永久に
「お久しぶりです」
白い煙が口から漏れる。何度目になるかわからない邂逅をシロはやり遂げた。泣くことも説得することもせずに終えることができた。
雪が空から落ちてくる。それが地面に当たっては消え、人に当たっては消えていく。
目の前を歩く学生服の男は立ち止まり振り返る。シロにとっては同姓同名、間違うはずもない他人。
「人違いっす、俺、あなたのこと知らないんで」
何回目かわからなくなった返事。両手で数え切れなくなったときから数えるのをやめた返事。
向けていた顔を戻し、足音が離れていく。
足音が、離れて、いく。
「シロ」引き止めるように「私の名前だよ、高原天道くん」
足音が止まった。マフラーで隠れたシロの口元が緩む。
「どうして名前を」
「秘密です」口を緩め「シロって犬みたいですね」
マフラーの中から白い空気が数度に渡って漏れでていく。
「……そのマフラー」
高原は学生服の襟足を掴む。マフラーのない首に直接寒さが吹き込んでいく。
それを見ていたシロは自分のマフラーをはずしながら、近づく。
二人の距離が密着しそうなほど近くなり、彼女は彼に抱きつくように体を預けた。
え、という声が聞こえるくらいにはもう離れている。
マフラーは高原の首にかかっていた。
「これを返しますね」
目を開けたまま瞬きもせずに高原はシロを凝視する。
その目をまっすぐに見返す。そして、二三歩後退した。
「いいえ、違いますね」目を伏せ「あげます。私は今は暖かいから、寒そうなあなたにあげます」
また二三歩後退する。
「早く家に帰ったほうがいいですよ」きっと「今日はいい夢が見れるでしょうから」
「はい」確かな返事「シロさんもいい夢みてください」
「うん」今までで最高の笑顔「私は今最高の夢を見ています」
去っていく高原の後姿をシロは眺め続ける。
降り注ぐ雪がそこらじゅうに落ちては、溶けて消えていく。
久しぶりに書いたら、あんなに長い文章書いてたころが不思議になってくる。
今回はちょっとぶつ切り気味。もっと書き足したいけど、道筋はこんな感じ。
今の現状だとわりと満足。