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第二話 依頼内容

時間開いてしまって申し訳ない

スタルカズルという国がある。

 スタルカズル大帝国というのが正式な名称であり、皇帝スタルカズル16世を現在の王とする国家である。

 貴族性が布かれており、皇族、貴族、平民、奴隷の四階級に大まかに分類される階級制度が厳しく制定されている。

 無論、平等などという観念はないが、平民にしても重すぎる税などはなくある程度の自由はあるという。貴族性のメリットが活かしきれている国であると言えたそうだ。

 奴隷階級の存在で、スラムとなる地区も少なく、治安は比較的良好。

 国交も充実しており、大陸でも有数の大国である。


「……っていう認識なんだけどな?」

 そう確認したボクは、改めてオーデの意見を聞きたいと思った。

 するとオーデは、

「それはあの国に行ったことのない連中の言うことだ。アスク、この国から出たことはあったか?」

「まあ、一度だけ。ニレに行ったよ」

「ああ、あそこは安全ないい国だ。評判通りだったろうよ」

 ボクがニレに言ったのは、確か二年前。

 依頼の標的がそっちに亡命してしまったので、仕方なく国の外に出たのだ。

 警備レベルの非常に高い建物に引き籠られてしまったが、幸いにも直前に初めの職業進化を遂げたために得ていた職業能力『暗転(ブラックアウト)』と『致命傷(フェイタル)』を駆使してどうにか暗殺を遂げた、というものだった。

 しかし、暗殺の成功までに要した時間は最長であり、ひと際長引かせられたのは、ニレの警備隊長との正面戦闘だった。

 もともと真っ向からの戦闘が得意でない職業だが、あそこまで苦戦させられるとは思っていなかったので、正直驚いたのを覚えている。

「けどな、スタルカズルは全くもっと評判通りなんかじゃない。いや、確かに十年くらい前——前王の時代はいい国だったんだがな」

 なんでも、謀略によって暗殺された前国王スタルカズル15世は、確かに格差をなくす政治形態をとっていたそうだ。

 しかし、その後王になった16世は愚王であった。

 自らが得をすることしか頭にない猿だ、とすらオーデは評した。

 まず、平民の中でも所得の低いものは問答無用で奴隷階級に落とした。そんな横暴が許されるはずはないのだが、法律の書き換えによってありえない罪を生み出し、犯罪奴隷へと落としたそうだ。

 次に重税。所得に応じた額を割り当て、前王の倍近くの税を階級の低い貴族と平民に課した。

 そんな政策で、新王擁立を企てた者たちはもちろん、その他多くの高級貴族を手中に収め、反対派は遠くの領地に追いやったそうだ。

「それで、依頼はどこから?」

「闇ギルド・スタルカズル支部からだ。このままではまずいと思ったんだろうな」

 闇ギルドと言えど、その支部のある国民には配慮する。

 というか、場合によっては支えとなっている場合すらあるのだ。

 複雑な諸外国との関係性の中、正規ギルドには要請できない依頼を受け付けているため、ついになるはずの正規ギルドとのつながりすら存在するのだそう。

「正規ギルドにも、この依頼は来ているはずだ。内容は『国家転覆』じゃなくて『スタルカズル帝国民の保護のための派遣』とかになっているだろうけどな」

「つまり、合同任務ってこと?」

 こくり、とオーデは頷く。

「いや、それは難しいんじゃないの? 闇ギルドの連中はそんなことを気にしないだろうけど、正規ギルド登録者たちは無理だろう。連携は取れない」

「大丈夫だ。この任務に依頼してきたもののうち、真に実力のあるもの、偏見のない者で固めてきている、と正規ギルドは言っていた。様々な国からの有志がやってくるだろうが、険悪なことになるようでは、こんな任務は無理だろうからな」

「そう。ならいいけど。信用するよ?」

「ああ、そうしてくれ。闇ギルドでも、最低A+ランクのもので固める予定だ。そこまでになると、偏見もないだろうからな」

 大体1000人くらいの『部隊』が結成されると思う——オーデはそう言って、ボクに依頼をしてきたのだった。


 ***

 

〇ニレ 首都:ディンブルク


 リッカ・エムブラはギルド支部長室に呼び出されていた。

 つい最近職業『聖人(メッカ)』に目覚め、ギルドの定める最高階級Sランクになったばかりだというのに、何か厄介なことでも起きたのだろうかと不安になる。

 Sランクというのは永世称号であり、絶対になくすことのない地位のはずが、この間まで少しの失敗でもランクを護るために許されなかったプレッシャーから、落ち着いていられない。

 そうでなくとも、ディンブルク警備隊長としての地位は失いうるのだ。

 以前『暗殺者』の子供に負けた時にはどうにか守り通した地位であり、失いたくないと思うのだ。

 そう考えていると、静かに扉が開いた。

「リッカ殿、今宵はようこそおいでくださいました」

 そう声をかけてくるのは、腹の出たギルド支部長。損得勘定のうまそうな男だというリッカの第一印象は間違っていなかった。

「いえ、大した用事もない身ですから。お会いできて光栄です、ウエルド支部長」

 その遜った挨拶がお気に召したのか、彼はどっかりと椅子に座る。

 ギシリと椅子が不満を訴えるが、それを気にも留めずウエルドは話し始めた。

「実はですなぁ……」

 内容は、簡単に言えば『国家転覆』だった。

 要するに、政治腐敗が進んでいるスタルカズル帝国を粛正し、その国民を保護する。それののちに、正規ギルドによる統治、共和制国家の建立を目指す。

 事がそう簡単に運ぶとも思えないが、そのあたりは正規ギルドの『影』がどうにかするのだろう。『影』に全幅の信頼を置いているウエルドはそう言った。

「しかしですな、この依頼には少々厄介な事情があってですな……」

 自分の言うことに絶対の自信を持つ、この街の事実上の最高権力者は、しかし、少しだけ言いよどむ。

「と言いますと?」

 正直、早く終わってほしいという願いから、先を促す。

 警備隊長はそんなに暇ではない。

「この依頼は、闇ギルドと合同なんですわ」


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