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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT1 アイアン・エンジェル事件
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第五話「マキ、始動!」

 桃音博士と政治家の黒沢の乗るホバーヘリは検問ロボットの包囲網内に着陸した。

 黒沢が桃音博士に無言で目配せして合図する。

 ホバーヘリの後部ハッチが開くのに合わせてマキは立ち上がり、一瞬振り向いて桃音博士と助手のディバの司令を待つ。

 黒沢が小さな飴のようなものをマキに投げて渡し、マキはそれをキャッチした。


「それは国軍兵士の使う全兵装のタブキーだ。使い方はわかるな?」

「はい、マキは人間と同じ内臓器官を持っています」

「マキ! 任務開始よ!」


 マキは受け取った小さな飴を飲み込むとホバーへリーの後部ハッチから飛び出した。

 このタブキーは生体電気を利用して国軍使用ライフルやホーミング手榴弾、各種乗り物のロックを解除する機能が有る。

 マキは多くの兵士と、時折交じる民間人の動かぬ死体の間、無人の荒野を陸上選手のように走っている。

 マキの拡張視野デバイスに次々と情報が展開される。


「こちらマキ、デンジャーゾーンに突入しました。

 全兵装の使用許可をお願いします」


 助手のディバはホバーヘリ内で端末を操作し、リストアップされた兵装リストをなぞるようにアクティブに変えていく。


「全兵装の使用を許可します。」


 マキの拡張視野デバイスに次々と兵装のデバイスドライバがインストールされていく情報が走る。


 【人工筋肉:レベル5、ドライバインストール完了、Active……】

 【ホバースラスター:ブーツ、両脚、背、腹、両肘、ドライバインストール完了、Active……】


 マキの靴の裏から青白いバーナーのようなものが噴射され、全身のスラスターからも進行方向後部に向けてスラスターが噴射され始める。

 マキは陸上選手のような走りからスピードスケート選手のようなスライド移動へと動作を変えた。


 【EMPデュアル・スピアー:ドライバインストール完了、液体爆薬残量100%、エネルギーチャージ100%、Active……】

 【ナノ・アーマー:ドライバインストール完了、損傷率0%、Active……】

 【オーバークロックシステム:ドライバインストール完了、Active……】

 【エネミーアナライザー:ドライバインストール完了、Active……】

 【デュアルホーミングガン、メタルジェットパイルバンカー:ドライバインストール完了、Active……】

 【スパイドローン6機:ドライバインストール完了、Active……】

 【タクティカルインフォメーションリンク:ドライバインストール完了、Active……】


「兵装全てのActive化を確認しました。

 これより作戦の隠密性を重視し自閉モードへチェンジします。

 これより先の司令に応答は出来ません」


 マキの最後の通信が途絶えた。

 黒沢はパイロットに指示する。


「光体照射レーザーの準備を」

「ちょ、ちょっと待って下さい! どういうことですか?」


 桃音博士が腰を抜かしたようになりながら黒沢に詰め寄る。


「光体照射レーザーを使うのですか?! エリア一帯の生物が爆散しますぞ? それだけじゃなく全てのインフラが破壊される。

 ……巻き込まれればマキも消失する。

 失礼ですが貴方は正気で言っておられるのか?」

「アイアン・エンジェルは敵を求めて位置を移動し続けている。

 そしてこの先に待つもの、それはこのアルコロジー輝夜2080……私の多くの支持者とその資産のある場所だ。

 ここでの殺戮は何としても避けねばならない」

「光体照射レーザーの射程内に入りました。

 衛星の待機時間のリミットは30分間です」

「き、君! 射程内エリアの生体反応を表示してくれ!」

「余計な事をするな桃音博士」

「早く!」


 ホバーヘリ内の戦術ディスプレイには半径5キロほどの円形エリアが表示され、そこには無数の光点がうごめいていた。

 パイロットは静かに額から汗を垂らす。


「み、見ろ! 逃げ遅れている人がこんなに居るぞ」

「桃音博士、良く見てみろ。

 この光点は市民識別信号を発しているか?

 日本国民は必ず体内に付けているはずだぞ?」

「黒沢さん! あんた分かっているでしょう?

 このエリアはスラムだ。

 国籍どころか戸籍すらない人間が一杯居る」

「いいか? 桃音博士。君は自分の立場が分かっているのか?

 一帯なぜ我々はこういう状況に追い込まれているのかね?

 君は全責任を持つというのかね?」

「ぐっ……」

「このエリアに逃げ遅れた”市民”は存在しない。

 もしもマキがしくじれば、光体照射レーザーの射程を離れる前に纏めて始末しろ」


 ディバはメタリックなサングラスでは隠し切れない悲壮な顔で通信機を握りしめマキに通信をしようとしていた


「マキ! このミッションにはタイムリミットがあるわっ!

 時間制限は30分以内、30分以内になんとしてもアイアン・エンジェルを倒すのよ! さもないと……」


 黒沢は無言でディバの無線機のラインを横からOFFへ変更した。



 マキはアイアン・エンジェルが陸軍特殊部隊を殲滅したエリアに到達し、周囲を見回した。

 そして痕跡を分析するとビルの前面でしゃがみ込み大きく跳躍する。

 マキは高さ20階ほどまで飛び上がるとスラスターを利用しながらビルの窓を回し蹴りで破壊し、中へと突入した。

 ビルの中でマキの背に付けられた6つのポッドから小型マイクほどの大きさのドローンが一斉に飛び出し、スラスターウィングを展開する。

 それぞれのドローンは高速で分散し、ビルの中を飛んで消えていった。


 マキ本体もスケーティングを繰り返しながらビル内のエスカレーターや廊下、破壊された障害物をジェットコースターのようにくぐり抜けて捜索を繰り返す。

 拡張ディスプレイでは6機のスパイドローンが超高速でマッピングエリアを拡大し続けていた。

 マップが明らかになるに連れ、異常な状況が明らかになる。

 既に一般人のキルカウントが3000人を突破した。

 警官、兵士のキルカウントもあっというまに1000人を突破。

 負傷者1名のみ。

 突如スパイドローン1機が爆発とともに信号をロストした。

 最後の瞬間の映像がアイアン・エンジェルを捉えている。


 マキはアイアン・エンジェルの居場所を特定し、スケーティングをしながら超高速でビル内を急行する。

 対決の場はビル内トレインステーションの改札エリアである。

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