのかなと通過儀礼だと自分に言い聞かせながら飲んだこともないブラックコーヒーを飲んだ。また寝てしまうことがないように。それから数週間して私はデート先で山根と一つになった。もうこれ以上汚れても変わらないから。それから旅行もしたしそのとき初めて手もつないだ。頭が沸騰しそうになるくらいドキドキした。


それから私はサークルをやめた。初めて練習に行ったときに山根が女の先輩と笑いながら話しているのを聞いてしまったのだ。すべてのことを。


それから私は大学に行かなくなった。授業は正直好きだったが担当の教員にセクハラをされ続けていてつい肉体関係をもってしまった。もうどうでもよかった。バイトをやめることができたし。


誰かとつながっていないと気がくるってしまうので常にSNSに張り付いていた。タイムラインを一日8時間以上見始めたあたりから現実世界で作業を行うよりスマホを眺める時間の方が長くなりついに私はスマホの中に精神を移した。やり方はインターネットで調べた。


ついに私は食べ物を摂る必要がなくなった。これで好きな時間インターネット上を好きなように泳いでいける。身体にログインする必要がない。いつしか私は実体がなくなった。


あの人のスマホの中にも侵入できる。友達もここにはいっぱいいる。とてもピカピカした画面の中は桜なんかより全然綺麗な花畑が広がっていて私は誰にも邪魔されないんだ。


そんなことを思っていたらいつしか身体にログインできなくなった。精神がこちらになじんでしまったからだと同志には教えてもらった。これで殺人犯として収監されることもないしカンペキだ。一日中どうでもいいやり取りをしてテンションが上がってきたら通話をする。こ


れがどんなに幸せなことか。ひとつこころ残りがあるとするならばあの人とデートできなくなったことくらいだ。せっかくあの女を消したのに。山根があんなことをしたのはあの女がそそのかしたからだ。


なんで私は手をつなげないのだろう。手をつないで竹下通りを一緒に歩きたい。それだけでいいのに。なんで私は後悔しているのだろう。一人と会ってどうでもいい話をすることの方が何千人もいるフォロワーとのやりとりより重いと感じるのはなんでだろう。ああ、戻りたいよ。戻りたいよ。


そうして失意のまま数年間この世界で瞑想を続けていると衝撃的な画像を見つけてしまった。私が結婚していた。彼と。画像を見つけた。その他の投稿を見る限り私と服のセンスや素振りや志向まで私じゃなかった。なんであの女。


え?なんで、どうして。私はここにいるのに。私は私であって私でしかないのに。



死にたい死にたい死ねない死ぬことができない死ぬことができない。私は私が全知全能だと思ってた。けど違った。死ねない。これから永遠にこのままなのだろうか。


私がインターネットで見つけたあの術式は怪し気なオカルトサイトで見つけた。追放された東方の異端なキリスト教徒が行き倒れの悪魔との対話によって会得したとされる。悪魔を信仰していたので得たいの知らないなにかを悪魔としたのであろう。


当時電化製品すらもない時代で当人達にすら術式のことは理解されぬままやり方を示した死語で書かれた文書が外敵によって焼却されたはずであったが持ち出した者がいたとその怪しいサイトには書かれていた。冗談半分だと思った。それはペルシアの文化に紛れて日本に持ち込まれて門外不出で1000回の冬がすぎるのをまっていたらしい。他教の皮をかぶりながら。


その悪魔とは何者であったのだろうか。そんなことはどうでもよかった。


とりあえず私は自分が消滅するための方法を探していた。宗教って人が幸せになるためにあるものじゃなかったのだろうか。こんな奥義はなんのためにあるのか。こんなものは私が変えてしまおう。また手をつなげなくなってしまう人が出る前に。私は世界のすべてを知っている。私の教えを皆に伝えなければならない。




























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