表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2115年、アンドロイドの救世主  作者: レブナント
ACT7 ドレッド・ベレーとキャシー・パイロ
44/151

第七話「ハンターvsハンター」

 マキは素早く下水管の中を走り、既に殺された自警団員の死体へと真っすぐ走り寄った。

 そしてスチールプレート製の床に放り出されていた零式熱小銃を拾うと即座に近くの柱に身を隠す。

 20メートルほど離れた曲がり角の壁の裏で静かに音を聞いていたドレッド・ベレーの声が反響した。


「元気な子猫ちゃんが乱入か? 音で銃が落ちた場所を把握して真っすぐ向かってくるとはお利口さんだねぇ!」


 マキはしばらく銃を構えたまま様子を伺う。

 だが拡張された聴覚がとらえたのはその場から遠ざかるドレッド・ベレーの足音だけであった。

 記憶したマッピング情報から推測されるドレッド・ベレーの向かう先、それは住人達の退避エリアである。


「ネリさん!」


 下水管から周囲を警戒しながらネリが走り、マキの元へと駆け寄った。


「奴はどこだ?」

「住人の避難エリアへ向かいました。猶予がありません。」


「ちっ、急ぐぞ!」

「ネリさん、避難エリアは大規模遠心分離浄水施設の円周上です。作戦を変えましょう。

 ネリさんの付けているバイザーを少し触らせて貰っていいですか?」

「何する気だよ? 壊すなよ?」


 マキはツインテールの中に交じるケーブルをネリの後頭部の機器に数秒間接続し、外す。


「受信プログラムをインストールしました。通信端子を電力ケーブルに接触させることでFHSS(周波数ホッピング・スペクトラム拡散)通信で私の軍事情報をバイザーに同期できるようになったはずです。」

「FHSS? 何だそりゃ」


「妨害の影響を受けにくい通信です。ネリさん、急いで避難エリアの中央、管制ルームへ向かってください。それとこれも渡しておきます」



 ドレッド・ベレーは住人達の避難エリアへと一直線に向かっていた。

 鍵のかかったドアに阻まれるが、サブマシンガンを乱射して錠を破壊し、ドアを蹴破ってさらに進む。

 彼の任務はアンダーワールドの住人の殲滅。

 時間の掛かりそうな敵の相手をしている暇はないのである。

 三つ目のドアを蹴破ると左へ大きく曲がる長細い部屋へと出た。

 幅5メートルほどの廊下には怯える住人達が座り、一斉に注目する。


「ビンゴ! 皆さんお揃いで!」

「自警団か?」

「ち、違う。あれはハンターだ! 逃げろ! 逃げろぉ!」


 人々は一斉に立ち上がり、反対側へと駆け出す。

 だがドレッド・ベレーの一番近くに居たローブを纏った少女は四つん這いで地面を這う。

 恐怖で腰が抜けて動けないのである。


「ハーッハッハ! 鬼が来たぞ! 今のうちに逃げろ! 今距離を稼がないと直ぐに追いつくぞ!」

「あ……あぁ……」

「おぉーっと残念。お嬢ちゃん、お嬢ちゃんは……ゲームオーバーだ」


 ドレッド・ベレーは片手で少女の首根っこを掴むと空中に持ち上げた。

 そして少女を置いて逃げ去る人々の姿を見せつけながら後頭部にサブマシンガンを添える。


 だが突如、ドレッド・ベレーは少女を離してその場にしゃがむ。

 その頭の上をスウィングされた零式熱小銃が風を巻き上げて通り抜けた。


「来やがったか、よっと、ホッ」


 ドレッド・ベレーの背後に居たのはマキである。

 彼女が手に持って振り回し、ドレッドベレーがことごとく体を曲げて回避している。

 マキの手に握られた零式熱小銃。

 電力を利用して金属をプラズマ化して火薬の代わりにするサーマルガンであるが、膨大な電力を使用する特性上、別の機能が備わっている。

 この時代では銃剣の代わりに一般化している高圧スタンガンである。

 急所に当てればロボットやサイボーグであろうと機能停止、無力化を行える。


「ホッ、考えたな。俺のガーディアンドローンは銃口を向けられた時にしか反応しない。ストックのスタンガンでの近接攻撃なら銃口を向ける必要はない……。ハッ!」


 ドレッド・ベレーは鋭い蹴りをマキの腹部に入れた。

 サイボーグ化した脚部の威力は強く、マキは5メートルほどふっ飛ばされる。


「お前の目、今の感触。人間じゃないな? ……おおっと、獲物が逃げちまうぜ」


 ドレッド・ベレーはマキを放置し、反転すると凄まじい勢いで走り始めた。

 時折振り返って追いかけるマキの様子を見るが、スピードではドレッド・ベレーに分がある。

 マキの姿は徐々に後ろへと遠ざかっていた。


(あれは完全なロボット。見たことの無い形式だ。サブマシンガンが通用するか分からないし、どんな力を隠し持っているか得体が知れない。スクラップにするのはもう少し様子を見てからだ)


 ドレッド・ベレーの判断は間違ってはいなかった。もしも今のマキが”本当の全力”を使えたならば、この場で戦いは終わっていたはずである。

 ドレッド・ベレーは本能で、スピードの優位を生かして安全を選んだのだ。


 しばらく通路を走り続けたドレッド・ベレーは息を切らしながら逃げる住人達の後ろ姿を捉えた。


「オーケー。ハンティング再開……」


 住人の茶色くボロボロのコートの背中にサブマシンガンの銃口を向けて狙いを定め、引き金を引こうとした瞬間、ドレッドベレーの右腕は衝撃を受けて外側へと逸れた。


「何だっ!?」


 ドレッド・ベレーは反射的に急停止し、バックステップして回避行動を取る。

 だがバックステップした先で今度は右ひじを被弾。

 即座にその場に伏せたドレッド・ベレーの頭部の有った場所を何かが突き抜ける。

 ドレッド・ベレーは前後左右に跳ね、動き、転がりなら周囲を確認し、マキの方を見る。

 マキは壁の電力ケーブルのゴムをむしって、露出した鋼線にツインテールに潜ませたケーブルを押し当てていた。


「フレシェット弾狙撃か! 管制室に誰か居るな?」


 そのころ、大規模遠心分離浄水施設の中央管制室では周囲の施設へとタコ足状に伸びる電源ケーブルの大元のケーブルに通信ケーブルを固定させた状態でネリが壁に向かって単発的に狙撃を繰り返していた。

 フレシェット弾はサーマルガンのプラズマの膨張力と電磁加速を受け、厚さ2メートル程の壁を3枚貫通してドレッド・ベレーへと突き進む。

 ガーディアンドローンはこのような狙撃には対応出来ない。


 また、狩りの間、非常灯にしか電力は流れていない。

 つまりこの電源ケーブルはネリとマキの通信ケーブルと化していた。

 ネリは空になったフレシェット弾の弾倉を捨てると、マキから受け取った予備のフレシェット弾倉を装着する。

 そして片目に嵌めたルビー色のバイザーに映し出された、ドレッド・ベレーの同期情報、架空の姿へ向けて淡々と狙撃を繰り返す。


「こちらの姿は全く見えてないはずだが……回避が上手い奴だな……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ