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神界三国志 ラグナロクセカンド   作者: 頼 達矢
第六章  ムスペルライダーズ
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第百十一話  参戦

「さて、どうやってあのムスペルの四姉妹の次女を足止めするかだが・・・・」


重成は智謀に優れた姜維とエドワードに意見を求めた。


「あまり魔術の援護は期待しないで欲しい。敦盛のおかげで神気はだいぶ回復したけど、まだ万全じゃないし・・・・」


「そもそも、あの炎熱に包まれた巨体には術など効果は無いであろうな」


姜維は悠々と闊歩するラウナークの背中を忌々し気に見つめながら言った。


「何より問題なのはあの星球式槌矛だな。あの炎を纏った巨大な、さらに遠心力が加わった一撃を防ぐ手立てなど無い。そして喰らえば一巻の終わりだ。原型を留めぬ肉塊にされるであろう」


「・・・・」


流石の彼らもこれまでの戦いと大地震の衝撃で体力、精神力が摩耗しており、良い考えが浮かばないようである。


「顕家卿・・・・」


重成はあえて顕家に意見を求めた。普段の顕家であれば重成の問いかけなど黙殺するだろう。だがこの状況であれば応えるしかない。


「あの化物に小細工など通じぬ。何とか致命的な一撃を喰らわぬよう避けながら、時間を稼ぐ他あるまい」


「・・・・」


「私と重成、又兵衛、ローラン、姜維、ヘンリクが奴の間合いに入って挑発し、他の者は術と飛び道具で牽制する。それ以外にあるまい」


「そうですね・・・・」


重成は顕家が己の問いに初めて真剣に答えてくれたことに内心喜びながら、頷いた。


「しかし、長達が船を目覚めさせるのにどれだけ時間がかかるか分からないし、目覚めさせれたとしても本当にあの巨人を倒せるのかどうか・・・・」


エドワードが蒼白となった顔で言った。あまりにも不確定要素が多すぎる状況に、苛立ちと不安を抑えることが出来ないようである。


「泣き言を言うな。やるしか無かろう」


猛々しく言い放つローランをエドワードは蔑みの眼で睨んだ。


「ふん、君はいつも言う事が決まっているな。ついさっき十勇士に敗れて意識を失っていたくせに」


「何だと!貴様、もう一度言ってみろ」


ローランがいつにも増して怒気と殺気を露わにした。


「止めんか、二人とも。状況を考えろ」


姜維が鋭く制止した。エドワードとローラン、この二人の仲の悪さは深刻な問題である。いつか致命的な決裂の日が来るのではないかと姜維は憂いた。


「その星球式槌矛もだが、蹄にも気を付けないとね。蹴られるか、踏まれるか。いづれにしても一撃で命を奪われるだろう」


ヘンリク二世が言った。


「重成・・・・」


ブリュンヒルデが念話で重成に語り掛けた。


「マグニ様とモージ様にミョルニルの槌を送ってもらいましょうか?」


重成は少し考えて、ブリュンヒルデに答えた。


「それは本当に最後の切り札として取っておこう。出来れば、山の巨人族の自らの手で同胞の仇を討ちたいという本願を遂げさせてあげたい」


「・・・・」


「だが、彼らが何やらという船の力を使っても半馬の巨人を討てなかったら、その時は、ミョルニルの槌を使わせてもらおう」


「分かりました」


ブリュンヒルデは心から賛同したように頷いた。


「それでは、行こうか・・・・」


重成は愛刀道芝露の目釘を検めた後、言った。その端麗な顔貌には強大過ぎる敵に対しての緊張と興奮、そして喜びが良い具合に混じり合っていた。



「山の巨人族共、地中を移動しているようだぜ」


由利鎌乃介が大地に耳を押し付けながら言った。その精悍な顔には己の得意とする地中移動を遥かに上回る技量でやってのける山の巨人族に嫉妬と羨望を抑えることが出来ないと言った思いが表れていた。


「あの山の巨人族の若者は船の封印を解くつもりだとか言っていましたね。そこに向かっているのでは?」


霧隠才蔵が盗み聞いた長達の会話を思い出して言った。


「では、彼奴らめはその船に乗って何処かに逃げるつもりかの?」


三好伊三入道が言うと、兄の清海入道が明快に否定した。


「いや、それはあるまい。あの巨人共は勇猛で誇り高い戦士の一族よ。同胞の仇も取らずにおめおめと逃げ出すなど絶対にあり得ぬわ」


「うむ。そうだろうな」


根津甚八が同意した。


「では、やはり山の巨人族共とあの半馬の巨人をぶつけ合わせ、その隙に指輪を頂く。予定はいささかも変わらぬな」


海野六郎が言った。


「まあ、そうだな・・・・。お?」


猿飛佐助が呑気に軽くあくびをしながらふとアース神族の面々をその四つの瞳で追い、驚いた表情を浮かべた。


「奴ら・・・・。あの半馬の巨人とやり合う気か?」


「何と・・・・。無謀な連中だな。正気を疑うわ」


望月六郎が呆れたように言った。そのいかにも朴訥とした顔貌には露骨に蔑みの色が浮かんでいる。


「流石と言うべきか。だが、彼らと言えどあの巨人を仕留めるのは無理だろうな・・・・」


根津甚八は好敵手達の勇気と決断に敬意を覚えながらも、如何ともしがたい戦力差があるのを認めざるを得なかった。


「・・・・で、どうする?我らは見ているだけか」


穴山小介がぼそりと言った。その指は小刀の鯉口を切り、眼には抑えきれない闘志の焔が揺らいでいる。


「当たり前だ。奴らが潰し合うのを見守ってやればいい。我らが手を出す必要などない」


海野六郎が言ったが、賛同したのは望月六郎と伊三入道だけであった。


「それではつまらぬ。あの巨人に拙僧の力が通じるのか、試してみたい」


清海入道が吼えるように言った。その赤ら顔には僧らしい謹厳さは毛程もない。戦場から戦場を往来する荒武者そのものであった。


「何を馬鹿な・・・・」


「いえ、考えて見られよ、海野殿」


権高に否定しようとする海野に才蔵が語り掛けた。


「清海の言も一理あります。我らの敵はアース神族だけではありませぬ。炎の巨人族ムスペルもでしょう。私たちはまだムスペルとは直接刃を交えていない。今後の戦を考えれば、今ここでムスペルの大将の一人と戦っておくことも必要なのでは?」


「ふむ・・・・」


「そうそう。それにアース神族の面々が傷ついた体で健気にも強大な敵に挑もうとしているのだ。これを黙って見過ごすなど、義にもとるではないか。なあ、甚八」


「貴様、心にも無いことを・・・・」


薄ら笑いを浮かべながら小馬鹿にした口調で言う佐助を、甚八が殺気だった表情で睨み付けた。


「助太刀するように思わせて、あわよくば木村重成を仕留め、あのワルキューレを己の物にしようと企んでいるのであろうが」


「ははっ、馬鹿を言うな。俺は純粋にアース神族の面々と力を合わせてあの半馬の巨人と戦ってみたいだけだ。こういう機会は二度とないだろうからな」


「まあでも、隙を見て奴らも仕留めるというのも悪い考えではないわな」


望月六郎が当然佐助はそう考えているだろうと確信ながら言った。


「俺はそこまで悪辣な真似はしたくないが・・・・。とにかくあの化物とはやり合いたいぜ」


直情的な気性の由利鎌乃介が若々しい闘争心をむき出しにしながら言うと、穴山小介と筧十蔵が我が意を得たりと頷いた。


「やれやれ仕方のない奴らじゃのう・・・・。どうなさる海野殿?」


伊三入道がわざとらしいため息をつきながら海野六郎に意見を求めた。


「全く、一度死んで蘇ったら、ますます気儘になりおって。目付け役のそれがしの意見など聞こうともせぬな。仕方ない、取り合えず奴とやり合う事は認めよう。アース神族の者共が隙を見せたら、仕留めても構わぬ。だが、忘れるなよ。我らの任務はあくまでニーベルングの指輪を奪う事だ。あの巨人の若造が姿を見せたら、すぐにそちらに取り掛かるぞ。良いな?」


主君幸村より参謀役と真田十勇士の目付け役を命じられた者としての威を見せつけながら、海野六郎が言った。














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