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 ラグナロクセカンド 神界三国志  作者: 頼 達矢
第四章  強壮なる山の巨人族の大地
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第七十話  ヨトゥンヘイム

「さて、誰がヨトゥンヘイムへ行き、誰がヴァルハラに残るかなんだが・・・・」


王の間を出て、会議室に集まった十五人のエインフェリアと三人のワルキューレは人選を決めるべく話し合っていた。


「ヴァナヘイムへ行った時の面子でよいのでは?気心が知れているし、やりやすいのだが」


重成が言うと、勘助が発言を求めた。


「いや、すまぬのだが、義元公はヴァルハラに残っていただけぬか」


「ほう・・・・」


義元が彫りの深い端正な顔に笑みを浮かべ、勘助を睨み付けた。


「あのヴァ―リ神の幻術に翻弄されたことではっきりし申した。我が軍の練度はまだまだ低いと。もう一度徹底的に鍛えなおさねばならん。そこで・・・・」


勘助は独眼で恐れず義元の眼光を受け止めながら訥々と語った。


「義元公の御力が欲しいのでござる。何といっても義元公は我らが武田家、それに北条家をも寄せ付けなかった海道一の弓取り。その軍法をヴァルハラ軍に取り入れることは必須であろうかと」


「成程」


義元は頷いた。


「そういうことならば、汝らに手を貸してやろう。確かに、汝と信繁の武田家の軍法は信玄には通用せぬであろうからな。思いきって我が今川家の軍法に変えるがよいかも知れぬ」


「あたしもヨトゥンヘイムに行くからね」


フロックが勇ましく言うと、彼女を怖がっているエイルの顔がみるみる強張った。


「え・・・・フロック姉さまも来ちゃうの・・・・?何で・・・・」


「露骨に嫌そうな顔をするんじゃないよ」


フロックがエイルを睨み、舌打ちしつつ言った。


「あたしだって、あんたやブリュンヒルデと行動するのは不愉快なんだからね。でも、ロキと戦うかも知れない以上、じっとしてられないんだよ」


確かに、ロキと戦うとならば戦乙女の中で最も武勇に優れたフロックの力は非常に心強いだろう。


「それから顕家、ヘンリク。あんた達も来な」


「私が?この者共と一緒に行動を共にせよと?ふざけたことを言うな」


顕家は重成を見ながらその少女のような繊細な顔貌を不快気に歪めながら吐き捨てるように言った。


「どうせあんたはヴァルハラに残っても練兵には参加しないんだろう?敵の首魁のロキが討てるかも知れないんだ。我慢しな」


「ふん・・・・」


顕家は鼻で笑うのみで否とも応とも言わなかった。


「私は喜んで行かせてもらおう。美しく愛らしい三人の戦乙女は私が命を賭して守ろうじゃないか」


ヘンリク二世が優雅に言ってのけた。歯の浮くような台詞であるが、少しも浮薄に聞こえないのは、彼が本心から言っているからだろう。


「では、これで決まったな」


重成が言った。己の他にブリュンヒルデ、後藤又兵衛、ローラン、、エドワード、姜維、エイル、平敦盛、ラクシュミーバーイ、フロック、ヘンリク二世、そして北畠顕家が山の巨人族の世界であるヨトゥンヘイムに行き、今川義元、孫堅、武田信繁、山本勘助、グスタフアドルフ、、夏侯淵がヴァルハラに残る。


「・・・・」


重成は秘かに顕家に視線を向けた。己に対して露骨なまでに嫌悪と侮蔑の感情を向ける彼にはやりきれない程の怒りと悲しみを感じるが、やはりその神の域に達した武勇と共に戦えることはこの上も無く心強い。

同時にふつふつと競争心も沸き起こった。ロキを討つのは彼ではなく、己でなくてはならない。

思えば、同じ陣営の者に対して激しい対抗心、競争心を抱くのはこれが初めてではないだろうか。

かつて豊臣家に仕えた時代の同世代の同僚には武勇において己に伍する者や上を行く者は一人もいなかったし、後藤又兵衛や真田幸村といった先達にはただ憧れと敬愛の念を抱くのみで、対抗心など生じようがなかったのである。

この生まれて初めて生じた激しい対抗心を暗く醜い嫉妬にしてはならない。己を高める糧にしなければと重成は自身を叱咤した。


戦乙女それぞれ己の天翔ける船に自身が選んだ勇者を従えて乗り込んだ。

エイルはブリュンヒルデの船に一緒に乗りたいと言ったのだが、先にヴァナヘイムにてフレイヤの船が破壊されたように不測の事態に備えて船は多く用意した方が良いと判断したのである。

フロックの船の外装はその髪と同じく鮮やかな紅であり、フロックの船は薄い橙色だった。


「船に乗り込む前に、大急ぎで図書室からヨトゥンヘイムと山の巨人族に関する書籍が無いか探してみたんだけど」


エドワードが本を開き見つつ呟いた。


「これといった情報は無いね。やっぱり先のラグナロクにも参戦していないし、アース神族ともほとんど関わりが無いからかな?」


「山の巨人族は穏やかな気性という話だが・・・・」


「うん。他の種族に対して問答無用に攻撃を仕掛けるムスペルや霜の巨人に比べれば遥かに穏やかで知性的で、話し合いは充分に通じる相手らしいよ」


重成の問いにエドワードは本から目を離さないまま答えた。


「かと言って友好的という訳じゃないようだけど。閉鎖的で、とにかく他の種族との関わり合いを嫌うようだ。この辺はヴァン神族と似ているね」


「山の巨人とやらは強いそうだな。楽しみだ」


ローランが好戦的な笑みを浮かべながら言うと、エドワードは彼を小馬鹿にしたように鼻を鳴らした。


「山の巨人族は戦う相手じゃないことをちゃんと理解できているのかい?まあ、彼らはムスペルをも上回る体躯と膂力を持っているらしいから、いざ戦っても君の馬鹿力でも通用しないだろうけどね」


「ヨトゥンヘイムが見えてきました」


怒鳴りつけようとしたローランを抑えつけるようにブリュンヒルデがぴしゃりと言った。


「あれがヨトゥンヘイムか・・・・」


成程、山の巨人族が住むと言うだけあって、巨大な星である。ヴァナヘイムの倍以上はあるだろう。


「結界などは張られていないようですね・・・・」


しばし念をこらしてヨトゥンヘイムの様子を探っていたブリュンヒルデが呟き、そして彼女が選んだ勇者達の顔を見渡した。


「ではヨトゥンヘイムに入りましょう。覚悟は良いですね?」


まだ見ぬ山の巨人族との邂逅とロキやシンモラと再び見えるやも知れないことに武者震いしつつも、エインフェリア五人の表情には恐怖の翳は微塵も無い。


「ああ、大丈夫だ」


重成がブリュンヒルデの銀河に瞬く星辰よりも神秘的な光を帯びる青い瞳を見つめながら凛然と言った。

ブリュンヒルデは微笑を浮かべたがそれはほんの一瞬で、またすぐにその古代の名工の手によって造られた彫刻のような美貌を固く引き締めた。


「行きましょう」


ブリュンヒルデの天翔ける船が湖面に舞い降りる白鳥のように優雅にヨトゥンヘイムに向かい、フロックとエイルの船が続いた。

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