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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT8 アンダーワールドでの生活
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第十一話「神社伝統の奉納物」

 マキ達は雨傘をさしながら神社の奥へと進む。

 神社の境内ではアンダーワールドの人々の居住区に比べ、照明の量が意図的に抑えられていた。

 その為、真夜中のように空は真っ暗である。

 だがその代わりに、屋根付きの背の高い木の柵のようなものが道に沿って並び、その全面には提灯がびっしりと並び火が灯って周囲をぼんやりと照らし出す。

 そして道の所々では夜店の出店がされていた。

 周囲の人は多く、まるで都会の通勤ラッシュ時の駅構内のようである。


「マーシャちゃん、ちゃんと私達と手を繋いでいるのよ」


 マーシャは片手でディバの手をとって周囲をキョロキョロ見回しながら歩く。

 先頭を行くネリが少し先を指さして言った。


「ここの祭りに来たらあれを買って帰るのが定番の習わしだ」


 ネリが指し示す方向には簡易テントのような屋根の下、細長い机が3つほど繋げて並べられ、巫女装束の少女たちが机に積まれた何かを売っている。

 行列は机に向かうように20列ほど並び、行列は全てゆっくりと進んでいた。

 ネリと共に、ディバやマーシャ、他のメンバーもひとかたまりになって複数の行列の同じくらいの位置に並んだ。


「一人一個、自分で買うようになっている」


 遠くから値札を確認したディバはマーシャに小銭を渡し、マーシャはそれを受け取って握りしめる。

 カムイが周囲の人だかりを見て驚嘆する。


「すごい光景だな。これいつ頃から続いてるんだ?」

「私が生まれた時には既に風習としてあった。発掘されたのは一世紀程度前だが、神社自体は六世紀以上前のものだそうだ」


 マキは人間の情緒をイミテーションされたAIのせいか、若干の興奮を感じながらディバに語る。


「私は労働している人間、移動している人間、そして生存活動をしている人間以外を初めてみました。

 大勢が一斉に祭りに参加しているのは……いや、それ以上に私がそれに参加しているのは……とても楽しいです。

 まるで人の一部として、人間として生活している感じがします!」

「あらあら、マキには衝撃的な体験かもね……。はぁ……何か、子供が二人もいると大変だわ……、マーシャちゃん、マキはね? ロボットだけど年齢は5歳なのよ。マーシャちゃんのほうがお姉ちゃんなの」

「ええぇ!?」

「マーシャお姉さま、お祭りを楽しみましょうね」


 行列はゆっくりと進み、一行は巫女装束の少女から長机に積まれていた品物を一人一袋、購入した。

 透明なビニール袋で中に十数枚の干し芋が入っており、藍式神社の銘入りのシールが貼ってある。


「干し芋なのか」

「この神社に残されていた文献や器材から再現した、由緒ある品物らしい。

 昔は豊作を祝い、感謝を神に捧げる品物として、干し芋が奉納されていたそうだ。

 今では何故か人々は受け取る側になってるがな」

「マーシャちゃん、食べてもいいのよ?」

「うん……持って帰る」


「よし、次は本殿へ移動してお参りだ」


 一行は人込みの中、本殿の方へと進む。

 その中、マキはカムイの横に静かに近づいて前を向いたまま囁いた。


「カムイさん、さっきから私達を撮影している人が居ます」

「撮影? カメラか何かでか?」


「ありふれたインフォメーションバイザーを付けているだけに見えますが、撮影視界に常に私達を捉えています。」

「周囲だけで何千人も人が居るのによく分かるな」


「要人警護任務の時には必要な機能です」

「そうか、だがこの人込みの中で目立った行動はしてこないだろう。何者かは気になるが……」



 マキ達一行から20メートルほど離れた場所で目の周囲を覆うインフォメーションバイザーを付け、フードを被った男がマキ達を追跡していた。

 男の視界内では顔認証追跡プログラムがマキの顔を捉えて矢印マークを示し続けながらロックオンし続けている。

 男は参拝客達の間を押し通り、時には肩で押されながら一定距離を保つ。


「ワンさん、ターゲットは集団で行動しているようです。見たところ成人男性一人、成人女性三人、老女と子供が一団となって行動しています」

「そうか……本当にただ観光にやって来たというところだな」

「そりゃサチ婆さんが観光に勧めたんだからね」


「どうします? 接触するにはリスクが大きいです」

「キット、その情報は確かなのか? あのマキというアンドロイドの内部にカイのブレインスキャンデータがあるというのは?」

「サチ婆さんはちらっと内部情報を見たけど、たしかに疑似人格らしきものがあったとさ。でもそれがカイかどうかまでは分からなかったらしい。

 人間の精神情報ってのは一つの企業の何百人もの研究チームが総出で解析するほど複雑なものだからね。

 でも本人が言ってたそうだ。

 そして仲間のレジスタンスを探しているってね」


「もしそれが本当なら、カイさんの記憶が入っているなら、P-Xの在り処を突き止められる唯一のチャンスですよ?」

「P-Xは世界を覆すほどの切り札であるとともに、恐ろしい凶器でもある。

 カイはリスクを恐れて自分一人で抱え込んで居たからな……」

「サチ婆さんは気をつけなと言ってたよ。

 マキが完全に信じ切れるとは言えない。

 潜入型のアンドロイドはそれこそありとあらゆる的確な手段を使って組織に潜り込み、内部から組織破壊する事も出来る。

 マキにはその力があるってさ」


「……」

「信じることが出来るか、出来ないかの判断が難しいのはアンドロイドだろうが人だろうが同じだ。

 相応のリスクを払う事になるが、テストをするとしよう」

「テスト?」


「今から伝える内容で彼女に隙を見て接触してくれ。……私はテクノロジーにそれほど明るく無い……。原始的な手段だが漏えいが無いように手渡しで頼む」

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