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神界三国志 ラグナロクセカンド   作者: 頼 達矢
第九章  巨人と巨神
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第百七十四話  暗黒の主従

「まさか、雷神トールを顕現させるとはな」

艶やかな黒髪をなびかせ、端正ながら淫靡な匂いを放つ顔貌の巨人が呟いた。

言わずと知れた巨人の血を引く偽りと狡猾の神、ロキである。

「少々計算が狂ったかな?指輪を巡る戦の度にあれが顕現されてはかなり厄介だ」

ロキは己が描いた戦略を大幅に修正しなければならなくなったことを包み隠さず率直に認めた。

「確かに、あれ程凄まじい力を持つ戦神相手では、死者の軍勢では立ち向かうことは困難ですね」

四輪車に乗った人物が清風の如き清らかながら豊潤な理性と知性を感じさせる声で応じた。

純白の道服を纏い綸巾を戴き、白羽扇を優雅に仰いでいる。

蜀漢の丞相、諸葛孔明その人であった。

「困難とは大分言葉を選んだな、孔明。はっきりと不可能だと言ったらどうだ」

ロキは暗黒の瘴気で蘇りながらも、仙人の如き聖なる威容を湛える知将に皮肉っぽく言った。

だが怒りは微塵も抱いていないようである。孔明の智謀に全幅の信頼を寄せているのだろう。

「そうは言っても、ヴァルハラの軍勢との戦いを避けるつもりは全くないんでしょう」

十代の少年のような童顔に四つの瞳を妖しく輝かせる小柄な男が嗄れ声でロキを挑発するように言った。

「当然だろう、猿飛佐助よ」

ロキは不遜極まる臣下を愛でる表情を浮かべながら応じた。

「その表情……。さては早くも対応策が浮かびましたかな?」

「うん。まあ、ぼんやりとではあるがな。あれを使えば、何とかなるのではないかな」

「あれとは、何でございましょう」

孔明が知的探求心を露わにしながら聞いた。邪神の配下として命を得て、かつては想像もしなかった高次元の世界の知識を得ることが出来ることに無上の喜びを得ているのが明らかであった。

「それは後のお楽しみというやつだ、孔明よ」

ロキは孔明の知識への渇望を十分承知しながら、じらすように言った。

「そして佐助よ。その時それを使って彼らからミョルニルの槌を奪うのは、お前たち真田十勇士の仕事だぞ。心しておけよ」

「ミョルニルの槌を奪うのですか!」

流石に人の身であった頃から既にその魂を邪悪に染め上げていた魔忍猿飛佐助といえど、面食らったようであった。

「それは大仕事ですな。しかし我ら如き卑小の身で、あの巨大な雷神から槌を奪う事が出来ますかな?」

「やらねばなるまい。それにそれをやらねばお前の望みであるあの戦乙女を愛欲の奴隷とすることも木村重成を心身共に苦しめながら地獄に落とすことも叶わぬぞ」

「それは確かに。そう聞けば俄然やる気が湧きますな」

佐助は主君のけしかける言葉に得たりと頷いた。

「しかしその為にはあと二、三回は重成とブリュンヒルデが雷神を顕現させるところを見ておきたいところですな」

「構わんよ。指輪がさらにいくつか彼らに渡っても全く問題ない。雷神トールの顕現を阻止させ出来れば我らの勝利は確定だ。指輪も最終的に総取りすればいいだけの話よ」

ロキは雷神トールの顕現という二度目のラグナロクにおいて最大の脅威となる現象を目の当たりにしても勝利の確信は微塵も揺らいでいない様子であった。

そのような暗黒神、己達を蘇らせた主君に蜀漢の丞相と真田十勇士の筆頭忍者は恩義と畏敬の念を新たにした。

「孔明よ。引き続き死者の軍勢の編成と今後の戦略の立案はお前に任せるぞ。信玄とよう相談せよ」

「承知いたしました。お任せを」

孔明は深々と頭を下げた。

「そして佐助よ。お前たち十勇士にはいずれ必ず指輪が落ちるであろう地に潜伏してもらおうかな。」

「ほう。我ら忍びにはまさにうってつけの任務でございますな。お任せを」

暗黒の神と仙人の如き風貌の知将、そして重瞳の魔忍は我が骸の船団ナグルファルに続いてアース神族の天翔ける船がニブルヘイムより飛び立ち去って行くのを見送りながら、それぞれ次なる戦いにおける己の役割の絵図を胸中に描いていた。

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