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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT10 パワーゲーム
80/151

第九話「急襲作戦、VIPを保護し、離脱せよ」

 レジスタンスの潜航艇内、指令室にキットの音声が響く。


「ティアラ達はハーバーエリアのプライベートボートへと逃げ込んだ!

 だがまずいぞ!

 ハンニバルズの交信内容から察するにこれは罠だ!」


 指令室内の戦術ホロディスプレイの前で、ハーバーエリアのホログラムマップに片手をかざし、指で回転、拡大縮小をして確認していたワンは緊張感の籠った声で言った。


「このボートの位置、周囲の開けた地形とその外側の数多くの遮蔽物。

 彼女たちは今、死地へと入った。

 一刻も早く彼女たちを救いに向かわねばならぬ。

 そうしなければ全滅する」

「まずいぞ、どうする?」

「しかしここへ救出に向かうのはリスクが大きすぎる!

 メガリニアは極限状況でキットが情報を制御化に置いていたからこそ敵の増援が限られていたんだ!

 展開しているハンニバルズとNSATだけじゃない。

 30キロ以内に国防軍の駐屯基地が2か所もある。

 数分で軍用ドローンの群れが来るぞ!」

「我々の地上の人脈、パイプが崩壊しかかっている今、情報屋ティアラの力は絶対に必要です!」


 マキは前へと歩み出た。


「私一人でもティアラさんを救出に行きます。

 ハーバーエリアの近くで下ろしてください」


 ワンはマキのほうを黙って振りむき、しばし沈黙した。

 そして首にかけた馬蹄形のインカムのスイッチを入れる。


「我々はこれよりハンニバルズに現在包囲されつつある情報屋、ティアラ達の救出を行う。

 山岸、谷川、ホアン、3名は重装パワードスーツへ乗る準備にかかれ。

 山岸、谷川は対空オートフラックキャノン40型一門、シャープシューターと爆散ディスク1パックをメインに。

 ホアンはサーチアイミサイル2発とレールガンを。

 そして3体ともホバー・リフティングデバイスを付けるんだ。

 整備班はすぐに用意に掛かれ!」


 艦内無線ですぐさま応答の声が響く。


「山岸、了解です!」

「谷川、了解、ドローンはすべて落としてやりますよ」

「ホアン、了解! ハンニバルズのホバーヘリは落とせと言う命令だと……思っていいですね?」


「そうだ。

 詳細は後程説明する。

 リーフェイ、小岩、センロン、ドノバン、アサルトミッション用装備をしてプラットフォームへ。

 そしてマキ、付いてくるんだ」


 ワンはマキに一度視線を送って言うと、くるりと背を向けて艦内の廊下へと早足で進む。

 マキはその後を追った。

 廊下を進んでいたワンは一つの扉の前で立ち止まると、壁のパネルに手を添える。

 自動ドアが開くと、そこは左右に三段の武器ラックが並ぶ細長い小部屋であった。

 陳列されている様々な武器から、ワンはマキに両手で抱えるほどの大きさの武器を渡す。

 茶色く丸みを帯びた装甲板が幾重にも重なった巨大な武器は重さ20キロほどあり、中央下部には銃のカートリッジを10倍ほどにしたようなものが装着されている。

 そして口径が8センチほどある砲口の両サイドからは金属製のパイプが銃身の左右を這うように後ろへと伸び、後部とつながっていた。


「そのまま後ろを向くんだ」


 巨大な武器を両手で抱えたまま、マキは後ろを向く。

 ワンは武器を装着するフックの付いたガンベルトのような物を取り出すと、マキの肩、そして腹部に巻き付けるように装着した。

 そして両脇の下のガンベルトのフックに、小型の30センチ四方ほどの大きさのマシンピストルを左右一丁ずつ装着する。


「この武器は見たことのない形式です。

 オリジナルデザインの……おそらく非合法に製造されたポータブルミサイルランチャーですね?」

「そうだ。地上のスラムで出回っている小型炸裂弾を発射するランチャーだ。

 本来は専用のヴァイザーを君の右手少し上の端子に接続して使用するが……」


「軍用の共通規格のコネクタであれば私のツインテール内のコネクタを直結出来ます。

 接続完了……仕様情報を確認しました……正規軍用の同種ミサイルに比べて飛距離は3分の1、誘導性能が極端に低い……弾速だけが30%ほど早い……友軍識別装置無し、物騒な武器ですね」

「ソフトウェアや高度なサポート機能ではなく、『技』で当てるんだ。

 これを使う人間……使える人間はね。

 さぁ、君もプラットフォームへ向かいたまえ。

 詳細な作戦はそこで伝える」


 ***


 レジスタンスの乗る潜航艇は、ティアラが追い詰められたハーバーエリア脇のリゾートビルの背後、大型観光客船が接岸出来る湾の水面下30メートルで静止していた。

 海はそれほど綺麗ではないとは言え、真上から眺めれば巨大なクジラでも居るのではないかと思うような黒いシルエットが水面下に見える。

 だがこれから起こる壮絶な戦いを予見するような人間は居ない。


 艦内のプラットフォーム上には3体の重装パワードスーツ、4人の歩兵、マキ、ワン、そして長さ1メートルほどのミサイル型ドローンが10機ほど密集したツリー状に台座に配置されている。

 プラットフォームを囲むランプや計器類が作動音を上げる中、ワンが口早に説明する。


「全員タクティカルヴァイザーを装着しろ。

 このエリアのホロマップを表示する。

 目標はこのプライベートボートに立てこもっている情報屋、ティアラ達の救出。

 山岸、谷川、ホアン、3名は作戦開始後、すぐに一番近くのリゾートビルの屋上へ陣取れ。

 3名が屋上に到着するころには、こちらの放った偵察ドローンが周辺の敵配置を調べ終わっているはずだ。

 ホアンは間髪入れずにハンニバルズのホバーヘリを撃墜しろ」

「了解!」


「山岸、谷川は地上の敵をシャープシューターで爆散ディスクを用いて精密射撃、重武装、パワードスーツや強化外骨格エグゾスケルトンの兵を優先的に排除しつつ、国防軍の駐屯基地が2か所から急行する軍用ドローンを迎撃し、ティアラ達の確保までの制空権を確保しろ。

 おそらく8分経過後に南西方向から軍用ドローンの群れが到着、11分経過後に北からさらにわんさと到着する」

「了解!」

「了解!」


「リーフェイはパワードスーツの防衛補助、小岩、センロン、ドノバンはティアラ達がこの潜航艇へと逃れる退路を確保しろ。

 目標のルートは、ここ、リゾートビルを海沿いに回り込んで抜けるルートだ。」

「了解!」

「了解!」

「了解!」

「ラジャー!」


「私は真っ先に地上から突入し、ティアラ達を包囲する敵の排除、状況の判断を行う。

 マキ、君はその装備でも幅15メートル、高低差5メートル程度の跳躍は出来るな?」

「人工筋肉レベル3ではその辺りが限界です」


「君は突撃する私の上、ビルの屋上から、このベランダ部分、そして歩行者空中プラットフォームを伝って移動し、エリアの安全を確保しろ。

 エリアの安全が確保されたと判断すれば、私がプライベートボートへ向かい、ティアラ達を誘導する。

 その間、決して敵の狙撃や攻撃を許さず、脅威は事前に排除するんだ。

 状況監視と素早い防衛行動が出来るのは今、軍用アンドロイドである君だけだ」

「了解しました」


「それでは皆、15分以内にかたをつけるぞ!」

「了解!」

「了解!」

「了解!」

「了解!」

「了解!」


 潜航艇がかすかに揺れ始め、プラットフォームエリアにあるパトランプが点滅を始めた。

 オペレーターの声がヴァイザー越しに響く。


「浮上を開始します。プラットフォーム・カバー、オープンまで15秒。

 ……10、9、8、7、6、5……」


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