王都ヴェネット
何というか...完成度が著しく低い...。
馬車に揺られてしばらくすると、ヴェネットの門が見えてきた。
「そろそろ門に着きますね。」
「そうだな...あ!」
「どうかなされましたか?」
「身分証無いんだった...」
「そういう事でしたら、今回限りは私のお客様という事で通して頂きましょう。」
「そんなことが可能なのか?」
「えぇ、こう見えて顔は広いですから。」
そう言えばそうだった。
コイツ、王族だったな。
「じゃあ、宜しく頼む。あ、何ならさっきの貸しはこれでチャラってことで」
「え?」
正直、あんまり関わると面倒臭いことになる予感しかしなかったため、出来れば早くおさらばしたい、と言うのがケイの本心である。
「いえ、そう言うわけにはいきません。こちらは命を助けていただいた身です。正当な報酬を払って...」
「いやいや、そんな大した事じゃなかったしさ?」
「では、ケイ様はどうやって当面、お過ごしになる気なのですか?」
確かにそうだ。
今のケイの所持金は全部、道中で賊からかっさらったもので、道中にそんな大物の賊などいなかったため実は、そんなに実入りが良くなかった。
他の街ならばそれでも当面はやりくりできたのだろうが、何せヴェネットは物価や地価が全体的に高く、宿1つ借りるにも相当なお金がかかる。
今のケイの財布事情では2日泊まるのが限界だろう。
「それもそうだが...」
「なら、良いですね?」
なんか妙に嬉しそうに言って来るのが妙に腹立たしいが背に腹はかえられぬ。
ここは甘んじて謝礼を受け取るしか無いだろう。
果たして、謝礼を受け取ったら関係を絶てるなんて出来るのだろうか。
王族、それも妾の子。
面倒臭さが漂っている
「絶対、面倒臭いことになるに決まってる...」
そう独りごちたのを馬車を操っていた護衛達が苦笑いをしながら聞いていた。
さて、そんなこんなでヴェネットに着いた。
検問に関してはアリアが予定どうりに客人としてやってくれたので通れたが、まぁ、門兵は好奇の目で見られたのは仕方があるまい。
ヴェネットの中に入ると、そこには賑やかな繁華街が広がっていた。
もともと寂れたような小さな村の出身のケイからして見れば恐ろしい規模だ。
「なんだここは...」
思わずそう漏らしてしまったのをアリアが見るとクスリと笑った。
「何がおかしい?」
「いや、ケイ様もそう言う年相応な反応をなさるのですね。」
まぁ、アリアがこう思うのも仕方がないだろう。
何せ、ケイは護衛が驚いていた時もそうだが、色々な所作が12歳のそれではないからだ。
ただ、ケイにとってそんなことはどうでも良く
「そうかよ。」
その一言だけで終わらせてしまうのだった。
その後にヴェネットの屋敷に着き、ヴェネットの母親と執事から表に歓迎を受けた後、一週間ぐらいの資金を謝礼として受け取り、屋敷を後にした。
「さて、次は冒険者ギルドか...」
そう言って、ケイはまた1人で歩き始めた。
「ここをこうした方が良いよ」というのがございましたらコメントで書いて頂けると幸いです。