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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT11 カルト宗教結社、天声会
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第二話「セーフハウスからの帰還」

 ティアラは手元の端末にペンのような形のメモリースティックを挿入して操作する。

 そして入力を終えると、そのメモリースティックを抜き取ってメイドロボに手渡した。

 メイドロボはそれを受け取るとキットの方へと歩み寄り、両手でうやうやしく差し出す。


「私が持ってる天声会の、アルコロジー・オオヤマツミの住人失踪に関連すると思われる情報をまとめて入れておいたわ。

 それは貴方方に無料でご提供致しましょう」


 ワンがティアラに尋ねる。


「地上世界最高の情報屋ティアラ。

 我々が貴方を助けたのは、貴方に頼みたい事があったからだ。

 もちろんアルコロジー・オオヤマツミの住人に関する情報提供は有難い。

 だが我々はもう一つ、探し求めているものがある」


 ティアラはスプーンで目の前の机の紅茶をかき混ぜ、波紋を眺めながら言った。


「P-Xの所在……かしら……」

「分かっているなら話が早い。我々は……」


「忘れないで頂きたいわ……。私は五十嵐達の勢力では無いけれど……貴方達レジスタンスの仲間でも無いのよ?」

「ワンさん、ちょっと耳をかしてよ」


 キットはしばらく小声でワンと話し込む。

 そして豊国議員の方にも歩み寄り小声で話す。

 ワンは頷き、豊国議員もしばらく黙り込んだ後に頷いた。

 キットはポーチから小型のメモリーカードを取り出すと側頭部のカバーを開いて装着した。

 しばらく目を閉じていたキットだが、10秒ほどで目を開き、再びメモリーカードを側頭部から抜き取ってカバーを閉じる。

 そしてティアラの机の前へと歩み寄り、そのメモリーカードをティアラの前に置いた。


「何かしら?」

「ティアラさん、あなたは情報の売買をしていると聞きました。

 このメモリーカードに入っている情報と、あそこの机でしかめっ面している豊国議員おじさんの頭に入っている情報を買い取って貰いたいんだ」


「中身が何か分からないわね……ちなみに対価は何をお望みかしら?」

「しばらくの間、豊国議員をここに匿って欲しいんだ。

 話を聞くにはそれなりの時間が掛かるだろうし、彼は五十嵐達に相当睨まれてる。

 地上は危険だからね」


「それだけ? メモリーカードの中身は何か知らないけれど、豊国議員の持ってる情報の対価としては安すぎるわね」

「後は、さっきのフルーツのデザート、お替わり一杯貰おうかな」


「……豊国議員、貴方も同意という事でしょうか?」

「……そうだ。よろしく頼む」


「それならば良いでしょう。取引成立ね」


 半分眠ったような目で紅茶を飲み干しながらマサコが呟く。


「美味しすぎる話ほど怖いもんはないぞ……っと……」


 ***


 ワン、キット、マキ達はティアラのセーフハウスを離れ、潜水艇でアンダーワールドへと進んでいた。

 豊国議員はティアラ達、クラブ音音のメンバーと一緒にセーフハウス内に残してある。

 セーフハウスには予備の潜水艇が2機あるので、おそらくティアラ達は状況が安定次第、地上へと戻るであろう。

 潜水艇の指令室で、窓から海中の様子を食い入るように眺めるマキに、ワンが言った。


「マキ、君の推薦通り、情報屋のティアラ……そしてその仲間たちの力は凄まじい物だった。

 この日本で、五十嵐相手に正面から恫喝を交えた人質交渉を出来る人間など、ほとんど居ないだろう。

 そして、天声会の調査に関してだが……君はそれにも推薦する人物がいるんだったな?」


 マキはワンの方を振り返る。


「はい。地上の中流層とスラムの中間、ZA9エリアで事務所を構えているバウンティハンターのカムイさんです」

「……カムイ……、バウンティハンター……、どこかで聞いたことが有るような……」

「あの時だよ、壇ノ浦海食洞窟から攫われた女性達を救出したとき、偶然同じ場所に単独潜入しようとしてた!

 一緒にこの潜水艇で帰ったじゃないか」


「……なるほど。そうか……思い出したぞ、カムイ……たしかそんな名だった。

 たった一人で、地上では完全機密だったあの場所を探り当てて、潜入をしようとしていたあの男か!

 確かにあんな事が出来る人間などそうは居ない」

「あの時は攫われた女性の一人の機転が無ければ永久に見つけられなかっただろうからね」


 マキは再び透明アルミの壁の方を向き直り、海中の景色を眺める。


「彼がもし了承してくれれば、私もそれに付き添ってサポートしようと思います。

 その時はもう一度、メガリニアの時のように変装をお願いしたいです」

「分かった。約束しよう。

 ところでキット、情報屋のティアラはあれを見てどう動くと思う?」

「見過ごせないさ。彼女ならね……。見たら最後、もはや他人の顔で居られないさ……」


「騙し討ちのような事をしてしまったかも知れないな……。

 若干心が痛む……」

「彼女もこの国の住人、当事者だから知っておくべき事だよ。

 彼女はこの国を動かせる、大きな力を持っている。

 事実を知っている事、それはこの国の命運を握る者の責任でもある。

 それに彼女ほどの情報屋ならば、何割かは既知だろうさ」


 ***


「ふぅ……、ティアラさん、育子ちゃんが涙でメイクがぐちゃぐちゃだから顔を洗いたいそうです。レストルームはどこに……ティアラさん?」


 ちぃが部屋に戻ると、ティアラは机の上に万歳状態で突っ伏していた。

 机の前には粗方再生チェックを終えたと思えるホログラム映像が停止されている。


「どうしたんですか? ティアラさん」


 ティアラはぐったりした状態で、顔だけ横にいるちぃの方へ向けて呟く。


「……見なきゃ良かった…………」

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