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だが、明らかに『私たちのことだ』と妙子は察した。
妙子は、顔を背けるよりも、むしろ普通に振る舞った。
それに反して潤は、小柄な体を、より一層すぼめて歩くのだった。
『だから、いじめられるのだ』
と妙子は憤慨した。
何も悪いことなどしていないのだから、堂々と食事をすれば良いのだ。
「何も卑下することはない」と、潤に言い聞かせた。
事務、経理、企画、開発、総務、現場の管理職、正社員等は皆、グループごとに固まって食事をしていた。
派遣労働者が椅子に座ろうとすれば、蔑視の視線をはっきりと感じる。
それが集団であり、共同体であり、幻の連帯感でもあった。
正社員であるという秩序の平等意識の表れだ。
だが、正社員同士でも、競争の原理は存在するに違いない。
派遣社員は、正社員と異なり、退職金もボーナスもなく会社に貢献する存在だ。
派遣社員の多くが、社員食堂では食事を取らなかった。
それは、『異質なものが排除されることで、己を正当化し、謳歌する人間の我欲の表れである』と、妙子の目には映った。