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神界三国志 ラグナロクセカンド   作者: 頼 達矢
第六章  ムスペルライダーズ
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第百十七話  集団戦法

それは木の葉の猛吹雪だった。ムスペルの炎、そしてスキーズブラズニルの墜落から生じた爆風から逃れた今存在するヨトゥンヘイムの木の葉全てがこの一か所に集まったのではないかと思える程の量であった。

その大量の木の葉が凄まじい勢いで舞い狂い、体にまとわりついてくる。

エインフェリアとワルキューレは武器を振るうことも術を発動する為の印を組むことも出来ず、ただ五体に神気を集中して木の葉に体が傷つけられないようにするだけだった。

木の葉の猛吹雪が吹き荒れたのはほんの三、四分だけだっただろう。

だがエインフェリアとワルキューレは完全に出遅れ、真田十勇士のスキーズブラズニルへの侵入を許してしまった。


「おのれ、十勇士・・・・」


体にへばりついた木の葉を払うのもそこそこに、エインフェリアとワルキューレは全力でスキーズブラズニルに向かって全力で駆けた。



スキーズブラズニルの内部は火と風と煙が充満し、十人の忍者達の視界を覆っていた。


「巨人の船の内部とはいかなるものか、じっくりと見物してみたかったのだがな。いささか残念であるな」


猿飛佐助は重瞳を妖しく輝かせながら呟く。そして墜落の衝撃をまともに受けながらも、その卓絶した生命力故、死にきれずにいた巨人を発見した。


「ははっ」


佐助は会心の笑みを浮かべ猿のように跳躍して鉄の爪で巨人の喉を切り裂いた。


「佐助、貴様・・・・!」


「死にきれずにいた者を楽にしてやったのだ。慈悲深いであろう?」


怒りに目を剥く根津甚八に佐助は嘲笑で答えた。


「山の巨人族共は桁外れの生命力、頑強な肉体を持っている故、生き残った者はまだいるに違いない。一人も残さず、殺せ」


「・・・・」


「殺せ。いいな、必ずだ」


佐助の漆黒の殺意と悪意に呼ばれたかのように、死者の女王ヘルのおぞましい腐敗臭と暗黒のオーラが出現し、ためらう十勇士の魂に陰隠滅滅たる声で語り掛けた。


「そうだ、殺せ・・・・。一人残らずだ。山の巨人の骸を我が元に送り届けるのだ・・・・。慈悲の心などいい加減捨て去るがよい。我が僕ども・・・・」


女王ヘルの強力な強制力を伴った命令に突き動かされ、佐助に続いて八人の忍びが餓狼の如く山の巨人達の元に殺到し、死の刃を振るう。


「ぐう・・・・!おのれ・・・・」


根津甚八のみが、佐助の意のままに動くことを、ヘルの完全なる僕と化して義侠の心を捨て去ることを拒絶しようと歯を食いしばって耐えた。だがそれは所詮敵わないことだった。


(今はまだヘルの命令を跳ね除けることは無理か・・・・。致し方ない、ここは従ってやる。だが、いずれ必ず・・・・)


いずれ必ず、自由と武人の誇りを取り戻し、悪逆無道の猿飛佐助に裁きを与える。そう心に固く誓いながら甚八はその強靭な両腕に握られたサイで山の巨人の喉をえぐった。



「十勇士め、何と言う事を・・・・」


スキーズブラズニルに突入したエインフェリアとワルキューレは駆けながらも眼の前の惨状に目を覆いたくなった。

山の巨人族の死体が行く先々で散乱しているが、直接の死因は明らかに墜落によるものではない。

今しがたその急所をえぐられたばかりなのだろう、おびただしい鮮血で船の床を紅に染め上げている。


「よくぞ来られました。ですが、ひとまずここで留まっていただきましょうか」


男とも女とも判別し難い艶めかしい声がスキーズブラズニルの通路に響く。

小太刀二刀流の構えの霧隠才蔵を筆頭とする九人の忍びが戦いの姿勢を整え、立ちふさがっていた。


(猿飛佐助がいない・・・・。奴がイズガ殿の指輪を奪いに行ったか)


「重成、彼らは私たちが仕留めます。貴方は猿飛を追ってください」


重成の視線とブリュンヒルデの視線が濁った炎が舞い、焦げ臭い熱気が吹きあがるスキーズブラズニルの艦内で絡み合う。


「さあ、行きなさい」


「承知。皆、頼むぞ」


隼を思わせる圧倒的速度で十勇士達を突破しようと駆け出す重成に、そうはさせじと由利鎌乃介の鎖分銅が砲弾に匹敵する勢いで襲い掛かる。

だがブリュンヒルデが胡蝶のように舞いながら剣を振るって分銅を弾き返した。

それが開戦の合図となってエインフェリアとワルキューレと真田十勇士の激闘が始まった。

先の戦いでは敗れたローラン、フロックはそれぞれ清海入道、海野六郎に復讐戦を挑みたかったが、佐助が指輪を奪取するまでの時間稼ぎが目的の忍び達はそれに応じなかった。

一対一の戦いは避けて九人の連携した集団戦法の構えである。徹底的に訓練された緻密かつ狡猾な戦法に、エインフェリアとワルキューレは苦戦を強いられた。



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