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事故事後

 学校の前の坂を下り終えてすぐに商店街が始まる。部活終わりの下校中の学生で、商店街は一日で最大の喧騒に包まれる。

 だが今日に限っては違った意味の喧騒に包まれている。

「救急車!!はやくしろ!!」

 商店街の入り口付近、人だかりの中で大声が響く。

 大声を出している男は倒れている男子学生の傍らで、野次馬達を指しながら大声で指示をだしている。

 倒れている学生の頭の付近では女子学生が泣きじゃくり、嗚咽とも言える声を上げていた。

 一人の学生を生かすための戦場がそこにはあった。

 中心に立って指示を出す男は、忙しなく動くのをやめて学生付近に膝をつく。

 周囲を確認し、気道の確保、脈の確認と出血の位置を素早く確認していく。出血は幸い微量でもう止まっていた。脈も正常で、息もしているのを確認すると、ひとまず落ち着いたのか張っていた肩をおろした。

 それから学生の持つバッグに手を伸ばした。

「そうか、この荷物が衝撃を和らげてくれたのか」

 中に詰まっていたのはおそらく学校の全教科分はあろうかという教科書にノート。たまたま今日この学生が気まぐれで持って帰ろうとしたものだった。

 さらに男は鞄の中や倒れている学生の上着を探り、生徒手帳を取り出した。

「高原天道くん」そこに記されている名前を確認し近くの女子学生を見て「で、いいのかな」

 女は泣いたままうなづく。

 男は頭をかいて目を左右に泳がせる。

「この子は大丈夫だからね、君はもう家に帰ったほうがいい」

「ついていく!」

「君は彼のなんだい?」

「お、幼馴染ー」

 泣き続けたまま答えがきた。

 男は少し目を閉じて、握り手で口を隠す。

「じゃあついてきてくれるかな」それから「君のご両親と彼のご両親に連絡してくれ」

 遠くからサイレンの音が近づいてくるのがわかる。

 女子生徒は頷いて、自分の鞄から携帯電話を取り出し、それぞれの家につながるダイヤルを呼び出した。


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