第十一話「レジスタンスと豊国議員、メガリニアから離脱」
マキがリーオンとの激闘を行っている間、ワンはレジスタンスの仲間の一人から零式熱小銃を受け取り、フレシェット弾モードへと変更していた。
「キット、マキの戦術情報を同期出来るか?」
(オーケー、送るよ)
ワンの片目のバイザーにマキのセンサーが捕えた屋上エリアの状況、リーオンの挙動、そして配置された吸着地雷の情報が送られ、視野にAR表示される。
マキはリーオンから見て屋上入り口から反対側、背中側の至近距離に迫り、右へ左へと回避を続けている。
リーオンは外部装甲の巨大な腕の肘部分から蜘蛛の足のようなスパイクを二本ずつ出し、背中側を動くマキへ攻撃を続けていた。
その様子を見たワンが唸る。
「いい判断だ。随伴歩兵の居ない大型戦術兵器は至近距離を素早く動く敵を捉えきれない」
マキが至近距離で分析したリーオンの兵装情報も出力される。
【シングルバレル中型レールガン・R97-Mk2:1/1】
【パワードスーツ用マルチガン:1/1 内蔵弾:吸着地雷、炸裂段、広範囲ショットシェル、スラッグ弾】
【パワード・スパイク:4/4】
【ポータブル・ミサイル・ランチャー:1/2 右破壊済み、左残弾18】
【マイクロ・ロンギヌス・スプレッダー・ランチャー:1/1】
【ミディアム・イージスガン:4/4】
【アンチミサイル・サーマルショットシステム:4/6 】
【スカウト・ビット:5/6】
【メンテナンス・ドローン・ハイブ:2/2】
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(とんでもない装備だね。まさに歩く戦車。戦争か虐殺でもする気か……)
フレシェット弾狙撃で入り口付近の吸着地雷を建物越しに破壊、除去をしていたワンが冷や汗を流す。
「危なかった……キット、お前が情報を制していなければ、ロンギヌスで一発で壊滅の可能性もあった。ブラックバード、2分後にメガリニア屋上、進行方向側の上空に来て我々をピックアップしてくれ」
メガリニアのサイド、リーオンからの死角を並んで飛行するホバーヘリのパイロットが応答する。
「了解した」
「システム、同期タイマーセット、2分!」
ワンの声と同時にレジスタンス達のバイザーにタイムカウント表示が現れ、カウントダウンを開始し始めた。
ワンは豊国議員とレジスタンス達に叫ぶ。
「行くぞ! 走るんだ!」
***
マキは何度もリーオンに接近し、EMPブレードを出して内部破壊を試みていた。
だがリーオンは常にギリギリのタイミングで装甲の薄い箇所を巧みに隠し、スパイクでマキを攻撃する。
「リスク回避行動を選択」
リーオンは常にバカンスエリア入り口を攻撃射角に収めたままマキへ対応していたがそれも限界と判断し、重装甲の体をマキの方へと向けた。
そして前面装甲に複数個所ある迎撃システムでの攻撃を始める。
マキはあえてリーオンの前面で回避を続ける。
リーオンはマキの行動の意味を理解しており、自己保存とレジスタンス抹殺任務を天秤にかけ、自己保存を選んだのだ。
そしてマキが再び自分の背後に回り、自分がバカンスエリア入り口へ再び向き直る可能性は無いと看破していた。
直後、階段を駆け上ったワン達と、メガリニアのサイドからレジスタンス達の乗って来たホバーヘリが同時に現れる。
ホバーヘリは素早くワン達の上に足踏みの付いたワイヤーを6つ降ろし、レジスタンス達は豊国議員をそれに乗せ、自分達もワイヤーに掴まる。
そしてホバーヘリは一気にワイヤーを引き揚げ、その場からメガリニアから飛び去る。
後ろの状況を気にしたリーオンは今も機能する右肩のミサイルランチャーを動かし、迎撃体勢を取る。
だがマキは自分に対する攻撃が緩んだ瞬間を見逃さず、リーオンの外装甲の巨大な腕を駆け上って至近距離からリニアキャノンでランチャーを破壊した。
リーオンはさらに体から5機の全幅1メートルほどのブーメラン型のスカウト・ビットを射出してホバーヘリを追わせる。
そして遠くの空に離れようとしているホバーヘリに対し、今までマキから隠すように守り続けていたレールガンを向ける。
だがマキはすかさずリニアキャノンでレールガンのバレルを粉砕した。
「対航空兵器用の外装をパージ」
リーオンの重装甲は破裂するように周辺にまき散らされ、身軽さを増す。
だがマキはその直前にバカンスエリアからジャンプして離脱、破れた天井から外に飛び出し、メガリニアの外の壁面をロケットパンチ・ワイヤーに掴まって滑り降りていた。
***
ワン達は豊国議員を乗せてホバーヘリでメガリニアから離脱中であった。
運転中のパイロットが機内のスピーカー越しにワン達に伝える。
「高速移動の風圧が危険なので機体のシェルターを閉じます。気を付けて下さい」
「待て! 何かが追ってくる……ビットだ!」
「またか、しつこい野郎だ。いいだろう。何度でも落としてやる」
ワン達の引き上げを誘導し、その後同じ部屋内に居たパイロットが近くの座席に腰かけてベルトを締め、備え付けの頭部を覆うバイザーを被ってトリガーを握る。
ホバーヘリの上部に備え付けられた機関砲が動き始め距離を縮めるビットに攻撃を開始した。
5機中、3機のビットが空中で爆発して黒煙となり遠ざかる。
「追いつかれるぞ!」
「あれは自爆機能があるタイプだ! やばい」
ワンは近くのワイヤーに足を絡ませて引っ掛け、片膝をついた状態で零式熱小銃を冷静に構えた。
そして上下左右へ回避行動を取りながら接近するビットを正確に狙ってバースト狙撃を繰り返す。
残り2機のビットはワンの狙撃で落とされた。
「ワンさん……あんた本当に凄いな……」
「いいだろう。シェルターを閉じてくれ」




