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2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT8 アンダーワールドでの生活
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第二話「中央渓谷商店街」

 ネオ東京のアンダーワールドの中央に位置する中央渓谷商店街。

 ここは関東平野を構成するいくつかのブロックに分かれたSGFソリッドグラウンドフレームの継ぎ目に位置し、地下の大勢の人々の歩く地面から50メートル上の地上まで、大きな渓谷のように地下施設の切れ目が存在する。

 渓谷の幅は30メートル、距離2キロにわたる渓谷の左右には多くの人々が店を出し、アンダーワールドの住人達の集まるショッピングモールと化している。

 また、メンテナンス用のベランダのような通路が5階層ほどまで作られ、その全ての個所が店となっている。


 ネリに案内され、ディバとマキが周囲をキョロキョロと見回しながら後に続く。


「あちこちに電灯やネオンが付いて、本当に一世紀前の都会の商店街みたいね」

「……でも、空は見えないんですね」


 マキは上を見上げる。

 空の代わりに鉄筋やプレートで覆われた真っ黒で平坦な空間がどこまでの伸びる。


「アンダーワールドにこんなに人が居るなんて知らなかったわ……。

 ここは地上だと大規模停電のあったH39地区の辺り……」

「ああ……停電か。そういうことも有ったな。ここが地上の奴らの『掃除』のターゲットになったことがあってな。アンダーワールドのあちこちから駆けつけた有志や自警団が大規模な掃除用ロボの群れを撃退したことがあった。

 その時の戦闘がかなり苛烈で電力供給設備が大破して一帯が停電になった」


「……そういう事……。それじゃぁあの時の生命反応……、あいつっ! 知ってたのね!」

「どうした?」


「いえっ、何でもないわ。それより貴方達はニュースを見たりするの?」

「ニュース? 何だそれは?」


「毎日世界で起こっている事件とか政治情勢とかを放送するサービスよ。アンダーワールドでは見れないの?」

「無いね。……ふんっ。それに世界中の事件や政治が分かるだって? 常識的に考えてそんなものは神様でもない限り分かるわけがないだろ」


「……。そうね……貴方の言う通り。皆が騙されて分かっているつもりになっていただけ……。

 自分達の足元のことすら見えていない……」

「サチお婆さんという方はどんな方なのですか?」


「ロボットやアンドロイド、サイボーグを扱うエンジニアだよ。私が知る限りアンダーワールドでもトップのな。マキ、お前も見た目がゾンビのようになりかけているから早く直して貰ったほうがいい」

「多くは話せないけど、マキの体が現代の最先端の科学技術の結集体。その方が直せるとは思えないわ。私がそこの設備で何とかなりそうか見てから判断するわ」


 商店街を進むと、屋台が立ち並ぶエリアへと出る。

 テーブルや椅子が各所に置かれ、人々がそこに座って飲食を行っていた。

 ネリは『イカ焼き』の看板を出している屋台の前で立ち止まる。


「二人とも金は無いだろう? 今日は私が奢ってやるよ」

「クレジットチップなら持っていたと思うわ」

「地上のだろ? それはここでは通用しない」


 ネリはポケットから何枚かの硬貨を出すと店員に渡す。


「三つくれ」

「あいよ――。あいっ、確かに。まいどあり――」


 ネリは串にさされたイカ焼きをディバとマキに手渡した。


「ありがとう。いつかお返しさせて頂くわ」

「ありがとうございます」


 ディバはイカ焼きを一口齧り、しばらく沈黙した。


「どうした? 不味いか?」

「いえ……とても美味しいわ。……これイカなのよね? 何イカかしら……」


「親父、これ何イカだ?」

「スルメイカだよ――。海で取れて今日仕入れた新鮮なスルメイカね」


「どうしたんですか? ディバさん」

「私も地上の他の人たちも……ゴムを食べていたのかも知れないわね」

「はっはっは。地上じゃ処理して加工した人間の死体を食うって言うしな。……冗談、冗談だよ」


 少し離れた場祖で一人の女性が小さな丸テーブルにハンドバッグと屋台で購入した野菜炒めのような料理の乗ったプラスチッププレートを置き、8歳くらいの少女と会話している。

 母親と子供のようである。


「ママ――、パフェ買ってよぉ」

「パフェはご飯じゃないでしょ?」


「買ってぇ――! 買ってよぉ――!」

「駄目!」


 遠くから眺めていたネリが言う。


「アンダーワールドでは砂糖は貴重なんだよ。人工照明で作物を育てているところは何か所もあるが、人間にとっての必需品が優先されるからな」


 子供に気を取られている母親の隙を突き、一人の若者が机の上に置かれたハンドバッグをひったくって駆けだした。

 男は運悪く、ネリ達のいる方へと走る。


「だっ、誰かぁ――! ひったくりよ――!」


 男がネリの傍を走り抜けようとしたとき、ネリはその場で軽く体を捻りながらジャンプし、後ろ回し蹴りを男の腹部に命中させた。


「ぐえぇっ……」


 男は地面でもがき苦しむ。

 ネリは男からハンドバッグをもぎ取ると、追いかけてきた母親に投げて返す。

 そして男の側頭部を踏みつけて地面に押し当てる。


「アンダーワールドの秩序を乱すものは相応の仕置きを受ける」

「い、痛ぇ」


 ネリは男を軽く蹴るようにうつ伏せにさせると高周波ブレードを取り出し、背中の服を裂いた。


「初犯か……。金が欲しけりゃまっとうに働け。二度とやらないと誓うなら今回は目をつぶってやる」

「ち、畜生! くそったれのお巡りかよっ!」


「無理そうだな」

「イデデデデデッ!」


 ネリは男の背中に一文字の傷を高周波ブレードで付けた。

 そして髪の毛を掴んで体を持ち上げ、思い切り顔面にひじうちした後、腹に膝蹴りを入れて地面に転がす。


「邪魔が入ったな。じゃぁ行こうか」

「マーシャちゃんを連れてこなくて良かったわ……。それよりあんな事して大丈夫なの? 訴えられたリしたら……」

「アンダーワールドに裁判は無いそうです」

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