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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT1 アイアン・エンジェル事件
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第六話「新世代テクノロジーvs果てしなき蓄積」

 巨大ビル内のトレインステーションの改札エリアは多数の民間人や軍人、警察の死体があちこちに横たわっていた。

 ここはビルの地下に位置し、幅50メートル、奥行き200メートルほどの広大な通路と改札や売店が並ぶ。

 そこをエレベーターで下ると複数の地下鉄路線のホームへと繋がる。

 通勤ラッシュ時は多くの人が洪水のように流れる場所だが、今動いているのは中型パワードスーツ・アツカイにのるロバーツ軍曹だけである。


「クソッタレのブリキ野郎! とっとと出てこい! お前を今からスクラップにしてやるぜ!」


 ロバーツ軍曹はパワードスーツの両腕のキャノンをあちこちに向けて動かしながら興奮状態で叫んでいる。

 突如、通路奥の売店の裏からカランコロンとグレネードが飛び出す。

 ロバーツ軍曹は反射的にそちらに向いてキャノンをぶっ放した。

 だがグレネードが炸裂したのみでアイアン・エンジェルの姿はない。


「そこかぁ! 粉々にしてやるぜ!」


 ロバーツ軍曹はパワードスーツの武装のグレネードランチャーをアクティブにすると先ほどグレネードが転がり出てきた売店の裏に乱射した。


「喰らえ! この糞がぁ!」


 グレネードの爆発音に混じり、サーマルガンの射撃音が鳴り響く。


「ぐあぁぁ!」


 ロバーツ軍曹は真横からの徹甲弾の射撃を内ももの位置に受け血を噴出させながら致命的な負傷をしていた。

 このパワードスーツは人間の両足が装甲されて外に出る形で動くようになっており、人間の股の間の間隔という制約が有るために、内もも部分の装甲は薄かった。

 一瞬激痛で突っ伏したロバーツ軍曹が痛みをアドレナリンで誤魔化してヨロヨロとアイアン・エンジェルのほうへと向き直ったが、それを悠長に待ってくれる相手ではない。

 アイアン・エンジェルを正面に捉えた瞬間、パワードスーツの真下でEMPグレネードが炸裂し青白い光りに包まれた。

 パワードスーツは全機能を停止し、電子機器が全て停止した状態で待機モードになってしゃがみ込む。


「畜生! 畜生!」


 ロバーツ軍曹は必死でパワードスーツから脱出を試みるが、胴体は完全にロックされており抜けられない。

 アイアン・エンジェルはゆっくりと歩み寄るとパワードスーツのフロントガラスに強烈なパンチを食らわせて穴を開け、メリメリと上へ持ち上げた。

 ロバーツ軍曹は胴体をロックされて動けないまま生身の上半身を晒す。


「や、やめろっ! やめてくれぇ!」


 アイアン・エンジェルはロバーツ軍曹の頭を片手で掴むと、脇腹のブレードを展開させ、ハサミのようにしてロバーツ軍曹の上半身を切断した。

 そのまま頭を掴んでパワードスーツから上半身を引っ張りだして外の地面に投げ飛ばす。

 マキはアイアン・エンジェルから50メートルほどの距離でその光景を目の当たりにした。

 アイアン・エンジェルもマキの存在に気付き、サーマルガンをマキへと向けて乱射した。


【オーバクロックモード:Active ヒートレベル10%】


 マキは量子コンピューターの頭脳と神経システムをクロックアップした。

 サーマルガンの弾丸の飛ぶ光景が今のマキには目視出来る。

 マキは精密に弾丸を回避しながら全力疾走して改札マシンの影へと駆けこむ。

 だがアイアン・エンジェルの先読みと的確なばら撒き射撃により回避不可能な弾丸があり、マキは手にしていたサーマルガンで受けて防御する。

 マキは改札マシンの影へ到達したがオシャカになったサーマルガンを捨てた。


「アーッハッハッハ! パパ! 新しいオモチャね? 有難うパパ愛してるわ!」


 アイアン・エンジェルは嬉しそうに叫ぶと地面に向けてポータブルロケットランチャーを発射、同時にジャンプし爆風にのって改札エリアの中二階へと大ジャンプして飛び乗った。

 マキの隠れ場所はアイアン・エンジェルから丸見えである。

 ロケットランチャーがマキの隠れていた改札の影に即座に撃ち降ろされて炸裂。

 一足早く脱出していたマキは10メートルほど離れた地面に落ちている別のサーマルガンを拾いにダッシュしていた。

 だがアイアン・エンジェルの発射したロケットの次弾の弾道計算結果を見たマキは全身のスラスターを噴出させて急停止した。

 ロケットは地面に落ちているサーマルガンに着弾し、炸裂した。

 方向を変えて中二階へと向かうエスカレーターに向かおうとしたが、さらに先読みのロケット弾がエスカレーターに着弾。

 マキの行動は全て読まれているようである。

 マキはアイアン・エンジェルの思惑通り売店の裏へと追い込まれた。


「プレゼントフォーユー!」


 グレネード弾がマキの隠れる売店裏に5、6個転がり込む。

 マキはとっさに売店を飛び越えるほどの跳躍をしてグレネードの爆発を回避した。

 だが目の前にあるのはアイアン・エンジェルが空中に放ったロケット弾。

 弾道計算結果はマキと空中で激突する寸前であった。

 マキはとっさにワイヤー付きロケットパンチを売店に向けて射出し、天井のパイプを掴んで跳躍を急停止、逆立ちでY字に開脚した股の間をロケット弾が通過し、背後の壁で爆発した。


【オーバクロックモード:Active ヒートレベル60%】


 アイアン・エンジェルの息付く暇のない的確な攻撃はクロックアップの助け無しでは回避不可能である。

 だがオーバーヒートまでの時間はそれほど長くない。

 マキは空中でもう片方のワイヤー付きロケットパンチを射出し、アイアン・エンジェルと対岸にあたる中二階へ移動した。

 近くで倒れていた軍人の死体からサーマルガンを奪うと、即座に巨大な柱の裏に隠れる。

 タブキーの効果でサーマルガンのセーフティロックを解除し、マキは柱から半身乗り出してアイアン・エンジェルを狙撃しようとしたが目の前には既にロケット弾が直進している光景が見えた。

 しかもロケット弾の背後にはサーマルガンの弾丸が急接近している。

 マキはスラスター全開で逆方向へ脱出、柱の直ぐ横でロケット弾に追撃のサーマルガンの弾丸が着弾し大爆発した。


【オーバクロックモード:Active ヒートレベル80%】

【変則回避移動モード:Active】


 マキは側転やバク転とスラスターの噴出を組み合わせ、右へ左へ上へ下へと人間が取り得ない動作をしながら中二階を繋ぐ空中通路へと高速移動した。

 さすがのアイアン・エンジェルもこんな動きを見るのは初めてのようである。

 空中通路に到達したマキは対岸にいるアイアン・エンジェルへと防御姿勢を取りながら突撃した。

 アイアン・エンジェルが射出する無数のサーマルガンの弾丸が蜂の大群のように襲ってくる。

 マキは回避可能な弾丸は全て回避、不可能な弾丸は両手の最新素材の手甲で弾き、足に当たる弾丸は足全体に点在する特殊な防御プレートにあえて命中させ、プレートを粉砕させて弾丸の威力を殺しながら強行突入した。


【オーバクロックモード:Active ヒートレベル90%】


 マキは遂にアイアン・エンジェルの至近距離に到達、全身のスラスターと人口筋肉を駆使してヒットアンドアウェイでアイアン・エンジェルの動きを高速分析した。

 最新鋭サイボーグ同士の戦いでは迂闊に触れることはしない。

 高圧電流やEMPを警戒する必要が有るためである。


【アナライジング・ターゲット:100%】


 マキはアイアン・エンジェルの可動域を全て見切り、銃を持つ片腕に組み付いた。

 そして腕からスピアーを出してアイアン・エンジェルの腕に突き刺し、EMPパルスを発射した。

 だが、アイアン・エンジェルはEMPパルスを受けた腕の付け根の内部ケーブルをもう片方の手で自切して全身への影響を回避していた。


「ウオオオオオオ!」


 アイアン・エンジェルは脇腹の高周波ブレードを全展開、とっさにマキが離脱したのを確認すると隣の飲食店エリアへと銃での威圧をしながら逃亡した。


【オーバクロックモード:Active ヒートレベル100%】


 マキも限界であった。

 息付く暇のない戦いは短時間の休止に入った。

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